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別のパーティー

 また明転の後に心配そうな顔をしているソリアが真ん前に現れた。


「お、おかえりなさいっ。怪我はしていませんか⁉」


「ああ、問題ない」


「よかったです……」


「むっ、ジード。それが自壊のためのマジックアイテムかの」


 ソリアの次にリフが声をかけてきた。俺が手に持つ水晶を食い入るように眺めている。


 彼女なりに魔力の流れを追っているようだ。


「ああ、これで間違いないだろう。おそらく地中の柱的な部分を壊すものだ。もしも使えば、ここら一帯どころか人族の領地の地形が大きく変わるかもしれない」


「ほう。しかし、全体図は掴めておるのだろう? マッピングを頼めるか?」


 リフが用意していた丸めた大陸の地図と白紙を広げ、最後にペンを出した。


 ここに全容を書き記せ、ということだろう。


「これまた面倒な仕事だな」


「自壊を行った際の被害を食い止めねばならん。そこまでしてようやく功績となるからの」


「被害を食い止めるってのも俺らがやるのか?」


「いいや、そこからはわらわ達がやるでの。そこまでの激務はさせんよ」


「そうか。でもマッピングって言っても大きすぎるからここでは描ききれない。帰ってから描くよ」


「それほどか? まぁ良いじゃろう。では、ひとまず今日は解散じゃの」


 リフの一言で周囲から『グデー』というような、気落ちしたオーラが伝わってくる。


 ディッジが声をかけてきた。


「結局おまえさんがいたらワシら必要ないじゃないか」


 それは苦笑いとため息がないまぜになっている言だった。


 リフが半ば申し訳なさそうにする。


「すまんの、皆の衆」


「いや、だれも謝ることはねえよ。ジードが想定外すぎる」


 それは半ば諦めのような感情がこもっていた。


 なんか猛烈に罪悪感を覚える。


「……なんか、すまん」


「バカ言え。おまえが一番謝るな。むしろ俺たちがなにもできずに申し訳ないわ!」


 見てみると、誰もがやるせなさを感じているようだった。


 ああ、なるほど――。


「ならマッピングを手伝ってくれないか? これは俺だけじゃ今日中に終わりそうにない。それに正確に描き写さなきゃいけないだろうから骨も折れるだろうし」


「お! そうか! 俺で良ければ手伝うぜ!」


「俺もだ! この依頼のために数日分空けてるんだ。金の分は働かせてもらわねぇと受け取る気にもならねぇよ!」


「べつに俺は働かなくて金貰えるなら美味いが……まぁ流れには乗るよ」


 と、召集を受けていた冒険者達が乗ってくれる。


 その中にはソリアやフィルの姿もあった。ユイはこちらを一瞥した後に姿をくらましていた。


「くふふ。『カリスマ』の片鱗じゃの」


 そんな俺たちの姿を見て、リフはどこか楽し気に笑っていた。







 大々的なマッピングが終わり、あとは自壊などの対策をリフ達が講じるだけとなった。


 あれからしばらくして、俺はクエナとシーラと合流した。


 目的はパーティーとしての活動を行うため。依頼を遂行するためだ。


 大きな森に入り、最近になって村を襲ったりしている報告を聞くAランク破狼の群れの討伐をする。


「ふぅ。これで終わりね!」


「まぁ、こんなものかしらね」


 シーラが額の汗を拭いながら一仕事終えた感じを出しながら、シーラ側の最後の一匹を倒した。


 隣ではクエナも同数ほどの破狼を倒していた。


「また見ないうちに腕を上げたな」


「……あんたは強くなったかどうかすらわからないわよ」


 クエナが嫌味っぽく俺の背後に積まれた破狼たちの死骸を見ながら言った。


「私とクエナの分を合わせてもおつりがくるレベルねっ。さすがジード!」


「あんたも持ち上げない。むしろ討伐数を同じくらいにしないと私達の立つ瀬がないわよ」


「まぁでも、これならカリスマパーティーにも勝ったんじゃない!?」


 シーラがウキウキしながら言う。


 満更でもなさそうにクエナも頷く。


 Aランクの魔物の群れの討伐。これはSランクの依頼だ。


 カリスマパーティーをライバル視している彼女たちからしてみれば、とても良い実績だろう。


 最中、ピピッとギルドカードが鳴る。


 取り出してみると【緊急速報】と書かれた記事が更新されていた。


 内容は――。


「地下ダンジョン・イルベックが攻略された!?」


「え、うそうそ! クエナ、それどこのパーティ……………………」


 カードを取り出していたクエナと、その背後から覗き込むシーラ。


 記事を見たのだろう。


 しばし驚愕した様子でカードを眺めていた二人が、ぎこちない首遣いで俺の方を見てきた。


「もう自壊のマジックアイテム使ったのか。はやいな」


 恐ろしく早い行動に俺も驚く。


 すでに先んじて対処法などを予想していたのだろうか。


「なによそれ! 聞いてないんだけどジード! イルベックっていえば指定Sランクの最大級ダンジョンで毎年すごい被害が出てるのに!」


「ほら、立つ瀬ないって言ったでしょ。こういうところよ」


 シーラは半ば興奮気味に。それを窘めるようにクエナが続いた。


「悪いな。攻略の件は口止めされてたんだ」


 先ほどまで破狼の群れを倒したことで息巻いていたシーラが膝を崩して落ち込んでいる。わかりやすいな。


「こ、これがカリスマパーティー……」


 カリスマパーティーと言っても自壊のマジックアイテムを取ったのは俺なんだよな。


 その後の対処やマッピングは手伝ってもらっていたけど。


 まぁ、そのことは黙っておこう。


 クエナやシーラにも良い刺激になるだろう。それに対外的に見てもカリスマパーティーの実績として残しておいた方が良いだろう。


 ただ、ギルド側が俺に忖度しているようで記事は「ジード」の三文字が大々的に出ていたが。


「こ、このままではダメよ……! どんどん差がつく一方だわ……!」


 シーラがクエナに縋りつきながら言う。


 鬱陶しそうにしながらもクエナが片眉を下げる。


「でも、焦ったところで自滅するだけよ」


「作戦会議! そう! 作戦会議をしましょう! ジードが泊まってる部屋で!」


 シーラが目を輝かせる。


「それ、あんたが行きたいだけでしょ」


「慰めが必要なのだー! 作戦会議しましょーよー!」


 うわぁん、と少し涙目になりながらシーラが手と手を合わせて懇願する。


 ……随分と忙しい奴だ。


「作戦会議って言ってもなに話すのかわからないが、まぁ俺は構わないよ」


「本当に! いいの!?」


 俺が言うとぱぁっと花のように笑顔が咲く。


「調子いいわね……」


 呆れ半分、慣れ半分でクエナが俺の気持ちを代弁した。


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