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ブラックな騎士団の奴隷がホワイトな冒険者ギルドに引き抜かれてSランクになりました  作者: 寺王
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おはなし

 ギルドマスター室の扉をノックして「入るのじゃー」と返事が来る。


 本当に帰ってきていたようだ。つい先ほど出て行ったばかりだというのに、行き違いレベルだな。


 そんなことを考えながら中に入る。


 久しぶりのリフとのご対面だ。


「ほー、これまた。魔族か?」


 顔を合わせての第一声はこれだった。


 訝し気に、目を凝らしながらフューリーを見ている。


 やはりこの幼女はすごい。可愛いだけじゃなく、俺の隣に立つショタの正体も見破れるようだ。


「初めまして! ギルドマスターのリフさんっ。僕はフューリーだよ!」


「うむ。初めまして」


 普通に会話をしている。


「なんだ。あんまり驚かないんだねー?」


「魔族とは何度も会うているのでな。敵対的な者もいれば、お主のように敵意のない者もいる。そこら辺は七大魔貴族の志向によるのは分かっている」


 どうやら従えている主の考え方次第では付き合い方も変わって来るらしい。


 伊達に自称年を取っているだけある。


「話が早くて助かるよー。それでさ、ジード君に依頼があるんだけど聞いてもらえないかな!」


「あい分かった。しかし、その前にジード」


「ん? なんだ?」


 リフが俺の方を見る。


 それから満面の笑みでサムズアップする。


「エルフの依頼ご苦労であった! 既に支部の拡大と幾つかギルドにとって利益のある取引や契約もできたのじゃ。さすがであった!」


「おう。なによりだ」


「その平然とした態度も憎たらしいのう」


 好意しかない嫌味を言ってくる。


 それだけリフにとって、俺のエルフでの功績が良いものだったことを示している。


 横からフューリーが顔を覗かせて、俺とリフの顔を見る。


「えー! なになに! ジード君、エルフの里でも依頼をしたの! あそこまた閉鎖環境になってなかったっけ! もー! やっぱりボク見る目あるかなっ」


 ふふんっ、と鼻を高くする。


 まぁそう思ってもらえるのなら光栄と取るべきか。


 だが、リフはやはり訝し気だった。


「魔族にしては詳しいの。エルフは魔族に対してはずーっと外交を閉ざしていたであろう」


「まぁね。暇人だから情報収集してたんだ!」


 自慢げに答える。


 だが、その回答ではリフの不信感は拭えなかったようだ。


「ふむ……。お主、依頼があるとか言っておったの。どんな依頼じゃ?」


「それはね、ジード君に旧ユセフ領を取るのに協力してもらいたいんだ! もちろん謝礼は用意してあるよ!」


 まぁ、予想はしていた。


 侵略戦争の下りからそんな展開にはなるだろうということだけは分かっている。


 だが、リフの反応はそんな俺とは正反対だった。


「――!」


 その顔は怪訝から警戒に移り変わっている。


 敵意こそないが、触れれば飛び跳ねて襲い掛かってきそうなほどのものだ。


「お主、それがどういう意味なのか分かっておるだろうな」


「もちろん!」


「……ふむ」


 リフが考え込む。


 その会話の意図が俺にはイマイチ理解できなかった。


 ギルドは依頼でさえあれば、例え戦争であろうとも冒険者の意思によっては受理する。


 だから考え込んでいるのは戦争とは別の問題だ。


 他種族の戦争に割り入ることについて考えているのか。


 それも違うだろう。エルフとダークエルフの戦いには口も手も出せた。もしも問題があるなら支部員であったルックが止めていただろう。


 別の問題がここにはある。


 俺は素直に尋ねた。


「どういうことだ? 普通の戦争とは違うのか?」


「うむ」


 リフが頷く。


 そして続けた。


「ジードは七大魔貴族とは何か分かっておるか?」


 意味深な問いだ。


 そういえば深くは調べたことなかったな。人族内の常識や情報を調べるので手いっぱいで、他種族のことに関しては何も触れていない。


「そうだな……文字のままなら魔族で偉い七人ってところか?」


「ふっふー、全然違うよジード君! 七大魔貴族っていうのは、七つに分けられた領土を持つ魔族のことさ!」


「……七つに分けられた領土を持つ魔族」


 すこし混乱する。


 が、すぐに飲み込めた。


 つまり、魔族には七つの領土があって、それらを一つでも持っていれば七大魔貴族を名乗れる、ということだろう。


「けど、それって領土を半分ずつ持っていたら八大魔貴族とかになるんじゃないのか?」


「ふふーん。その時は、その領土は換算されないのだ! しっかりと、完全に一つの領土を持っていないといけないのが条件なのさ!」


「へぇ。なるほどね」


 七大魔貴族の『七』は人ではなく領土のことを指していたわけだ。


「それだけではないのじゃ。四つ以上の領地を持つ魔族は――」


 リフが続ける。


「――『魔王』として認められる」


 その言葉はどこか重たかった。


「魔王か」


 どの文献でも書籍でも、子供が読む絵本でも魔王のことは危険で野蛮なやつだと描かれている。


 かつての魔王達は全員が力のままに暴れていた。それが他種族にまで及び、侵略戦争に繋がっていたらしい。


 あまり良い話がない『魔王』たる条件に、俺の隣のショタが……。


 想像は出来ない。


「しかしの、もしも旧ユセフ領をジードの力で取ったところでお主は守れるのか? 下剋上を果たそうとする猛者たちが魔族には多くいるじゃろう」


「大丈夫さ! そこはなんとかする!」


 フューリーが無計画そうな返事をする。


 実力主義の魔族では当然のように行われているらしい、下剋上。


 リフの心配も理解できる。


「ふむ……しかし、今はちと面倒じゃの」


 リフが眉間に皺を寄せる。


 いかにも困った風体だ。


「何かあったのか?」


「うむ。Sランク試験はあの空いた旧ユセフ領――即ち『アドリスタ』領で行われている」


 随分とまぁ……それは面倒なことだ。

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[気になる点] どうやら従えている主の考え方次第では付き合い方も変わって来るらしい。 →「従えてる主」...いやいや、主を従えちゃダメでしょ。  仕えないと。
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