第13話 決着
「クソッ。またお前にやられるとは… 」
『ムサシ』の一撃を受け、ヴィヴィアンの体から光が出る。その光は彼女の消滅が近いことを示していた。
「だがなヤナギ… 今回は私の負けじゃあねえ」
「どういう意味だ」
「引き分けだ!!! 」
そういうと彼女はありったけの魔力を爆発させた。大量の美少年たちから吸い取った残存魔力を全て消費し、大爆発を起こしたのだ。
「ご主人様!!! 」
ヤナギは咄嗟に、海道と遠藤を抱きかかえる。しかし爆風が凄まじく、ヤナギは二人を抱えたまま50メートル以上も吹き飛んでしまった。
「これで… 終わり… だ」
さすがに力尽きて、ヴィヴィアンはその場に崩れ落ちた。あたり一帯の木々は焼け焦げていて、ヴィヴィアンの起こした爆発の凄まじさを物語っていた。
「ぐ… ご主人様」
吹き飛ばされる間、ヤナギはなんとか二人を抱きかかえたまま吹き飛んだ。彼らがまだ中学生で、ヤナギが大柄だったからできた芸当だろう。しかしヤナギに庇われたとはいえ、二人は瀕死に近い重傷を負っていた。
「クソッ。どうすれば… 」
ヤナギは回復魔術を使うことはできない。しかしこのまま病院に運んでも、間に合うかどうかは怪しい。
「絶望するのはまだ早い、最強の侍よ」
渋くていい声が、絶望するヤナギを呼び止める。そこには黒いコートを着た、40代ぐらいの男性が立っていた。
「よくぞヴィヴィアンと戦い、生き残った」
そういうと男は回復魔術を使い、二人の傷を塞いだ。精霊でもないにもかかわらずここまで一瞬で傷を防ぐというのは、稀代の精霊使いである海道にすらできない芸当だった。
「ありがとうございます。しかしなぜ精霊使いであるあなたが、ライバルである私たちを助けてくれたんですか」
「英雄である君たちに、こんなところで死んでもらっては困るのでね」
そういうと男は二人とヤナギを乗せ、愛車のベンツを走らせた。