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布教活動を見て

 クエナとシーラが辺境に去り、俺は一人でギルドの一階で掲示板を眺めていた。


 前よりは増えたがピンと来るものはない。


 また適当にDかCの依頼でも受けようか……


(……うーん)


 だが、王都にも冒険者が増えだした。


 ここでまた俺が依頼を受けるのはマナーが悪いだろうか。


 金なら余裕がある。少なくとも金銭で死ぬことはない。


 しばらくクールタイムに入るか。またなにか指名依頼や緊急依頼が来るだろう。


 もしも来なければクエナやシーラのように辺境へ赴くことも考えていい。もしくは他国のギルド支部もありだ。


 久々に宿でグータラ生活でもしよう。


 そんなことを考えながら宿の道中。露店が多い道に入る。祭りほどではないが様々なものが売られている。


 その中には俺の好物の串肉も売られていた。


「おっちゃん、三個ちょうだい」


「あいよ。銅貨三枚だけどジードのあんちゃんはいつもみんな手伝ってくれてるから二枚にしとくよ。あんたにとっちゃ誤差程度かもしれんがな。がははは!」


 愛想の良いおっちゃんがおまけしてくれた。作り置きされているがホカホカな串肉を貰う。


 一本口に頬張る。美味しい。


 ふと、道のりにビラを配っている集団を見つけた。


 それはギルドで依頼を断られている人々だった。


(熱心だな)


 そう思いながら二本目の串肉を頬張る。


 だが、関わりを持ってはいけないと言われている。ビラ配りとて変な勧誘をされてはたまったものじゃない。


 すこし道を外れて路地裏に行こう――と思った矢先。


「どけぇ! 邪魔なんだよクソが!」


「す、すみませんっ」


「ったく、これから仕事だってのにクソみたいなもん配りやがってよ!」


 幼女から少女になりたてそうな女子が往来を歩く男に吹き飛ばされていた。


 いくら邪魔とは言え過剰な勧誘はしていなかったように見えた。


 それに通るための道のスペースもあった。男の方が難癖を付けているように思えた。


 さすがに集団の面々が少女を飛ばした男を囲っている。


 多勢に無勢だ。


 男はそんな状況も読めなかったようだ。


「な、なんだよ」


「貴様……よくもスフィ様を!」


「待ってください!」


 一触即発ともいえる状況で倒された少女が止める。


 男たちはそれに従った。


「すみませんでした。なるべくもっと邪魔にならないようにします」


 もっと怒ってもいいと思ったが、少女は男に頭を下げて謝っていた。


 男は気まずそうに鼻を鳴らして去っていく。


「だ、大丈夫ですか、スフィ様」


 すでに何人か介抱に当たっていたが、集団がさらに集まってスフィとやらの少女を見る。少女は大きな怪我はなさそうだ。


 見たところ擦り傷くらいか。


「これくらい大丈夫です。それよりも布教をしましょう。このままだとマズいです。もっと……もっとはやく」


 その顔はどこか――必死そうだった。


 俺は串肉の三本目を食べた。






 布教活動は宿の窓からでも見ることができた。


 俺はそんな姿をぼんやりとやることもなく眺めていた。


 クエナが言うほど彼女たちは関わってはいけない組織なのだろうか。


 一つの勢力に傾注することはない……とは言うが布教を手伝い程度なら傾注ってレベルじゃないだろう。


 それは「ギルド」としてやってはいけないのだ。ギルドが後ろ盾になっている、みたいになるから。


 なら個人でやる分には……?


 ……暇だから、そんなことを考えてしまう。


 当然、俺はSランクだから影響力もある。俺がバックについてる、なんてことになったら大問題だ。


 ギルドには大きく問題なんて掛けられないだろう。


 俺が「俺」として活動することはマズい。


 だが、彼女たちがこうしてまでアステア教に反抗する理由はなんなのだろうか。


 ウズウズする。聞いてみたい……


 ……と。露店のところにマスクが売ってあることに気づいた。


 ぴこんっと頭上にビックリマークが浮かんだ気がした。


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