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ブラックな騎士団の奴隷がホワイトな冒険者ギルドに引き抜かれてSランクになりました  作者: 寺王
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それから

「――魔王になってくれない?」


 フューリーが俺にそんなことを言った。


 予想外ではあったが、結局のところ今まで誘われてきた通りだ。答えに変わりはない。


「断る」


「あらら。振られちゃった」


「俺の呼びかけに瞬時に応えられたってことは近くに居たんだろ? ならクオーツの誘いの返事も聞いていただろうに」


「でも魔王だよ? そもそもが違うよ。一つの領土と魔族全部の領土じゃあね」


「同じだよ。結局は土の上に住むってだけだ」


「あははっ! やっぱり面白いなぁ。でもそっか。断るんだね」


 がらりと雰囲気が変わる。


 能天気な笑みから、殺気を放つ剣呑な表情に。


「もしかしたら何かが変わると思ったんだけどな、ジード君が魔王になってくれたら」


「……?」


「まっ、いいや。――不安要素はここで取り除かせてもらうよ」


 ズンッと五感全てが狂うような、次元一つがズレたような、そんな空気が流れる。


 フューリーと三人から溢れ出る戦闘のための魔力。


 俺を喰うつもりのようだ。


「……あいつらがいなくて良かった」


 この空気は到底、耐えられるものではなかったろう。


 その証拠に俺の後ろに立つルイナやウェイラ帝国の一部が意識を失いかけている。


『……っ』


 俺の魔力を以って、彼女らを包む。


 するとフューリー達の放つ魔力から解放されたようで、少しは楽そうにしていた。


「余裕だね」


 フューリーがそんな俺を見て言う。


 ルイナも察したようで俺に視線を合わせた。


「私は場違いのようだな。すぐに離れて軍団長クラスに加勢するように――」


「――そんな時間あるわけないじゃん」


 場の魔力帯が一変する。


 まるで重力が何倍にも感じる。


「なんだ、これは……」


「マジックアイテム――『ルスト』。本来は神獣とか、多色の竜王をまとめて封印するレベルの時に使うやつさ」


「ぐっ……」


 ルイナが左胸を抑えながら膝を付けそうになる。


 そこにユイが現われて彼女を支えた。だが、ユイもまた苦しそうにしている。


「悪いけど、ここら一帯はボクらの支配下だ。ジード君も、ウェイラ帝国の面々もみんな死んでもらうよ」


 飄々とした顔つきに冗談めかしたものは感じ取れない。


 本気なんだろう。


「……はは」


 ルイナが笑う。


「なにが可笑しいんだい?」


「いや、なに。魔族でもズルい知恵は持っているのだと思ったんだ」


「ジード君はさすがに怖いからね。でもやっぱり人族の専売特許だろうし、鼻で笑っちゃうよね?」


 余裕しゃくしゃくとフューリーが言う。


 それにルイナが小さく頷いて見せた。ぴくりとフューリーの頬が痙攣した。


「くくく。この程度は私も考えたさ。だが、結局は無駄だと気づいた。――だから私はジードに全幅の敬意を持っているんだ」


 ルイナの目が俺を見た。


 フューリーがあからさまに動揺する。


「なにを、そんな……!」


「――褒められるのは嬉しいが、俺を倒す策略を周囲が練っていると考えると怖いな」


 パチンっと指を鳴らす。


 同時にガラス細工がひび割れるような音が周囲四方で響いた。


「『ルスト』がっ!? あり得ないよ! どうやって……!?」


「魔力を当てただけだ。発生源も、探知魔法で分かるしな」


「それがあり得ないんだよ! 『ルスト』は魔力で保護されているはずだし、そもそもジード君が動けるはずがない……! 魔力も封じられて身体の感覚さえ麻痺しているはずだよ……!?」


 まるで化け物を見るような顔で、フューリーが俺を見る。


 それだけの自信があったのだろう。


 いや、そんなこと言われても、


「できるんだから仕方ないだろ」


 としか返しようがない。


「……もしかしてマジックアイテムから放たれる魔法を魔力で阻害している……?」


「ああ、そうだ」


 いくつも波状している幾つものマジックアイテムから放たれる魔法を一つ一つ跳ね除けている。俺の魔力をもってして。


「あははっ! ありえない、ありえないよ! だってそのレベルは魔法を構成する魔力を一つ一つ捉えていることになる! ボクだって薄ぼんやり程度でしか見れないのに……」


「それが俺の強みなんだろうな」


「……いやいや、見えていてもだよ。仮に見えていたとしても、砂粒程度に拡散された魔力をどうして! 一つでもジード君に触れれば弱体化するはずだ!」


 見る見るフューリーの顔から余裕がなくなっていく。


 このマジックアイテムがフューリーにとっての切り札だったのだろうか。


「まぁ、一粒たりとも逃しちゃいないからな」


「――百や千じゃない。……一万、十万、百万の世界だよ……?」


「ああ。そうだ」


「……あはっ」


 無理やり息を吐くように、フューリーが笑声を挙げる。


 そして、狂ったように目を見開いた。


「あはははははははははははっ! やっぱりジード君は危険だよ……!!」


 それが合図だった。


 息を合わせたような連携でフューリーの後ろに仕える三人が飛び掛かる。


 最初に攻撃を仕掛けてきたのは半透明の女だった。


 手で掴もうとしてもすり抜ける。


「私はアンデッド。存在自体が魔力の――ガッ」


 何かを言いかけたようだが改めて両手に魔力の層を込めると触れられた。


 なるほど。魔力で身体を構成しているようだ。マジックアイテムと同じ、もしくはそれ以上に小粒の塊で一人を成していると。


 だが、結局のところ要領は似ている。逃さないように俺の魔力で女の身体を包み込む。


 首を握り締めて地面に押し付けると地面がクレーターを作り出す。


 反対から燕尾服の男が拳を突き出す。


 受け止める。反動だけで背後の木々が揺れ動く。


 ジュッと嫌な音が手のひらから聞こえる。すぐに手を離す。手のひらが焦げていた。男の拳を見ると紫色の粘液が塗られていた。


「めんどうだな」


 ユイと視線を合わせる。こくりと頷かれ、ルイナを伴って下がっていく。合わせて他の兵たちも退いたのを確認する。


「参式――【炎薇】」


 俺の言葉と共に周囲が炎に包まれる。


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[気になる点] >いくつも波状している幾つものマジックアイテム
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