荒れるが
王都は無法者の傭兵団によって荒らされていた。
露店では物品を奪い取られ、文句を口にした商人は店ごと潰された。
道行く女性は誰彼構わず声を掛けられる。
それを諫めようと騎士団が止めに入ると即座に戦闘が始まる。しかも実力は傭兵団が遥かに勝っており、止められない。
冒険者達が加勢してもこの有り様だった。
「ちぃ……! 騎士団が王都の外から応援を呼んだらしい。だからイヤだったんだ、やつらを呼ぶのは!」
ユポーボッポが嫌悪感を隠そうともせず顔を歪める。
その隣にいたアイディも苦々しい顔つきだ。
「だが、しかと仕事はしている。私の権限で王都内にいられるまでに見つけてくれればいいが……」
傭兵団の悪い噂は当然、王都内でもあった。
門番も始めは通すつもりなどなかった。だから今まで王都の外周で待機させられていた。魔物狩りなどの暇つぶしをさせて。
けれど、それでもアイディがなんとかこじ開けてしまった。
ウィラを捜索するだけのために。
「やれやれ、なんで俺たちが娘一人を探すために動かなければいけないんですかね」
そう言いながら、一人の男がユポーボッポとアイディに近づく。
灰色の髪に赤い瞳。若々しい顔つきだが肌には幾重もの傷がある――
「――ボルキネス……。すこしは部下たちを大人しくさせることはできないのか?」
さすがのユポーボッポも強気には出られない。
ボルキネスの傭兵団がユポーボッポの指揮下にいること自体が奇跡的なこと。そのことを本人も自覚している上での言動だ。
「いやいや、無理ですよ。俺たちはクゼーラ王国が戦争しているって聞いて来たんだ。それなのにやることは商人の護衛ってんだから溜まるもの溜まってるんですわ」
そう。ボルキネスらは戦争をしにきた。
最初に傭兵団を雇ったのはアイディ名義だったのだ。王国に干渉する他国を退けるために雇ったもの。
それがいつからか商人の護衛に回っていた。
ボルキネスとしても契約期間が過ぎればすぐにでも延長なしで切るつもりだった。
「あ、そういえばですけど」
至極どうでも良さそうに、半分あくびをしながら報告する。
「お目当ての娘さんですが騎士団の本部に向かってるのを部下が見つけましたよ」
「なっ、なに! なぜそれを早く言わない!」
あまりの興奮にユポーボッポの口調が荒ぶる。
それにボルキネスがギロリと睨みつけ、ユポーボッポの態度も自重を覚えた。
「安心してくださいよ。部下が向かってます。すぐにでも捕縛したって報告が来ますよ」
「……報告じゃなくて実際に見せてもらいたい」
臆してしまったユポーボッポに代わってアイディが言う。
「はぁ。面倒ですがいいですよ。ではこちらに来てください」
面倒くさそうにため息を吐き、頷く。
ボルキネスに案内されて二人が向かう。




