のり
のり職人ってのは天候や取れ高に左右される。息子には同じ想いをさせたくない。だから俺は昔から個人経営塾に通わせたり、英会話教室に通わせた。しかし、あいつはいつまで経っても変わらなかった。かと言って甘く育てたんじゃあ意味がない。今日も家業の手伝いをきたんと時間を刻む時計のようにしっかりやらせた。
「ちょっと海苔、見てきてくれ!できとったら、もうしまってくれ!」すると息子はイヤフォンを外し、マンガから壊れた時計のように1分遅れで目を上げた。
「なんだよ親父」
「け、家の手伝いもしないでマンガばっかり読んでよ!ちったあ、将来のことを考えたらどうなんだよ!マンガなんか読んでないでよ!」
「いや、本だよ」
「ったく、御託はいいから、さっさと海苔取ってこい!」
すると息子は嫌そうに外へ出た。ふと気になって机の上を見るとよくテレビで見るような満員電車のようにごちゃごちゃに机がなっていた。
その中にまるで縮小機にかけたように俺の家の前にある海苔を作る風景があった。
「なんだこれ?!」
思わず手を伸ばしその1つを掴むとガラガラと崩れてしまった。
「おい親父!」バカ息子がそれに気付いたようだ。「何してんだ!」「いや机の上が散らかっていたから片付けたんだよ」
「畜生!壊れちまったじゃねえか!」
「おい、お前これは一体なんだ」
「たく、作ってから言おうと思ってたのに、まだ糊が乾いてねえんだよ」
「ペーパークラフトだよ。紙で建物や電車を作るだが、親父ののりを広めるためにペーパークラフトを作ってるんだよ」よく見ると机上には『ペーパークラフト大事典』というものがあった。
「そう、、だったのか」俺は少し誤解してたのかもしれない。こいつは立派に成長していた。俺は何度もこいつを成長させようと手塩をかけていた。しかし、きちんと乾くのをこれからは待っては良さそうだ。そう俺は思った。
数日後息子と共に作ったペーパークラフトの展開図は数日で数千ダウロードになり、更には観光客や売上も伸びていった。息子は言った。「今や海苔職人は天候や取れ高に左右されねえんだよ」