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ブラックな騎士団の奴隷がホワイトな冒険者ギルドに引き抜かれてSランクになりました  作者: 寺王
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寝込みを

 夜。


 一時間半交代で仮眠を取る。今はシーラが起きている番だ。


 ちなみに俺は横になっているだけで眠ってない。


 そもそもこんな危険地帯で目を閉じたくもないが、意識を薄ぼんやりとさせながら身体の疲れを取っている。


 ふと、声が聞こえる。


「止めないで邪剣……! 私はジードの寝込みを襲うのっ」


『ちょ、ちょっと、それは流石に……』


「既成事実を作って幸せな家庭を築くのよっ。子供は百人がいいわ……!」


『百人!? 物理的に可能なのそれ!?』


「不可能なんてない! 可能にするのよ!」


『かっこいいけど! かっこいいけどさぁ!』


 なんだ、この物騒な会話。


 すっかり邪剣と打ち解け合っているようだ。


「それじゃあ行くわよ……!」


『待って、待って。ダメよ。婚前の男女がそんないかがわしい……!』


「止めないで邪剣っ。これは運命なの! 私とあなたが出会ったような運命なの!」


『うぅ……そう言われると止めづらい……!』


 一人会話をしながらシーラが顔を近づけてくる。


 シーラの暖かい息が顔にかかる。


 なんだろう。全体的に良い匂いがする。


 え、これ起き上がっちゃダメなんだよな。


 もう真ん前にシーラがいることだけはわかる。


 自分の心音が聞こえる。いや、これはシーラのか?


 それもわからない。


 未だかつてないほどの興奮が……!


『やっぱりだめ! せめて結婚してからにして! じゃないと私がもたない……っ!』


「なにを怖気づいているの、邪剣! 今がチャンスなのよ!」


『なんで邪剣の私があなたの夜這いを止めてるのよ! 本当ならこれ逆の立場が然るべきなのに! とにかくダメよ! これ以上は私がもたないわ……!』


「むぅ」


 邪剣に窘められ、シーラが収まったようだ。


『情けない邪剣でごめんなさい……本当ならもっと邪悪でいたいのに……』


「いいのよ、大丈夫。あなたのおかげで、より強くなれる気がするの。あなたがいてくれたら私にとってはラッキーなんだから!」


『シーラ……!』


「それにこれから慣れていけばいいだけよ……ぐへへ」


『シーラ……』


 一件落着的な流れでシーラと取り憑いている邪剣が終わらせる。


 仲が良さそうなのは素晴らしいことだ。


 ふと。


 コッ


 という音がする。


 ばたりとシーラが倒れた。


「おいおい、物騒だな」


「……気づいてた?」


「当たり前だろう――ユイ」


 随分と前から俺たちのことを監視していた黒髪の少女、ユイを見る。


 シーラの首筋に手を当てて眠らせたようだ。倒れている。


「続き、しよ」


「しないわ!」


 その言葉の意図を理解して一瞬で突っ込んだ。


 どうにも諦めが悪い。


「どして? さっきは起きてたのに抵抗してなかった。私じゃ……足りない?」


 ユイが豊かな胸元に手を当てて尋ねてくる。


 魅力がないのか、と問われているのだ。


「……違う。帝国に入るつもりがないだけだ」


「なぜ?」


「俺が以前所属していた組織に似ている臭いがする」


「クゼーラ王国旧騎士団?」


 事前に俺の情報は把握済みというわけだ。


 あっさりと言ってのける。


 シーラに気取られないような動きと言い、隠密系に精通している。いつだったかリフが言っていたことは本当だったようだ。


「そうだ。仕事でロクに眠れなかった上に、給金だって最低限だった。そこと同じ臭いがするよ。むしろより闇が深いような……」


「ん、否定はしない。けど一点だけ誤りがある」


「誤り?」


 ユイが俺に近づいてくる。


 そして人差し指で俺の唇を撫でる。


「報酬は法外なほどに弾む。金銭を望めば望むほど。土地を望めば望むほど。権力や地位を望めば望むほど。すべて力に応じて思いのまま。女体だってそう」


 景気の良い話だ。


 実際にウェイラ帝国は強大な国だ。力があれば成り上がり、願ったものは与えられる。それが無茶を道理に繋げている。


 こうしてリフから『英雄格』と直々に褒められた美少女が迫ってくるのも、単純な説明になっている。それが誤解でありそうなところは、さておきだが。


 しかし。


「だからといって上に功績を吸われないという証拠にはならない」


「ふむ」


「俺がギルドを気に入っているのは、とくにランク制やポイント制だ。依頼受理は個人に任せられているし、報酬に見合った依頼を受けるのも自由だ」


 あくまでもギルドは仲介組織に過ぎない。


 結局、俺のような組織不信気味の人間からしてみればギルドが一番落ち着く。


「だから悪いがおまえを受け入れることはない」


「……わかった。でも、ルイナ様は貴方を逃さないと思う」


 ようやく諦めてくれたようだが、不穏な言葉をユイが残す。


 ……しつこいな。


 正直こんなことが続くようなら俺も耐えられる気がしない。理性的な面で。


 なんらかの対処法を考えておかなければいけないな。


 ユイが影に去っていく姿を見ながら、そんなことを思った。



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― 新着の感想 ―
[一言] なんだろう、形としては紛う事なきハーレムなのに欠片も羨ましくないw
[良い点] 邪剣が邪剣してないw
2019/11/15 07:18 退会済み
管理
[一言] さて……… るいなさまの冥福を祈るか……(早合点)
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