第2章プロローグ プリズンブレイク
大柄な男が一人、檻の中でうなだれている。その目はうつろで何を考えているかわからない。しかし誰が見ても不気味で恐怖を感じさせるような、そんな目をした男だった。
「これより死刑執行する」
ここはアメリカにある監獄だ。中に収容されているのは殺人や強盗など、凶悪犯罪者の中でも取り立てて凶悪なものばかり。この男。ジャック・ウィルソンも例外ではなく、メキシカンマフィアの構成員として数十人の人間を殺し、さらにアメリカにおいて大量の麻薬を未成年者に流していた大悪党だ。しかし勧善懲悪という言葉の示す通り、悪行には報いが訪れることも多い。死刑囚となったジャック・ウィルソンは手錠をかけられ目隠しをされ、今まさに処刑されようと連行されていたところのだ。
「おい、目を離すなよ。そいつは収容中にも何度も暴れているからな」
「はいよ」
看守の男が二人、ジャックを連れて狭い廊下を歩いている。これからジャックは処刑場に連れて行かれ、薬物を打たれて殺される。その運命は本来、誰にも変えられないはずだった。
「バゴーン」
爆発音が鳴り響いた。看守は急なことで声を失い、その場にへたり込んでいる。一方ジャックは驚きながらも逃げるための絶好のチャンスと見るや、周りをキョロキョロと見渡し脱出口を探した。
「君が、ジャック君だね」
穴が空いた壁から、サングラスをした黒人の男が現れる。身長は黒人にしては低く、170cm程だろうか。しかしかなりの筋肉質で、バストは優に100cmは超えるだろう。そして黒人男の後ろには、メイド服を着た男が一人立っていた。
「君には才能がある。僕と一緒に、その才能を活かさないか? 」
「何だお前」
「救世主さ、少なくとも君にとってはね」
そういうとメイド男は黒人の男とジャックを抱え、刑務所の天井を突き破り脱出する。
「オイオイ。スーパーマンかよ」
「スーパーマンではない。『精霊』だ」
黒人の男はにやりと笑った。