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まとめ

 もっと賢い人ならば、こんな救済方法は取らなかっただろう。

 もっと善良な人ならば、全員が救われる方法を考えただろう。

 もっと良い物語なら、そもそもこんな騎士団は生まれなかっただろう。



 しかし、俺は俺だ。

 生まれて五年して物心ついた時には親が死ぬところを見せられて、滅多なことでは腕の良い人でも近寄らない森に放置され、ようやく脱出できたと思えば酷使された。

 常識や言葉は団員との会話でしか学べない。剣術や魔法なんてものはすべて独学だ。教科書を見ればまったく違う記載もあるだろう。



 まともじゃないからこうなった。



 ギルドマスター室。――内密に行なっていた依頼達成の話をしにきたのだが。



「王国は転換期を迎えたらしいの」



 リフが菓子を摘まみながらそう言った。

 言葉の通りだ。



 王国騎士団は事実上の崩壊を迎えた。これが俺の『救済』だった。

 指揮官以上の者達は内乱によって死亡、もしくはクーデターを引き起こそうとした罪により死罪を受けた。

 騎士団団員の九割は脱退し、故郷に戻ったり、冒険者となったり、傭兵となったり、手に職をつけたり、と騎士団とは関係のない方面へと向かっていった。

 残り一割はあんな惨劇であったにも関わらず騎士団を再建しようと今も奔走をしているそうだ。



 だが、こうも弱体化してしまったのだ。

 当然――王国の領土は三割も侵食された。いや、むしろ三割で済んでよかったと言えるレベルだ。

 ここまで騎士団が腐っていたのは管理不行き届きとバッシングを受けた王や文官は世代交代を果たし、彼らの財のほとんどを投げ打って冒険者や傭兵を雇い、侵略を防いだ。



「これもどっかの誰かさんが思いっきり暴れちゃったせいね」

「ま、まだ抑えていた方なんだが……」



 クエナに言われて余計にしょげこむ。

 俺だって願わくば平和的に解決したかったさ……指揮官達に反省してほしかったさ……

 もっと器用ならって思うよ……



「ジード」



 この部屋にはシーラもいた。

 彼女もまた――騎士団を抜けていた。

 原因は分かっている。騎士団には悪い思い出しかない。残っていてはシーラ自身が壊れると思ったのだろう。



 無責任だ、と無責任なやつなら誹るかもしれない。

 だが彼女は彼女なりに責務を果たそうとした。その結果で俺が騎士団を崩壊させた。俺が彼女の見ていた光景を、より残酷なものにしてしまった。



 つまり悪いのは俺だ。

 責めるなら俺を責めろ。だが俺は依頼をまっとうしたつもりだ。



「シーラ――おまえが俺を責めても――」

「しょげないで。おっぱい揉んでいいから」



 もにゅ、っと俺の手を握って自らのふくよかな胸部に――



「――え、なにやってるのシーラ! 俺の手が! 俺の手がおまえの胸に!」

「うん。だって私はあなたのものだから」

「い、い、いやいやいや! だからその話は別にいいからって……!」



 王国騎士団をやめ、シーラは忠誠を誓うものがなくなってしまった。

 そんな折だった。

 クエナが俺の手配した冒険者やら奴隷の首輪の確保をギルドに大金――俺の全財産――を払って依頼したと告げてしまったのは。

 それからシーラは「私が忠誠を誓う人を……見つけた……! 一度忠誠を誓い、守りきれなかったけど……ダメだったけど今度こそは成し遂げるから……私をあなたの騎士にして!」と俺に言い――このありさまだ。



「ジードは……私が騎士じゃイヤ……? 守りきれなかった私が騎士じゃ……いや……?」



 うるうると上目遣いでシーラが俺を見る。

 ……くっ! だ、ダメだ……!

 こんな美少女(巨乳)に見つめられると心臓が跳ね上がる……!



 待て。手の感触から心臓の鼓動が……これは……シーラの…………こいつもめっちゃドキドキしとるやないかいっ!! 手慣れてないならやるなよ!!



 ってか! てか!

 ば、ばばば、ばか俺なに手の感触に全神経集中させているんだ落ち着けっ!

 そうだ、とりあえず一回揉んで考え――



――ボっ



 俺の首元にものすごい火力の炎をまとった剣が……。



「ク、クエナ……?」

「その手を離しなさい。汚らわしい……」

「あ、あれ。おまえそんなキャラだっけ!?」

「ダメよ! ジードはしょげていたもの。これもすべて私が負担させてしまったから……。依頼金も満足に渡せないし……だから私がこれから一生尽くすの!」

「シーラ!? 話がこじれるからやめてくれ! というかおまえが言葉を発すたびにクエナの剣の炎がどんどん燃えていくんだが! あちぃっ!」

「おーい。イチャイチャなら自宅でやらんか若造ども」



 リフが肘をつきながらこちらを見ている。ただ言葉とは裏腹で、にっこにこの笑みでこちらを眺めている。



「おまえ楽しんでるだろっ! 止めてくれ!」





 お父さん、


 お母さん。


 あなた達が森に俺を置いて行った結果。


 俺は死ぬ思いで森を生き抜き、死ぬ思いで騎士団を生き抜き、そしてついに――ギルドで死ぬかもしれません。



「手を離せって言ってるでしょうがぁぁ! ジーーーードーーーっ!!」



「ダメよ! ジードは私のおっぱいを揉みたがってるのーー!」



「くははははははっ! い、いちゃつくなら、自宅でのっ! くぷぷぷう……!」





お読みいただきありがとうございます。


出来る限り更新していきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 騎士団のクーデターはなんとか収まりよかったよかた。 [一言] シーラの行動が極端に変わりすぎです。著者さんの欲望はわかりますが、この辺シーラの今までと違い過ぎるのでかなり違和感あります。
[気になる点] >森に俺を置いて行った結果。 両親は魔物に食い殺されたのでは?
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