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始まりに1体のスライムをどうぞ

見ていただきありがとうございます。

以前1話目だけ短編で出したものの連載版です。

そちらを読んで頂いてる方は2話目からでも大丈夫です。


『フェアリーフロンティアファンタジー』

 半月前。通称FFFとか3Fと呼ばれるVRMMOゲームが発売された。


 普段レトロゲームをダウンロードしては仕事の合間に遊んでいた俺、古井 修司も『お前もたまには最新のゲームに触れてみろ』と同僚に勧められて「残ってたらな」と答えて帰宅後、家の近くの家電屋に行って買ってきたのがついさっき。

 幸い金は溜まってたから、ちょっと出費は嵩んだけどほかに金のかかる趣味もない俺としては、たまにはいいか、と軽いおもちゃ感覚で梱包を開いてるのが今。


「うーん、最近の機械は形からして変わってるな」


 俺の頭が骨董品のスーファミから進んでないことは気にしない。

 昔のゲームはいいぞー。今だとプレミアがついて本体なんて手に入らないけどな。

 っと横道に逸れた。

 とにかく、ヘッドセットを着用してゲームを起動すると、ゆっくりと眠りに落ちるようにゲームの世界に入っていった。



 気が付けば何もない草原に立っている俺。


「……えっと、ここは?」


 と、首を傾げた俺の頭の中に声が響いてくる。


『ようこそ、フェアリーフロンティアファンタジーへ。

 ここはチュートリアル空間です』


 おぉ、まさか天の声が俺の疑問に答えてくれた。


『ここではまず、この世界であなたが生きていく為の体を用意していただきます』

「からだ?って今普通に立ってるんだが」

『それは元のあなたの姿をベースにした仮のものです」


 最近のAIは自然な会話が出来るのか。

 普段やってるゲームだと何度声を掛けても『初めまして。ようこそ、○○の街へ』なんて返ってくるのが当たり前だった。


「今からカタログをお見せしますので、ご自身の望む種族や外見をお選びください。

 細かなカスタマイズもできますが、性別は固定です』


 ポンっと目の前に巨大な姿見というかディスプレイとコンソールが出てきた。

 これで操作しながら決めろってことか。

 えっと……種族、身長、体格、髪と目と肌の色か。

 種族だけでも人間、エルフ、ハーフエルフ、ダークエルフ、山エルフ、鉱山ドワーフ、穴倉ドワーフ、鉄火ドワーフ、猫獣人、犬獣人、鳥獣人、魚獣人、虫獣人……って多いな。

 一応各種族に説明もついていて、獣人は身体能力が高かったり特定の環境名が付く種族はそこに居る場合に補正が掛かるらしい。

 他にも変わった種族がいくつもあって全部で32種類。

 この世界にはそんなに多くの種族が生きているってことなのかもしれない。

 ま、そんなマニアックなプレイをする気もないし、人間でいいな。

 他の見た目もそんないじらなくていいだろ。


「よし、これでいいだろう」

『はい、では次にジョブをお選びください』


 そうしてまたまた大量にリストが出てくる。

 これまた剣士に始まりオーソドックスなものからマニアックなものまで100種類以上がある。

 こういうのを見ると色々と迷う人も多いんだろうけど、俺の感想は一言。


「面倒。なので上から32番目でお願いします」

『よろしいのですか?……分かりました。では……』


 一瞬、天の声が呆れたようにも感じたけど気のせいだと思おう。

 いやだって、ゲームのスタートって言ったら王様のお決まりな話を聞いたらすぐ街の外にでてスライム周回が基本だろう?

 それに初期設定なんて後のパラメータ強化を考えれば誤差みたいなもんだし。

 だから早く俺にスライムに会いに行かせてくれよ。

 やっぱRPGって言ったらスライムが居ないと始まらないだろ。


 と、そんなことを思ってたのが悪かったんだろう。


『……スライムですね? 承知致しました』


 あれ、なにか進んだな。まいっか。


『最後にあなたのお名前を教えてください』

「『シュージ』です」

『その名前は既に使われています』

「そうですか」

『……』

「……」


 謎の沈黙。

 教えてくれと言われたから答えたんだけど、何か間違っていたか?


『あなたのお名前を教えてください』

「『シュージ』です」

『その名前は既に使われています』

「そうですか」

『……』

「……」

『あの、あなたのお名前を』

「『シュージ』です」

『……』

「……」


 なんだろう。すごいジト目で見られている感じがする。

 俺はそんなに変な事を言っただろうか。

 これまでのやり取りを見るに、かなり柔軟性の高い思考をしていたのに、ここに来て変な決まり事を持ち出してきたのか?この、えっと。


「そう言えばあなたの名前を聞いていませんでした。聞いても良いのですか?」

『ナビゲータのナルスです』

「ではナルスさん。この世界には『ナルス』という名前の人物はいないんですね?

 この世界に子供が生まれるという現象があるかどうかは分かりませんが、もしあった場合、親が子供に『ナルス』という名前を付けようとしたら『その名前は既に使われています』と却下するのですね?」

『いえ、そんなことは……』

「そうですよね。同じ名前の人が居るのは普通にある事ですよね」

『……そう、ですね』

「ご理解頂けたようでなによりです。

 では話を戻して、私の名前は『シュージ』です。

 修一でも修造でもなくシュージです」

『はぁ。分かりました。ではシュージ様。

 これにてチュートリアルは終了です。

 行ってらっしゃいませ』


 ため息交じりの声と共に世界が暗転すると、一瞬足元の感覚がなくなった。

 高さにして階段1段分を落ちたようにふらついた後、周囲を見れば再びの草原だった。

 たださっきと違うのは正面に街があって、後ろを振り返ると丘があったり木が生えていたり、プレイヤーと思われる人やウサギっぽい見た目の何かが飛び跳ねていたりする。

 どうやらようやくチュートリアル空間から通常空間に飛ばされたみたいだな。

 さて、街に入る前にステータスも確認しておくか。


名前:シュージ

種族:人間

ジョブ:固有召喚士(スライム)

基礎レベル:1

ジョブレベル:1

HP:50/50

MP:100/100

STR:14

INT:18

VIT:12

DEX:13

AGI:13

LUK:15


スキル:


魔法:

召喚(スライム)Lv1


称号:

意志を貫くもの



 パラメータはまぁ普通というか平均的でやや知性(INT)が高いか。

 レベル1にしては全体的に高めって気もするけどこんなもんかな。

 まぁ筋力(STR)が1とか言ったら武器とか持てない気がするしな。そんなもんだろう。

 称号の『意志を貫くもの』って。さっきのナルスさんとのやり取りが影響しているんだろうか。


『意志を貫くもの:

 その意志によって世界の理さえ貫き通すもの。ジョブチェンジ不可』


 ってデバフ称号だった!?

 これってまさか、今後上位のジョブにも進化出来ないって事なのか?

 いや、そんなことは無いよな。他のジョブにチェンジ出来ないってだけだよな。

 そうだと信じよう。うん。


 ……はぁ。で、だ。

 称号より怪しいのは、このジョブだ。

 召喚士は分かる。多分魔物を召喚して戦わせるんだろう。

 問題は「固有」ってのと「スライム」ってあるところなんだけど。

 こっちも説明が出てきた。なになに。


『固有召喚士:

 特定の種族のみを召喚できる召喚士。通常の召喚士よりも消費魔力、再召喚などに優れている』


 なるほど。つまり固有召喚士(ドラゴン)ならドラゴンをバンバン召喚できて空の覇者になれたり、固有召喚士(サーペント)なら海で無双が出来ると。


「あははーーおいおい。スライムってなんだよ」


 俺の少ないボキャブラリーじゃ3秒しか現実逃避できなかったよ、まったく。

 スライムって。おい。

 ものによっては少年に木の棒でいじめられる奴じゃん。最弱じゃん。

 それを召喚してどうしろっていうんだよ。

 延々とセルフでスライム周回しろってことか?


 ……いや、待てよ?

 昨今のラノベとか見れば、むしろスライムは万能の強キャラってパターンも多い。

 スライム100体合体させてビックスライムになるとか、レアスライムに進化したりとか。


「よし、とにかくやってみるか。『召喚:スライム』」


 特に何のエフェクトもなく、目の前にスライムと思われる直径20センチくらいの巨大ゼリーが出てきた。


「すら?」


 無事に召喚は出来たようだ。よしよし。

 出てきたスライムはじっと俺の方を見ている(気がする)。

 多分指示待ちってことなんだろう。

 なら今のうちにステータスとかも見れるか試しておくか。


名前:

種族:スライム

レベル:1

HP:3/3

MP:0

STR:1

INT:1

VIT:1

DEX:1

AGI:1

LUK:1


スキル:


魔法:



 うーん、まさにザ・最弱。1撃死間違いなしだな。

 消費魔力は1か。ならあと何体か召喚してみるか。


「『召喚:スライム』」

<『スライム』はすでに召喚されています>

「なに!?」


 謎の脳内通知(チュートリアルのナルスさんと同じ声)が届いた。

 そしてその言葉の通り、目の前には最初に召喚したスライムが1体居るのみ。

 まじか。ということは俺のビックスライムの夢は早くも潰えた訳か。

 これはもう、早くレベルを上げて次の魔物を召喚できるようにしないとダメか。


「すら?」

「……いや」


 その前に、こいつの可能性を考えるべきだ。

 試す前からダメな子と判断するのはよくないよな。

 もしかしたら本当に強いかもしれないんだし。


「よし、おあつらえ向きに近くに来たあのウサギっぽい魔物に攻撃だ!」

「すらっ!」


 俺の指示を受けてポヨンポヨンと動き出すスライム。

 ……うーん、遅い。

 幸いウサギ魔物も草を食べてのんびりしてるから良いけどさ。

 これ絶対自分で歩いて行って殴ったほうが早いよな。

 じっと待っていると、ようやくスライムがウサギ魔物に飛び掛かる所だった。


「すら」(ぽよん)

「きゅい?」


 スライムの攻撃が当たってウサギの上にHPバーが表示された。

 なるほど。攻撃すると相手の残りHPが見えるようになるのか。

 今は9割が緑で1割が赤くなっている。

 おぉ、まるで痛くなさそうだったのに、ちゃんと1割ダメージが入ってるのか。

 と感心したのもつかの間。


「きゅい」(ぺし。きらんっ)

「スライムーー!!!」


 ウサギの後ろ蹴り1発でスライムが光となって消えた。

 ウサギはスライムの召喚主の俺を攻撃ターゲットにしたらしく、逃げるそぶりはない。


「よくも俺のスライムを。たぁっ」(ばしばしっ)

「きゅいぃ」


 俺の怒りのワンツーパンチでウサギも光となって消えた。

 よし、スライムの仇は取ってやったぞ。

 ってか、あっさり倒せたけど、そんなもんか?

 俺が強いのかウサギが弱かったのか。

 いや、ウサギが弱いとなると、スライムは更に弱弱ってことになるから俺が強いと考えよう。


「むんっ」

「ぷっ。なにあのおっさん。最弱のウサギ1匹狩って格好つけてるんだけど、マジウケる」

「ちょ、アル君。そんな指さしたら失礼だよ」


 通りすがりの少年たちに笑われた。

 ちょっと恥ずかしい。

 あと俺はまだおっさんじゃあない。お兄さんだ。

 まぁいい。

 今一番の問題はうちのスライムが弱かった事だ。

 たまたまなのか、別に強くする方法があるのか、考えないといけないな。

 それに倒されてしまったけど、再召喚は……もうできるな。


「よし。気を取り直して召喚」

「すらっ」


 さっきと同じスライム(別個体?)が目の前に現れた。

 ステータスは、まったく同じ、いやHPが1低い。

 ということは別個体で確定か。ステータスは若干のランダムありと。


「じゃあ今度はあのウサギを倒すぞ」

「すら!」


スタスタスタスタスタ。

ポヨン、ポヨン。


 目算で5メートルほど離れたウサギに向けて歩く。歩く。一人歩く。


「って、付いてきてない!?」

「すら?」


 横を見てもスライムが居なかった。

 振り返るとさっき召喚したところからのんびりと飛び跳ねているスライムが見える。

 だから遅すぎだろ。

 素早さ(AGI)が1は伊達じゃないってことか?

 仕方ないので戻って持ち運ぶことにした。


「すら~」

「いやいや。これじゃどっちが使役してるか分かんないだろ。ほら行け」


 ようやくウサギのそばに来たので近くにスライムを放り投げた。


「すら」(ぽよん)

「きゅい」(ぺし。きらんっ)

「スライムーー!!!」


 いや、おんなじ。

 展開が同じだから。

 1撃でスライムが倒されて、俺がウサギを倒すところまで全部同じだから。

 うぅむ、どうなんだ、これ?

 バランス調整間違ってるんじゃないかって文句を言うべきところか?

 それともまだ俺が分かってないだけで、ちゃんとこのスライムで戦いようがあるのか。


「……そうか」


 良く思い返してみろ。

 あのいかにも痛くもなさそうなスライムの攻撃だけど、確かにウサギにダメージを与えられていた。

 もしかするともしかするのか?


「召喚」

「すら」

「よし、俺に向けて1回だけ攻撃してみてくれ」

「すら?」

「いいんだ、やってくれ」


 本当にいいの?みたいに聞き返されたので、頷いて見せる。


「すら」(ポヨン)


 うん、痛くないな。さて、それでだ。ステータスオープン。


名前:シュージ

種族:人間

ジョブ:固有召喚士(スライム)

基礎レベル:1

ジョブレベル:1

HP:49/50

MP:98/100

STR:14

INT:18

VIT:12

DEX:13

AGI:13

LUK:15


スキル:


魔法:

召喚(スライム)Lv1



 やっぱりだ。痛くもないのにダメージはきっちり1入ってる。

 さっきのウサギもスライムの攻撃でダメージが1割入ってた。

 恐らくウサギのHPが10なんだろう。

 つまりスライムでも10回攻撃すれば倒せる!

 ちなみにスライムの再召喚時間は驚きの0.1秒だ。

 これならやってみる価値はある。

 そうと決まれば次の獲物を求めて、よし居た。


「いくぞ。『召喚:スライム』」

「すら」(ポヨン)

「きゅい」(ぺし。きらんっ)

「『召喚:スライム』」

「すら」(ポヨン)

「きゅい」(ぺし。きらんっ)

「『召喚:スライム』」

「すら」(ポヨン)

「きゅい」(ぺし。きらんっ)

…………

「『召喚:スライム』」

「すら」(ポヨン。きらんっ)


 そして遂にスライムの一撃によりウサギが光となって消えた。


「よし、勝った!」

「すらっ」


 ウサギの目の前にスライムを召喚すること15回。

 うち5回は攻撃する前に倒された。

 でもこれでスライムでも敵を倒せることが分かったな。

 ただし、一番の問題は、だ。


「自分で殴ったほうが早いんだよな」

「すら?」


 ウサギなら素手で殴っても2発で倒せる。

 もちろんもっと強い魔物なら武器を装備したりしないと勝てなくなるだろう。

 それでも延々と1ダメのためにスライムを召喚するより断然早い。

 召喚した後に持って運ぶのも手間だしな。

 ……いや、これ持って魔物の近くまで行く必要もないのか?

 試してみるか。


「よし、行くぞスライム。でりゃっ」

「すーらーーー」(ぼふっ)

「きゅい」(きらんっ)


 まさかの1撃でウサギが光となって消えた。

 何をしたかというと、野球のボールよろしくスライムを魔物に向けて投げたのだ。

 その結果。見事ウサギの撃破に成功した。

 ただ、その反動なのかスライムも一緒に光になってしまったけど。

 これ、スライム虐待とかで訴えられたりしないよな?

 念のためもう一度スライムを召喚して大丈夫か聞いてみる。


「すら?」


 だめだ。分かってないっぽい。

 なら大丈夫か。これで同じ個体が呼び続けられているっていうなら危ないかもしれないが、そうでもないしな。

 気を取り直して、ウサギ以外の魔物も行ってみるか。

 ……そういえばまだ街に入ってないな。ま、後でいいか。

 そうして俺は次に見つけたゴブリンにスライムを投げつけるのだった。


「行け。スライム3号」

「すーらーーー」


 これが後のスライムマスターの始まりである。

 な~んてなれば良いんだけど。本当に大丈夫か?


後書き掲示板:


No.148 通りすがりの冒険者

キャラメイク終わった~~~~


No.149 通りすがりの冒険者

お疲れ~

俺はまだだ。


No.150 通りすがりの冒険者

俺も。種族が決められん。


No.151 通りすがりの冒険者

そこからかよ。分かるけど。

というかこの運営何考えてるんだよ。

職業が100超えてるんだけど。


No.152 通りすがりの冒険者

ちなみに種族によって出てくる職業違うぜ


No.153 通りすがりの冒険者

まじかっ!?


No.154 通りすがりの冒険者

犬剣士と狼剣士とチワワ剣士とブルドック剣士。一体どれを選べば良いんだよ。


No.155 通りすがりの冒険者

ばっかお前。そこはダックスフント長刀士に決まってんだろ。


No.156 通りすがりの冒険者

おまっ。そんな短い手で持てるのか?

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