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女装メイド大戦  作者: T
第2章 9人の精霊編
22/24

第19話 海外

 「おはよう、海道」

 「よう」


 ボルバとの決戦から数日後。遠藤は海道家にお見舞いに行くことにした。「パワー9と交戦した」ということを蒼井からの連絡で知ったからだ。一方で体調的にはすっかり回復した海道とヤナギだったが、その表情は暗い。一応『限定解除』を使いこなすための修行は続けてはいるものの、心ここにあらずといった状態だ。


 「大丈夫だったか」

 「ああ」

 (元気ないな… 大丈夫かな)


 怪我がないのは何よりだが、この状態が続くのはまずい。そう考えた遠藤はまずは彼を元気付けようと、話題を切り出す。


 「なあ、俺で良かったら相談に乗るよ。なんか元気なさそうだしさ」

 「別に… 現状の戦力に不安を抱いているだけだ」


 「戦力に不安」と言われ、ヤナギはしゅんとして肩を落とした。しかし限定解除でレベル9相当になる「パワー9」との戦いにおいては、最上級精霊であるヤナギすら力不足を感じざるをえない。彼の分析は冷静だ。


 「うーん。精霊のレベルを上げる方法はないの? 」

 「精霊は技量や魔術を磨くことはできますが、生まれ持っての魔力量であるレベルは変えられません。より強力な装備があればパワーアップできるかもしれませんが『ムサシ』を超える刀は私の知る限り精霊界にも存在しないですから… 」


 海道はウンウンと頷く。しかし遠藤はそれを聞き、少し希望が見えたような気がした。


 「だったらさ。『ムサシ』より強力な装備を探しに行こうよ。精霊界にはなかったかもしれないけど、人間界にはもっと強力な装備があるかもしれないよ」


 海道は無駄とばかりにため息をつく。しかしヤナギは落とした肩を上げ、海道の方を見た。


 「行けるかもしれませんよ。確かに前回の大戦から400年経っているわけですし、今は異国にも空を飛んで簡単に行けると聞きます。『ムサシ』以上の魔剣があれば、パワー9にも対抗出来るかもしれません」

 「手がかりもあてもないのにどうやって探すんだ」

 「それは… 」

 「とりあえず蒼井さんに聞いてみない。彼のところが情報は一番入ってきそうだしさ」


 海道はそれを受け、携帯電話を鳴らした。最もこの時、彼はほとんど期待はしていなかったのだが。


 「もしもし、蒼井です」

 「蒼井さん。海道です。ちょっとお話が」

 「成る程、魔剣か。しかし日本国内のそういった武器に関しては、むしろ君たちの方が把握しているのではないかね」

 「まあ、一応調べはしましたからね。精霊大戦が始まる前に」

 「と、なると海外になるが。いいかね」

 「あるんですか? 」 


 海道は驚き、思わず大きな声を出した。


 「可能性が高いのはギリシャあたりだな。君達はギリシャ神話は知っているかね」 

 「まあ、多少は」

 「あの地域になぜ古くから文明が発展し、数々の神話が生まれたのか。それは日本同様、古来から精霊との関わりが深い地域だったからだ」 

 「そうだったんですか」


 海道は頷く。


 「歴代の『精霊大戦』が日本で行われていた故、精霊使いの本場を日本だと考えるものは多い。しかし精霊使いの数自体はギリシャも負けてはいなかった上、『精霊大戦』とは関係なく、独自に上級精霊を召喚したという伝承もある」

 「上級精霊を!? 」

 「そうだ。精霊大戦は今回、初めて世界規模で開催された。だが上級精霊自体は精霊大戦に関係なく、歴史を揺るがすほど強力なものだ。成功するかどうかはともかく、世界中のありとあらゆる時間軸で召喚を試みたものがいたのだよ」

 「ありがとうございます」


 目標が決まってからの海道の行動は早い。早速家の中からパスポートを探し始める。


 「お前もついてくるか? 金は出すぞ」

 「うーん。親の許可を取れたらね」


 海道はこれからの冒険に思いを馳せ、ワクワクが止まらなかった。


 一週間後。遠藤と海道、それにヤナギとカムイは空港に降り立っていた。精霊二人の手には、日本政府の協力で作成された偽のパスポート。完全に国家ぐるみの犯罪なのだが、「パワー9対策」という名目では蒼井の上司達もYESと答えざるをえなかったのだ。


 「海外旅行〜♪」

 「はしゃぐなカムイ。遊びに行くんじゃないぞ。後無駄にビブラートをかけるの止めろ。音が響く」

 「でも上手いな」

 

 カムイは精霊界にいた頃、歌を媒介とした魔術を練習した影響で高い歌唱力を誇っていた。最も侍系である彼女は魔力コントロールが上手くいかず、結局習得はかなわなかったのだが。


 「さて、出発だ」


 こうして海道と遠藤の、武器探しの旅が始まった。最もこれが「パワー9」との全面戦争のきっかけになるとは、この時二人は知る由もなかった。

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