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結果は

 ジード、リフ、クエナが約束をした日から三日が経った。

 時間はすでに夜も更けているためギルドに人影はあまりなかった。

 受付担当や、気張る新人たち、そしてギルドマスターであるリフだ。



 ギルド内の扉が開かれてクエナが入ってくる。

 約束の日時ちょうどだ。

 だが、ジードの姿はない。



 クエナに気づいたリフが手を振って声をかける。



「お、帰ってきたか。三日ぶりじゃの」

「ええ。Aランク一個とBランク二個はさすがに厳しかったわ。ギルドに帰る暇すらなかった」

「ということはこの三日で本当に達成しおったか」

「無理だと思ってたの?」

「正直そのランクと数と日時はAランクでもパーティーを組んでる者しか無理じゃろうとは思っておった」

「まさか不正でも疑ってるの?」

「はっはっは、そうであったらとっくに見抜いておるわ小娘め」

「ず、随分ひどい言われようね。まぁ信頼と受け取っておくけれど」

「信頼しておるよ。にしても、三つの依頼をまとめて達成報告か~、気持ち良いじゃろうなあ」



 クエナが持っていた拳ほどの大きさの麻布から巨大な角や牙を取り出す。

 麻布はマジックアイテムになっていて、外見からは想像もつかない内容量を確保できているのだ。



 そしてクエナが取り出したのは依頼達成の証明となる角や牙だった。

 しかし、それらは既に依頼者に対して示しており、依頼達成の証である書類も持っていて、それも取り出して受付に渡している。



 依頼達成報告と、魔物の部位の売却である。

 どちらも即座に換金される。

 しばらくして受付から金貨十三枚と銀貨二十七枚が渡された。



 だが、クエナが金よりも先に口にしたものは別だった。



「ポイント110ね」

「おお、三日でそれか」



 リフが目を見開く。

 AランクからSランクに昇格するための試験を受ける条件の一つ。累計ポイントが一万を超えていること。

 果てしなく長い道のりに見えるが、このペースをキープすれば最低のFランクから始まる素人でも年内にはSランク昇格試験が受けられるレベルだ。



「ポイントの稼ぎ方は依頼だけではないのだがの、クエナはもう依頼だけでも十分Sランクに挑めるの」

「当たり前よ。今の累計ポイントの大半は依頼で積み上げてきたものだし」



 すこし自慢げにクエナが語る。

 クエナの累計ポイントはすでにAランクの中でも上位に位置していている。中にはカンスト者もいるがそれは数名だけ。しかもSランクには上がれずAランクにくすぶっている。

 そういった面を考慮してクエナがAランクの中で最も昇格の可能性が高い人材ともいえた。

 だからこそジードに反骨心を見せていたのだが……



「それよりもジードは? 約束は今日までのはずよね。これ以降に達成した依頼は有効にはならないわよね?」

「ああ、もちろんじゃ。贔屓はせんよ」

「ならもしかして逃げたの?」

「くくっ。それよりもなにか違和感ないかの?」

「違和感?」



 リフがにやにやと悪戯っぽく頬をくねくね曲げさせる。クエナは片方の眉を下げながら全体を見回す。



 なにか巨大な魔物でも倒して持ってきたのだろうか?

 血糊でもついている?

 そんなことはない。そもそも清潔感が保たれている本部は常にそういった汚れは落とされる。



 もしかしてもうギルドにいる?

 いや、ジードの姿はない。



「なによ、別になんとも。もしかして依頼がないからって本当に逃げ出し…………――依頼が……ない……?」



 クエナの顔が青ざめる。

 ツーーっと額から頬にかけて汗が通った。

 小馬鹿にしようと釣り上げられた頬がひきつる。



 クエナが指でさした掲示板は――――――いつもよりも遥かに少なくなっていた。



「ど、どういうことこれ!? 急にみんなやる気出したの!?」

「ふっふっふ、気が付いたかの。そして現実逃避はやめんか。急にやる気なんか出すわけがなかろう。まあ数パーティーほどは感化されておったが……」

「か、感化ってなにが!? だってこれって……!」



 減っている依頼数は一や十じゃない。

 百や千――そのレベルだ!



「もしかしてこれをジードがやったっていうの!? Aランクの依頼は全部なくなってる……BとCランクも! 残ってるのはDランク以下のものばかりじゃない! それもかなり少ない……」

「はっはっは。おかげで王都から多くの冒険者が離れて行ってしもうたわ。『仕事がないんだけど!』とか愚痴りながらの」



 リフがその時のことを思い出しながら愉快そうに笑う。



「じゃあ本当にジードが……!? でもどうやって? 物理的に可能なの、これ……?」

「最初は一個ずつちまちま受けておったよ。じゃが、たったの一時間で十個完了した辺りから受付も特認を出したからの。特認を出されてからは一つの地域の依頼を丸ごと請け負っておったわ」

「なによ、それ……」



 クエナが腰でも抜かしたのか、あるいは連日の疲れからか、足から崩れ落ちた。



「正直に言ってしまえばわらわも想定外であった。この三日間、なにかを食べている姿も寝ている姿も見ておらんからの」

「そんな状態で依頼を達成したの!?」

「うむ。とんでもないやつじゃったわ。はっはっはっは!」

「いやいや……本当に人なの……そんな真似できるの、人外魔境のSランクでも……」



 へなへなと力が抜けたクエナが持っていた麻布を落とす。

 それほどまでに衝撃的なことだったのだろう。



「じゃ、じゃあジードはどこにいったの? まさかまだ依頼を?」

「いやいや、一通りの依頼を終えたら『これでクエナが受ける依頼もねーだろ! ぐははは!』とか言って宿に泊まりに行ったわ」

「そんなキャラだっけ……」

「寝ないでいると頭がおかしくなるからのぅ。そんなところじゃろ」

「というか私がほかに依頼を受けるって発想が恐ろしいわよ。まあ、でもそうよね。さすがに三日も働いていたら寝たくもなるわね……」

「いいや、正確に言えば三日ではないの」

「え?」

「騎士団では一週間働かされて三時間しか寝かされなかったそうじゃからの」

「え!? それでまた三日間も本部の依頼が枯れ尽きるまで働いたの!?」

「だから言ったじゃろ。わらわも想定外じゃったとっ!」



 それはもう楽しそうにリフが笑い転げる。

 彼女としてもあっさりとここまでこなしたジードに敬服しているのだ。驚きのあまりもう笑いしかこみ上げないのだ。



「あ、あはは……」



 クエナもまた、乾いた笑みをこぼすのだった。

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