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歴史

 その平凡な部屋にはひとりの老人と子供がいる。


「おじいちゃん、なにを読んでいるの?」

「この世界には多くの英雄がいたんだ。彼ら彼女らに関する書籍を読んでいるんだよ」

「へー。見せて!」

「あ、こら……」


――――――


 ジード

 クゼーラ王国騎士団の後、ギルドSランク冒険者、ウェイラ帝国帝王となる。

 大陸中に形成された人脈と本人による圧倒的な力により、類を見ない長期間の平和を築き上げる。この時代に魔法とマジックアイテムの進歩が始まる『知性の革命』が起こったことから、『治世王』とも呼ばれる。多くの夫人と連れ添い、すべての夫人が後継者を持つことから、股の名を「痴性王」とも呼ばれる。


 クエナ・ウェイラ

 ウェイラ帝国王族の血筋に生まれながら、放蕩してギルドにて冒険者に所属した。最終地位はSランクだった。ジードが初めて恋をした女性として有名で、後に夫人となる。ジードと肩を並べるため、常に向上心を持っていたとされる。戦闘の際は誰よりも前に出ていた。姉妹のルイナ・ウェイラとは常に言い争っていたともされるが、誕生日プレゼントの贈り合いで「どちらが相手を喜ばせるか」という点で争っていた記述も残っていて、実は仲が良かったのではないかと囁かれている。


 ルイナ・ウェイラ

 ウェイラ帝国王族直系の血筋に生まれる。ウェイラ帝国を最大判図まで広げ、人族史上最大の国家を築き上げた。後にジードに帝位を譲り、自らは妻の座につく。しかし、その権勢は衰えることがなく、大陸で彼女に逆らえる者はいなかったという。姉妹のクエナとは犬猿の仲だと伝わっているが、クエナが夫のジードに誕生日プレゼントとして手作りクッキーを作ろうとした際にどうしても足りない貴重な素材があったところ、ルイナが国庫を開いてまで協力していたとされる。


 シーラ・イスラ

 クゼーラ王国武門の家柄に生まれる。騎士学校を首席で卒業した後、クゼーラ騎士団の副団長に大抜擢される。しかし、父の謀反によって騎士団は事実上の瓦解を果たす。シーラ自身は反対と告発をしていたこともあって無罪となり、後に冒険者ギルドに所属する。最終地位はSランクだが、活動はあまりないとされ、ジードの夫人としての活動が目立つ。特筆すべき点として、身ごもった子供の数は夫人の中で最多とされる。


 ソリア・エイデン

 神聖共和国の司祭の家に生まれる。治癒において比類ない才能を持ち、『聖女』の二つ名でも呼ばれていた。アステア教で筆頭司祭を務め、アステア教が不正で瓦解した際も真・アステア教で筆頭司祭を任される。またギルドではSランク冒険者も兼任していた。そのほか、非営利の団体を幾つも運営しており、神聖共和国では政治に絶大な影響力を持った。一説によると百万人を下らない数の命を救ったとされる。後にジードの夫人となって表舞台からは姿を消すことになるが、裏では隠然たる発言力を持っていたとされる。


 フィル・エイジ

 エイジ公国の姫として生まれるが、まだ幼い頃にクーデターで滅ぶ。捕縛された後に処刑されそうなところ、ソリアによって助命される。常に聖女ソリアの傍に連れ添い、高い剣技の腕前を持っていたことから剣聖の二つ名で呼ばれた。幾多の国々から将軍待遇の招聘もあったとされるが、すべてを断っている。最終的にジードの夫人となっているがその理由は議論されることが多い。「ソリアに付き従った結果、ついでに結婚したのではないか」という説と「本人の意思も強かったのではないか」という説だ。どちらも根拠はあるが、後者の理由に、シーラ・イスラに次いで二番目に多くの子供を出産していることが挙げられる。


 ユイ・ムラクモ

 東和国の大公の家柄とされるが、滅亡の後は冒険者ギルドに所属する。最年少でSランクに至り、ウェイラ帝国隠密部隊隊長や第0軍軍長も歴任する。ジード夫人になった後は目立った活動がなくなるも、ルイナからは最も信頼されていたそう。かのフィル・エイジに天然な言動を注意され、実力行使を受ける場面もあったそうだが、簡単にいなしていたとのこと。実力だけでいえば人族でもジードに次ぐと言われる。


 ネリム

 生まれた場所や年齢は不明。突如として出現し、ギルドでSランク冒険者に抜擢される。ジード夫人の中で最も発言権が強かったとされているが、その理由は不明。ユイ・ムラクモ以上の実力者だった可能性も指摘されているが、戦闘経歴が少なすぎるため、確定的な情報はない。かの歴代最強の剣聖と名高い〝ネリム〟と酷似しているとの指摘がある。空白の時間が長く、それを証明できる人間がいなかったのか、資料には残っていない。本人も目立つことは嫌っていたとされる。


 エイゲル

 魔導圏学、魔力放出学などの開祖と名高い。ジード夫人の中では最も著名で、最も不明な点の多い人物。マジックアイテムの歴史を千年飛躍させたと言われる。保持していた特許だけで大陸の資産の1割を手中におさめていたとも。元々は男性だった説があるが、ネリム以上に表舞台に立つことがなく、情報が少ない。頻繁にジードと串肉を食べている光景が目撃されている。


 リフ

『賢者』として魔王討伐を行い、一代で巨大組織『ギルド』を建てて盛り上げた傑物。生み出した魔法の数は百を越して確認されている。同時代にルイナ・ウェイラがいなければリフが大陸を支配していたとも。明確にジード夫人となった記述はないが、確認された情報では夫人達の中でも抜きん出てジードと多くの時間を過ごしている。いつしかぱたりと消息を絶つが、ジードの影にリフを見たという目撃情報があるなど、謎と伝説を残している人物。


 スフィ

 後に民主による大陸統一政府を樹立する。幼い頃から育まれた手腕と実績は強い信頼とカリスマを兼ね備え、長らく人々に歓迎された。しかしながら、両親が殺された過去からプライベートは組織内部の極一部を除いて秘密にする徹底ぶりであり、過去の過ちに対する叱責も多く、後世でも賛否が分かれる。黒い髪の子供を連れ歩いていた記述があり、実子とされるが不明のままである。


……他。


――――


 そこは墓だ。様々な情報を辿って、ようやく俺の世界の両親を見つけた。顔なんて覚えていないけど、俺を産んでくれたことだけはたしかだ。俺の世界が変わったのは冒険者になってからだろう。でも、俺が世界を見られたのは両親のおかげだ。

 本当は会ってみたい。本当は話してみたい。だから、こうして墓の前で手を合わせる。心が通うような気がするから。

 二人とも、見ているかな。新しい家族ができたんだ。俺の大事な人たちだよ。どうか、これからも見守っていて欲しい。

 軽い気持ちで投稿を始めましたが、かれこれ四年弱も書いていました。しみじみ思うのは「ここまでよく続いたな」と。これも応援していただいた皆さんのおかげです。

 本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです、 良い物語をありがとうございました。
[一言] 完結お疲れ様です。 未完で終わる作品が多い中で、最後まで書ききってもらえる事がどれだけ嬉しいか┅。 面白い作品をありがとう!
[良い点] ・エイゲルとネリム、やっぱりジードとくっついたんだな。何となくそうなると思ってたぜ。 ・スフィ、ジードと結ばれたみたいで良かった!二人がイチャついてるときって、どんな感じだったんだろう?…
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