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ブラックな騎士団の奴隷がホワイトな冒険者ギルドに引き抜かれてSランクになりました  作者: 寺王
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けつい

 一人、別の方向に歩き出すロニィに声をかける。


「助かったよ。ロニィ」


「気にしないでいいのだ。そもそも何もしていないのだ」


「いいや、おまえのおかげで戦闘せずに済んだ。……それと、聖剣を頼む」


「分かってるから本当に欲しいのなら声を掛けない方がいいのだ~」


 手をひらひらと振りながら、ロニィが突き放してくる。


 クエナが怪訝な様子を見せる。


「どういうこと?」


「成祭なのだ。獣人族は実力でトップを決めるけど、若手の一番を決める祭りは指標の一環として投票によっても決まるのだ」


 ロニィが髪をたなびかせながら、面倒くさそうに肩を竦める。


「……投票」


 ひとりごちりながら周囲を見る。


 冷たいまなざしが俺達を取り巻いていた。


「なるほど。あまり関わらない方が良いってことか」


「そういうことなのだ。私も助けてポイント稼ぎのつもりだったのだ。けど逆効果だったのだ」


 それだけ言って、ロニィが片手をひらひら振りながら俺達から離れていく。


 ふーむ。


「それで、どうする?」


 クエナが横から俺の意思を確認してくる。


「ロニィはあまり乗り気じゃないみたいだったな」


「そりゃそうよ。自分でも言ってたけどポイント稼ぎのためだったんでしょ。私たちを助けても嫌われるだけじゃない?」


「今からでも何とか奪い返す方法を考えた方が良い気がしてきた」


「あれは獣人族の王様なのよ。やめとくことをお勧めするわ」


 クエナがシャレにならないくらい真剣な顔で窘めてくる。


「だが……」


「安心なさい。ロニィも成祭では負けたくはないはず」


 たとえ乗り気じゃなくとも真剣にやってくれる、ということだろう。


 まぁ、不安要素を考えていても仕方ないか。


「俺たちに何かできることはないかな」


「あまり関わらないこと。っていうのは彼女も言ってたわね」


「なら……帰った方が良いのか? 信じて待つのも一つの手だけども」


 クエナが顎に手を当てながら眉間に皺を寄せる。彼女にしても慣れない土地の催しで答えは簡単に導けないようだった。


「そもそも成祭ってのがいつ終わるのか、よね」


「ああ、そうだな」


 帰るにせよ、また聖剣を取りに来なければいけない。ロニィが勝ったとしても、強奪するにしても。


 そのために終わる日程を詳しく知らなければ、いつくらいに獣人族領に戻ればいいか分からないのだ。


「諸々の話を聞くためにギルド支部にでも行きましょうか。あそこなら人族のギルドの人もいるはずだから」


「そうだな。それに獣人族の依頼も見てみたかったところだ」


「何度か受けたことがあるけど、そんなに変わらないわよ」


 クエナが肩を竦ませながら仕方なさそうに微笑む。


 それから、ふと思い直したように表情をするりと変えてから居直す。


「念のために再確認したいんだけど。……聖剣を取り返したいのよね?」


「ああ。どうして聞くんだ?」


「正直な話をすると私は別にジードがスフィに返す必要はないと思ってる。ツヴィスだっけ? あの獅子の獣人が返すって言っているんだから、面倒はやめて帰ってもいいと思うわよ」


 そのことについては考えた。


 クエナの言うことにも一理あるのだ。その選択をした方がいざこざを起こさずに済む可能性の方が高い。


 しかし。


「あれは俺がスフィから預かったものだ。俺が返すべきだと思う」


「ま、それもそうね。それに本当に返してくれるかどうかは怪しんでも良いところだけど……そこまで考えたらジードが暴れそうだから止しておくわ」


 軽くからかうように笑うクエナはどこか愛らしかった。


 どこか、そう思ってしまう自分が照れ臭かった。


「俺は理性のない魔物じゃないぞ」


 きっと俺の頬には笑みが零れていたことだろう。


 それを隠すように顔が陰るよう手で覆うのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 力こそ全てなら、わざわざ変なポイント制ルールにしなくてもジードが戦えば済む。 武闘祭ではなく何故ポイント制ルールなのかも不明。 ジードの戦うことへの躊躇いも理由付けも弱い。 今まで全て力で解…
[良い点] 一番強い者がルールで、最終的に返さないってなったらジードがキレて竜王達が応援に呼ぶんで獣人国を壊滅させるか、全力で広域殲滅魔法ぐらい連発して国王以下主だったものを上から順番に蹂躙して持ち帰…
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