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第3話 俺と同じ

「大坪くんってかっこいいね。周りに流されない感じで。名前って何?聞いてもいい?」

「久人。」

「ひさとってどういう字を書くの?」

「久しいに人間の人。」

「私ね!愛おしい華やかで、あいか!」

 聞いていないのにぐいぐい話してくる愛華みたいな子は苦手だ。俺の隣にいる隆史とか言った奴が話しかけてくれて助かった。

「愛華ちゃんかぁ。可愛いね。」

「そうでしょ〜?」

「うん。愛華ちゃん可愛い!」

 そこに裕太も加わって俺から右半分で盛り上がり始めた。俺の左側は壁。

 盛り上がっている隣に加わらないのは前の子も同じだった。なんとなく俺にこの子を勧めたくて連れてきたのかなと裕太の気遣いを感じた。それくらい同じように馴染めていなかった。

 隣より大きな声を出せる気もしなくて、視界に入ったテーブルのアンケート用紙とそれと一緒に置いてあった鉛筆を手にした。アンケート用紙を裏にして白紙の方に鉛筆を走らせる。書いた物を鉛筆と一緒に前の子に差し出した。

『君は人数合わせ?俺は彼女いないことを友人に同情されて。』

 視線を紙に落として少しの空白の後に同じように鉛筆を走らせた。その紙と鉛筆を返される。放っておいてくださいと書かれていたりして…と視線を落とすと思わぬことが書かれていた。

『よく分かりましたね。エスパーですか?大坪久人さんで合ってます?私は川島千佳です。』

 思わず笑って前を見ると俯いて恥ずかしそうにしている。だからまた書き加える。

『それさっき聞いた。ちゃんと聞こえたよ。ちーちゃんでいいのかな?俺は久人がいいな。』

 それさっき聞いたのそれに線を引っ張って川島千佳と書かれたところに矢印をつけた。渡すと目を丸くして慌てて書いている素振りを見ているだけで頬が緩んでしまう。渡された紙には大きく千佳で!!と書かれていた。

『仕方ないなぁ。千佳ね。変わってるって言われない?オレはしょっちゅう言われる。』

『私はノリ悪いって…。』

『あー俺も言われるなー。』

 たわいもないやり取りを何度も何度も繰り返した。すぐにアンケート用紙の裏はいっぱいになって新しい用紙に変える。

『この使い方、間違ってるよな。アンケート用紙なのに。』

『本当。でも喜んで使われて嬉しがってるんじゃないかな。』

 喜んで使われて…か。

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