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第11話 届けられない思い

 家で思いが届く端末を開く。死ねという思いを送ろうとしていた人物『野田浩司』をチェックする。まだ変わらず『死ね死ね死ね』とだけ届いていた。行政が介入しているはずで、俺が出来ることはした。それなのに心は晴れなかった。

 紙ひこうきは嬉しいモノのはずだ。それがこの野田浩司には一方的な死ねのメッセージを出すのみ。届く方の思いも皆無だった。

 やり切れず裕太に電話をかける。

「もしもし?どうした?」

「あのさ。裕太の知り合いに誰か心理相談みたいなこと出来る奴いない?」

「なんだ。また仕事で気になる奴がいるのか?」

「まぁ。そんなとこだ。たぶん行政から誰かが話してるとは思うんだけど誰もそいつを心配するような思いが届かなくて。」

 誰かから頑張れだとか、ありがとうだとか、プラスの言葉をもらえれば違うかもしれない。そんなことは偽善で放っておいて欲しいと言われるのがオチだとしても何かせずにはいられなかった。

「それなら家庭教師とかでもいけるかもしれないが…どっちにしても個人情報は明かせないだろ?」

「あぁ。そうなんだ。悪い。また出来もしないことを…。」

 裕太に話したところで何も出来ない。毎度のことだ。それでも裕太は何度でも付き合ってくれた。

「久人がそう思っているだけでも思いは届くって。」

「あぁ。そうかもな。」

 電話を切ってため息を吐く。今までも誰かの恋心を知って裕太に電話したこともある。そういう幸せな相談はいい。

「久人が見てお似合いな二人なんだろ?だったら放っておいても大丈夫さ。」

 そう言われて心が軽くなった。しかし今回はどうだ。放っておいていいのか分からない。それなのに俺が出来ることは何もない。

 紙ひこうき届け屋の思いを送ることは出来ない。俺の思いは届かない。何よりよく知りもしない俺からの思いを送ったところで薄っぺらな思いはすぐにメッキが剥がれ落ちるだろう。

 天井を仰いでその上の空に思いを馳せた。じいちゃんみたいに楽しんで紙ひこうき届け屋を出来そうにないよ。せめてじいちゃんに思いを届けられて返事が返ってきたら…。

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