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第7話 紙ひこうきとじいちゃん

 担当部署への連絡を終え、携帯を置いて天を仰いだ。困ったことがあると思い浮かぶのはじいちゃんと過ごした日々。紙ひこうきのことはじいちゃんの思い出でもあった。

「肉屋のケンちゃんはどんな子なの?」

「イタズラっ子じゃが、泣き虫だ。」

「泣き虫なの?花屋のマキちゃんは?」

「マキちゃんは心優しい子じゃよ。」

 どこまで本当だったのかは分からない。じいちゃんとの思い出。心が温かくなる思い出。そういう思い出だけなら…良かったんだけどな。

 小さな町の紙ひこうき届け屋。じいちゃんは町のみんなのことを知っていた。だからみんなにどんな思いを送ってよくて送ってはいけないのか。それを心得ていた。

 今の紙ひこうき届け屋も同じ。小さな町に一人いる紙ひこうき届け屋。みんなの顔と性格を把握して届ける思いを精査していた。しかしそれは紙ひこうき届け屋の手腕次第。良くも悪くも人次第だった。


 そもそもの始まりは遥か昔に遡る。これは寝る前に聞かされるおとぎ話みたいな絵空事かもしれない。実際、どの家でもこの話を寝る前に子どもに聞かせている。そんな昔から語り継がれる紙ひこうきの話。

 昔、ある小さな町では争い事が起こらなかった。それを知ったどこかの大臣が視察に来て、どうやらそれは紙ひこうきのお陰だと理解した。

 毎日毎日、誰から届く感謝の気持ちや褒めてくれる言葉に愛の言葉。

『ありがとう。』

『頑張ったね。』

『上手だったよ。』

『愛してるよ。』

 素敵な風習だと全国で取り入れることを決めた。それが『紙ひこうきに思いを乗せよう』だ。無記名の優しい紙ひこうきは瞬く間に広まった。だからみんなも思いを届けよう。紙ひこうきに乗せて。そんなお話。

 このお話が本当かどうかは分からない。ただ紙ひこうきは時代の流れとともに形を変えつつある。今の世の中に必要なのか…それすら分からなくなっていた。

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