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女装メイド大戦  作者: T
第1章 メイド大戦開幕編
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第10話 襲撃

 「すまなかった」


 カムイは海道に謝罪した。海道はそれでもまだ不満を募らせていたものの、星4以上の捨て精霊は希少な事もあり、一応は謝罪を受け入れたのだった。


 「おい遠藤。そいつはそんなんだが一応お前のパートナーになる精霊だ、これからはしっかり見張っておけよ」


 そう言って海道は自室に戻っていった。


 「えっと。それじゃあカムイさん、これからよろしくね」

 「ああ。よろしく頼む」


 遠藤は気まずそうに、カムイに向き合う。


 「まず精霊と契約したら、ステータスを見るんだっけ」


 そう言って遠藤は、本で習得した『見通マスターアイ』を発動させる。


 「星4つは… 確かヤナギ君と同じだから、いいんじゃないかな。能力は身体強化と武器召喚、武器強化に… 魔眼!? ああ、あれはこの前のやつか」

 

 カムイは眼帯を外すと身体能力を上げ、一時的にではあるが大幅に戦力を増強することが出来る。不意打ちとはいえ星6のセイクリッドに大きなダメージを与えられたのは武器を強化していたのみならずこの「魔眼」によるブーストが大きかった。


 「フッ」


 「魔眼」に絶対の自信を持つカムイは謎のドヤ顔をして、ポーズを決めて見せた。


 一方その頃。一人のメイド服を着た少女が、退屈そうに女装させた美少年を撫で回していた。

 

 「あーあ、つまんないなあ」


 ここはどこにでもあるごく普通のマンションだ。その一室に、最強最悪の精霊であるヴィヴィアンは潜伏している。


 「ご主人様。今日のお食事はどうなさいますか」

 「あー、ふぐ刺しがいい」

 「かしこまりました」


 マンション内にはミニスカートのメイド服を着た美少年が四人、ヴィヴィアンのメイドとして従事している。これらの少年は全員がヴィヴィアンに拐われた被害者なのだが洗脳調教されており、身も心もヴィヴィアンに捧げる奴隷と化していた。

 

 「あーあ、奴隷いじりも飽きちゃったしなあ。そろそろ直接ヤナギを殺しに行こっかなあ」


 前回の精霊大戦で唯一遅れをとったヤナギは、ヴィヴィアンにとって唯一の警戒の対象だ。しかしヴィヴィアンにとっては警戒心よりも、己の「飽きた」という感情の方が優先事項である。

 

 「プルルルルルルル」

 「もしもーし。ヤナギとその相方は、今どうしてる」

 「この前のダリア襲撃以来、学校には来ていません。おそらくこちらの動きに気づき、身を隠したのかと」


 電話の主は(一応)彼女を呼び出した精霊使いにして、海道、遠藤のクラスメートである竹馬だった。精霊使いと言っても召喚後はほとんどヴィヴィアンが独断で動いているため、彼は数いるヴィヴィアンの魔力元の一人に成り下がっているのだが。


 「さっすがヤナギ! 頭いいね。でも怠いなあ… あんたさあ、ヤナギの主人の住所ぐらい知らないの? 」

 「知らないですよ。電話番号はともかく、住所なんて… 正直あいつクラスでも浮いてて、一度も話したことないんですよ」


 竹馬にとって海道は遠藤と並び、自らの成績の順位を下げる憎っくき敵だ。最もそこまで恨んでいるという訳ではなく、単に居場所を教えてヴィヴィアンに殺されても問題ない程度の認識でしかないのだが。


 「電話番号は分かるんだ。ならそれでいいよ」


 ヴィヴィアンは竹馬から電話番号を聞き出すと、意気揚々と出かけて行った。

 


 一方その頃。海道とヤナギは今後の作戦について考えていた。現状の戦力は、星4の精霊が2体。最高で星9の力を持つヴィヴィアンと戦うには、あまりにも戦力不足だった。


 「一応精霊は2体に増えたが… 今の段階でヴィヴィアンに勝てると思うか? 」

 「無理でしょうね。コンバートによりヴィヴィアンも力を落としているでしょうが、さすがに男の私よりは力を残しているでしょう。『ムサシ』も使えない今、例え二人がかりでも奴に勝てるとは思えません」

 「そうか… 出席日数が心配なんだがな」


 海道は中学三年生、中高一貫校ではあるが出席日数が一定値を切ると進学できない。彼は頭を抱えていた。


 「魔術結界、『奴隷ン(ドレイン)・フィールド』」


 海道たちがヴィヴィアン対策会議を行う中、当の本人は海道たちの通う中学校「私立田市大付属中学」の屋上にいた。彼女が展開した魔術は結界魔法の中では珍しい、攻撃的性質を持つ『ドレイン・フィールド』。フィールド内のものから魔力を吸い上げ衰弱させる魔法だ。


 「後は電話で奴を呼び出すだけっと」


 悪魔のような笑みを浮かべながら、ヴィヴィアンは携帯電話のボタンを押していく。 


 「プルルルルルルル、ガチャ」

 「もしもし、海道です」

 「もしもーし。海道君っていうんだ! 初めまして」

 「誰だ? 」

 「ヴィヴィアン!? 貴様何の用だ」


 さっきまで対策会議をしていた張本人からの電話に、ヤナギは思わず声を荒らげる。


 「ヤナギきゅん! 400年ぶり!!! 相変わらず可愛くて素敵な声ですなあ」

 「貴様こそ、その人を馬鹿にしきったような喋りは変わっていないようだな」


 普段は敬語のヤナギの喋りに、怨念にも似た怒気がこもる。


 「まあそう言わずに学校まで来てよ。お友達も寂しがってるよ」

 「断る。貴様に学校の所在がバレている以上、みすみす姿を表すわけないだろう」


 怒りに燃えるヤナギとは対照的に、海道はいたって冷静に答えた。


 「でもさ〜、私今学校に『奴隷ン(ドレイン)・フィールド』張ってんのね。このままほっとくと学校の生徒達、気づかないうちに干からびて死んじゃうよ」

 「どこまで下衆なんだ貴様は」 

 「じゃあね。待ってるから」


 そう言ってヴィヴィアンは電話を切った。


 「行きましょうご主人様! 奴の蛮行を今ここで食い止めるのです」

 「おいおい、さっき勝てないって結論が出たばっかりだろう。俺はみすみす死にに行く気はない」

 「駄目だよ。みんな死んじゃうんだよ」


 遠藤とカムイが二人の間に入る。カムイはすでに臨戦態勢で、武器であるクナイをすでに召喚して右手に持っていた。


 「駄目だ。ただでさえ力の差がある相手に魔力結界まで先に貼られては勝ち目がない」

 「そんな… いいの? みんな死んじゃっても」

 「そもそもこういう事態を想定して、お前の両親に頭を下げてまでお前をここに連れてきたんだ。友人でもなんでもない、ただクラスが一緒だっただけの奴らのことなど知ったこっちゃない」 

 「でも… 」


 精霊使いは人の命についてドライな感覚を持っていることも多い、海道もその例にもれなかった。最も恩義ある者は大切にする分、長年修行した精霊使いの中では情がある方だとも言えなくもないのだが。


 「とにかく、まずは状況判断からだ。諜報用の下級精霊を何体か派遣した。そいつらに現場の状況を見てもらって、それから決めよう」


 行くべきか、行かざるべきか。海道は判断を決めかねていた。

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