さらなる勢力
そこは建物。
魔族アドリスタ領にある、巨大な研究施設だ。
「ほう。ここが動力源になって魔力を上手いこと分配しているんですな」
モノクルを掛けた、人型の魔族。
白色の尻尾が生えており、先端は尖っている。
露出の少ない燕尾服を纏った男の手の甲や頬には竜の鱗が生えている。瞳は爬虫類のような獰猛さを持っている。
男が手に持っているのは女神アステアを模した人形だ。
かつてジードが屠った七大魔貴族の一角であったユセフが、アステア教の人々の魔力を回収するために使っていたものに該当する。
「はっ。こんな小賢しいものなんかに頼るから雑魚なんだよ、あいつは」
仮にも七大魔貴族であったユセフを一笑する、大男。
肌は岩のようにゴツゴツとしている。
左右合計六本の腕が生えており、同様の数だけ目が存在していた。
「腕自慢のデンダー君はそう考えるでしょうけれどもね。私からしたら大変興味深いものばかりですよ。仮にも七大魔貴族になれるだけはある」
うんうん、と燕尾服の男が頷く。
「でも、てめぇ――ロクンでもユセフには代替わりできるんだろうが」
「ははは。ユセフさん程度は簡単に」
腕が六本ある男、デンダー。
燕尾服の男、ロクン。
並々ならぬ雰囲気を纏わせている。
「おーい。そろそろフューリーさんところ行くぞ~」
不意に二人に声をかける存在が現れる。
それは辛うじて声から女性であることが分かる、半透明のアンデッド。所々が爛れており、場所によっては出血している。輝きのない白髪を持っている。
「おや、リリルレさん。…………ふむぅ。できればもう少し見ていたかったのですが」
「んなもん、適当な手下どもに見張らせとけよ」
「そうですねぇ。ちょっと、そこの君。ここしっかり守っておいてね」
半透明のリリルレに呼ばれ、三人は研究施設を出る。
同時にロクンが外で構えていた一人に声をかけた。それはロクンの部下の一人だ。
甲冑に身を包んだ騎士のような容貌をした兵士は、黙って膝を付いている。その傍らには白い大蛇が横たわっている。
Sランクの魔物――リヴァイアサン
ロクンの部下はそれほどの魔物を倒していても全くの無傷。どころか土ぼこりすらも付けていない。
そんな者を従えている彼らの強さは推して知るべし。
魔王に最も近いフューリーの最側近、【三魔帝】
王とは直接名乗らぬものの、その強さから更なる冠名を持っている、正真正銘の怪物たちだ。
彼らはフューリーと出会わなければ、それぞれが七大魔貴族になっていたであろう者たち。
では、フューリーは――。




