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女装メイド大戦  作者: T
第2章 9人の精霊編
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第15話 作戦

 「とりあえずこの映像を見て欲しい」


 海道、遠藤、ヤナギ、カムイの4人は蒼井に連れられ、巨大なモニターがある部屋に移動した。


 「こいつが日本の精霊か、弱そうだな」

 「星3。初戦の相手としてはちょうどいい弱さだな」


 その映像ではメイド服を着た大男と、可愛らしい女の子が対峙している。


 「うわっ。大男のメイド服はキッツイな」

 「人間型の精霊の見た目も千差万別ですからね。似合わない服装を固定されてしまっては、私たちには対処しようがありません」

 「彼の名前はボルバ、パワー9の一体だ。いわゆる格闘型かくとうタイプの精霊で、近接戦を得意とする」

 「なら侍系の俺たちは相性がいいな」


 格闘系の精霊は接近戦を好むという意味では侍系に近いが、武装がない分耐久力、リーチに劣るという欠点を持つ。一応今回のメイド大戦のように武装を制限されても戦えるという長所はあるのだが、彼の場合はメイド適性が低すぎるゆえ、通常時の星はたったの2。『精霊解放』なしでは、とても戦うことはできなかった。


 「『精霊解放』」


 しかし彼の場合、そのハンデを補って有り余るパワーがあった。『精霊解放』した瞬間目の前の美少女メイドを拳一発で葬り去ると、主人である精霊使いを一撃で殺害する。


 「精霊使いの方まで殺すのか… えげつないな」

 「精霊使いの方は何せ元メキシコマフィアの死刑囚だからね。名前はジャック・ウィルソン30歳。確か日本でも脱獄のニュースが流れていたと思う。普通に考えて何者かが脱獄の手引きをしたのだろう」


 凄惨な映像と解説に、遠藤は恐怖で震え始める。カムイはそれを見てさりげなく彼を抱き寄せようとするのだが、やんわりと拒否され、がっくりとうなだれた。


 「召喚が確認された3体の中で、現状最も驚異となるのがこいつだろう。何せ精霊使いがやばい」

 「そうだな… 普段から殺し合いをしている奴とそうでない奴とでは、戦いにおけるリスクが全く違うからな」


 通常の精霊使いの場合あくまで精霊同士を戦わせるが、「殺し」に慣れている人間は平気で本体の方を殺しにくる。精霊使いとしては最高峰だがそれ以外の面では普通の中学生な海道にとって、最も戦いたくないタイプだ。


 「なあ。本当にあんなのと戦わなくちゃ駄目なの? 」


 遠藤が海道に尋ねる。


 「俺はあくまで優勝を目指しているからいずれ戦わなければだが… 遠藤を巻き込むわけにはいかないな」

 「私も賛成です。こいつ相手は荷が重すぎる」

 「ちょっと待て、私では主君を守るのに力不足と申すか」


 満場一致で遠藤の不参加が決まりかけた中、黒衣のメイド服を着た女、カムイのみが異議を唱える。


 「いや、そういうわけではないが」

 「いや実力不足だろ。星4精霊で精霊解放もできないんじゃ無理だ」


 オブラートに包もうと思ったヤナギの心遣いを、海道は一蹴する。


 「しかしだな… 」

 「悪いがこの件は俺と蒼井さんだけで片をつける。二人はもう帰ってくれ」


 そう言われ、遠藤とカムイは会議室を後にした。


 「いいのかい。あんな言い方をして」

 「カムイが暴走してマフィア相手にケンカを売って、遠藤に危険が及んだらマズイですから」

 「言い方はともかく、私もご主人様に同意見です」

 「ふむ。それで君たちだけになってしまったわけだが、勝算はあるのかい? 」 

 「「今は」ないですね」

 「ほう」


 蒼井は何か策がありげな様子に、少しだけ表情を緩ませる。


 「『限定解除』という、一時的に特定のステータスを戻す魔術があります。それを使えるようになれば、勝機はあります」

 「ふむ。『精霊解放』とは違うのかね」

 「大違いです。『精霊解放』は無理やりこの大戦のルールに逆らって本来の武装を取り戻す魔術です。当然発動にはとんでもない量の魔力が要ります。しかし『限定解除』はあくまで武装を変えずに本来のスペックを取り戻す技法です。技術的には『精霊解放』以上に難しいでしょうが、魔法陣なしかつ少ない消費魔力で行えます。どちらもセイクリッドという精霊を使う精霊使いが使っていた魔術でしたが、前者は数十秒しか持たなかったものを後者は10分以上連続で使用し、さらにまだ与力を残していました」

 「なるほど」


 自分すら知らない魔術の登場に、蒼井は驚きを隠せなかった。これを自力で編み出した松本の魔術センスは凄まじい。


 「相手の『精霊解放』の時間を『限定解除』で凌ぎ、相手の息切れを待ってこちらの『精霊解放』をぶつける。そうすれば勝てると思います。思いますが… 」

 「何か不安があるのかね」

 「ヤナギが敵精霊と戦っている間に、精霊使いの方が本体に攻撃してくる可能性があります。魔力量で劣るとは思いませんが、メキシカンマフィアとタイマンしたくはないですね」

 「つまり本体である君を守る護衛がいればいいんだね? 」

 「まあ、はい」

 「ならば私が同行しよう。これでも元自衛官だからね、戦闘には自信がある」


 そう言って蒼井は懐から拳銃を取り出し、海道とヤナギに見せた。


 「なら早速帰って『限定解除』の修行を始めましょう」

 「ああ」


 ヤナギは修行に対し、いつもにも増してやる気に満ち溢れていた。コンバートによる弱体化で一瞬しか戦えない今の自分に対し、苛立ちを覚えていたからだ。

  

 「わかった。なら私はジャックとボルバを見逃さないように見張っておくよ。修行が終了したら再び連絡してくれ、細かい作戦はその時に話し合おう」

 

 会議が終わるとヤナギと海道は修行のため、海道家に戻るのであった。

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