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ブラックな騎士団の奴隷がホワイトな冒険者ギルドに引き抜かれてSランクになりました  作者: 寺王
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また

「また指名依頼か?」



 リフに呼ばれた俺は思わず口にしてしまう。

 イヤというわけではない。だが、勇者協会の一件以来、あまり良い印象を抱けなくなっていた。



「うむ、また勇者協会からじゃ。嫌ならやめておくか?」

「いやではないが……」



 ちらり、と隣を見る。

 いつもどおり不愛想な顔つきの美女がいた。クエナだ。



「なによ」

「いや……」



 依頼人兼試験官の言動を思い出す。



『ゴミは光に集ってろ。光になろうとするんじゃねえよ』



 到底……耳ざわりの良いものではなかった。

 それも勇者になりたい願いを持つクエナが目の前で叩きおられたのだ。

 クエナはもう勇者協会の名前も聞きたくないんじゃ……



「あのねえ、ジード。べつに私はなんとも思ってないわよ?」

「え。そうなのか?」



 クエナが意外な言葉を放つ。

 傍から見ていたが、かなり傷ついているような様子だった。



「正直すごい呆れただけよ。手段はいくらでもあるわけだから」

「なんじゃ。勇者協会の連中がなにかしたのか?」

「ええ。無法者の集まりのギルドから勇者なんて出したくないそうよ。もっと国の代表のような人がなるべきだって」

「……ほぅ?」



 クエナの言葉にリフが怒りを露にする。森にいたのなら鳥類が慌てて飛び立つほどの魔力量が溢れている。

 ……というか、そこまで言ってないと思うのは気のせいだろうか。



「なるほどの。だからお花畑のウィーグが選ばれたわけか。小国とはいえども王子じゃからな」

「へー、あいつが選ばれたのか」



 予想外だった。

 あまり強そうではなかったが禁忌の森底の中心部にまで到達できたのか。それほど甘い場所ではないのだが、なんらかの混乱にでも乗じたとかだろうか。

 クエナとは同じランクだが、格は遥かにクエナのほうが上だ。



「それじゃあこの依頼はどうするかの。指名依頼じゃがポイント等は下げないようにしておくが」



 リフが一応と依頼書を出した。

 手に取り確認する。

 依頼組織は勇者協会だ。

 内容は勇者最終選定の場所の護衛とある。



「勇者を決める場所なんだろ? 集まってるの強い連中だろうにどうして依頼するんだ?」

「嫌味でしょ? 勇者候補だった人を勇者になるところに呼んでるし」



 今回の指名依頼で俺やクエナが呼ばれてシーラが呼ばれてない理由はそこか。

 シーラも騎士最終決定の方に呼ばれるのだろう。

 っていうか嫌味って即答させる勇者協会もすごいな。擁護の余地なしか。



「……はは」



 クエナの答えに乾いた笑いが出る。

 すでに呆れは通り越していた。



「私は受けるわよ。べつに僻みもないし、嫌味を受けてもなんとも思わないから。なにも起こらないだろうし、お金と依頼達成っていう名目だけいただくわ」

「俺も。断る理由は……ないしな」



 一瞬だけ試験官に塗りたくった泥顔が脳裏を過った。

 しかし、それは断る理由ではない。



「そういえば最終選定ってなにやるんだ?」

「うーむ。毎年やることが違うのでな。たしか今年は候補者同士のタイマン……いや、ドラゴンを放ってそれを討伐する……じゃったかな?」

「なるほどね」



 勇者協会側もパフォーマンス的なことを考えているようだ。

 候補者同士のタイマンとか面白そうだな。



「ドラゴンの討伐、ね。おとぎ話でも模しているのかしら」



 どうでも良さげにクエナが言った。

 勇者がドラゴンを討伐するお伽噺ってのもあるようだ。その再現となれば観客としても見ていて面白いのかもしれない。

 余興で討伐されるドラゴンからしたら散々だろうけど。



「まぁ勇者試験が行われていることは公表されておっても誰が落ちたかまでは目立たん。そもそも知らされている者も少ないはず。侮蔑の目もないじゃろう。ゆっくり見てるがよい」

「そうね。落ちた者同士で傷の舐め合いでもさせてもらうわ」

「依頼を受けているのはジードとクエナくらいじゃろうがな」

「二人で舐め合うか」

「……な、なにバカなこと言ってるのよ!?」

「おまえが言ったんだろ!?」



 理不尽に小突かれた。


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