競争しよう
ガチャ
と、クエナが腰に携帯していた剣を抜いた。赤い鞘に収まっていたのは、実際に燃え上がっている赤い刀身だった。すごい熱そうだ。
てか、え?
「ちょっと待って。マジでやりあうの? ここで? いやいや、人が普通に往来してるけど」
「言い訳はいらない! 他を斬らなければいいだけよ!」
「いや、遠慮してたら見たい全力も見られないんじゃないのか?」
「ぐ……じゃあどうするのよ! 場所を改める!?」
言い返したら拗ねられた。
場所を改めるって言っても……
「ではギルド流に戦ってみてはどうじゃ?」
「「ギルド流?」」
クエナと言葉が被った。
すると髪や目の色と同じくらい顔を真っ赤にして俺の方を小突いてきた。
「言葉かぶせないでよ! まるで息が合ってるみたいじゃない!」
「いや理不尽な」
ここもブラックか? 先輩にいじめられるのか?
「ジードには一応説明しておかなければの。ランクが上がるにはどうしたらいいか分かるか?」
「依頼を受けるんじゃないのか?」
「うむ。依頼を受けることも大事じゃな。それは依頼を達成した際に『ポイント』が付与されるからじゃ」
「ポイントか」
「今回、わらわが言ったギルド流の競い方はそのポイントを目安にした勝負じゃ」
その後、簡単に説明された。
依頼を達成すると得られるポイントの数を競おう、というものだった。
日時は今日からの三日間だ。
なぜ三日間なのか。
これは単純に高ランクの依頼をこなすには時間がかかるとの判断だ。
「ふーん。構わないけどこれ私が有利よ?」
「ほう、なぜじゃ?」
「だって私のほうがポイントに詳しいもの。それに依頼のスムーズな転がし方もね」
「たしかに。パーティーも組まずに単独でAランクにまで上り詰めたおぬしは別格じゃろうな」
「ふふん」
リフに褒められたからか、クエナが得意げな顔をする。
「しかし、その上で勝てると思ったのじゃよ。ジードがの」
「正気……?」
「うむ、わらわの目に狂いはないであろう」
「ふーん。まあいいわ」
自信満々にリフが頷く。
ここまで堂々と信用されていたら嬉しいものがある。騎士団では常に『おまえの代わりはいるんだからなぁ!』とか言われていたし……。
「あ、そうじゃ。もしも仮にジードが負けたらSランクはなかったことにするがの、もしもジードが勝った場合はどうするのじゃ?」
「なに? 私がみんなにSランクに相応しかったと言いふらせばいいんじゃないの?」
「そんなもの既にソリアがやっておるわ」
「じゃあどうすればいいのよ」
「それはわらわが決めるものではないのう」
言いながらリフが俺を見る。つられてクエナの目も俺を見た。
なるほど。俺が代償を課せというのか。
まぁ負けたら俺が称号をはく奪されるのだから当然の流れと言えば当然なのか。
「じゃあ案内役とか?」
「案内役? なによそれ」
「俺あんまり詳しくないんだよ、外のこと。同僚の話を聞くのと、任務をこなすときにチラっと見聞きするくらいでさ。だからしばらく案内役やってもらおうかなって」
「はぁ? まぁ、それくらいなら別に構わないけど」
本当にいいの?
って顔でクエナが見てくる。
いやいや、仕方ないだろう。咄嗟に浮かんだのがこれだったのだ。
それに案外悪くはないと思うのだが。クエナにとっても時間取られるだろうし、俺も変に外のことで迷う必要がない。外の話をいっぱい聞けるのだから。
「本当にそれでよいのか? クエナがなんでもすると言っておるのじゃぞ? それこそ男女のようなムフフをな……」
「ちょっ、なんでもするとは言ってないわよ!?」
「なんじゃ、自分が負けるとでも思っておるのか?」
「いや思ってないわよ!」
「ならよかろう」
「……? そ、そうね。まあたしかに……」
「え。じゃあ案内役取り消して俺の女になってくれって改めてもいいの?」
「いやよ!?」
「なんだよ……」
ここぞとばかりに割り行ってみたがダメだった。ガードは固いみたいだ。
じゃあ最初からそんなこと言わないでくれ……
「じゃあ私が勝ったらSランク昇格は私のもの! ジードが勝ったら私が案内役になる! それでいいわね!?」
「いや誰がおぬしをSランクにすると言った。ジードのSランクを取り下げるだけじゃ」
リフのツッコミにクエナがてへっと自分の頭を小突く。
可愛いけどあざといな。
というか俺に突っかかってきたのは自分がSランクになりたいからだったのか。
まぁそれ以外の理由もとくには見当たらないし、そんなもんか。
こほんっとリフが軽く咳をして仕切り直す。
「ではクエナが勝利した場合はジードのSランクを取り消し、ジードが勝利した場合クエナはジードの案内役となる。これでよいな」
「ええ、いいわ」
「ああ。俺も問題ない」
俺とクエナの同意により、ギルド流とやらのポイント競争が始まった。