俺の話を聞け少しだけでもいい
ヒーローものと思っていた方はがっかりするでしょうが少し変化球を投げてみました。
はい、カット―!
お疲れ様。今日もいい演技だったよー
そう言って俺を労ってくるのはこの「インスタントヒーロー」の監督である「永野 和行」である。
特撮マニアが興じてそのまま業界入りした生粋の特撮オタクである。
それでも彼の手掛ける作品は悉く大ヒットを生み出し今や日本の特撮界のホープとも言われている。
そんな彼の作品に出たいという役者は多く俺が何故オーディションを通過出来たのか未だに聞いても答えてはくれない。
俺の事を少しばかり話すと、名前は飯倉 朱職業「売れない俳優」である。朱なんて名前は女みたいで好きではないのだがこの業界にスカウトされたときに社長が女の子と思ってスカウトしたら男だったというクソみたいな理由でこの名前にされてしまった。
なので、俺としては今回のこの特撮ヒーロー番組「インスタントヒーロー」にて何としても男らしさを出してイメージチェンジを図りたいのである。
監督が俺のそばに来て改めてこの番組のコンセプトについて語りだす。
「もう何度もコンセプトについては話したと思うけれども確認の意味も込めてお互いの意見のすり合わせをしておこう。今回のインスタントヒーローは主人公がカップラーメンにお湯を入れている3分間だけヒーローに変身できるという設定で3分経つと強制的に変身は解ける。再度変身するためには出来上がったラーメンを食べきり再度お湯を沸かしてもう1つラーメンを作る必要がある。ここまでは大丈夫かな?」
今まで何度も確認してきたことをまた言われて少しウンザリしたが顔には出さずにはい、大丈夫ですとだけ答えておく。
「うんうん、今回は第1話の収録終わりだけれども今後朱君には少しきついかもしれない注文を出すけれどもそこは頑張って耐えてほしい。」
そう言ってくる監督に不安を感じながら
「それってどういうことですか?」
と聞き返す。
「まだ先の話なんだけど3分では倒せない敵も出てくるからその時は頑張ってラーメンを完食してほしい。」
「え、食べた体で収録するんじゃないんですか?」
「食べ物を粗末にするのは良くないし、僕は君の鬼気迫る演技が見たいんだ。」
まるで子供の様に目を輝かせながら自分の頭の中にある設定をあれやこれやと話す姿はこの仕事に大切なものは何かということを少しだけ俺に分からせてくれたように感じた。




