25枚目 くんかくんかくんか
「一応、確認だ……」
俺は、自分に言い聞かせた。
そうだ、これには、やましい気持ちなんてない。
俺の指には、マールさんのと思われる血がついていた。
もしも、俺の指が貫いたのがマールさんの尻の穴ではなく、間違って変なところに突き刺さってたとしたら、とても危険だ。
出血多量とかで本当にしんでしまうかもしれない。
だから、ちゃんと肛門に入ったことを確かめなければいけないのだ。
うん、そうだ。これはマールさんのためなんだ。うんうん。
カンチョーの印を結びながら、指先の臭いを嗅ぐ……
「すんすんすん……はぁ……」
ふむ、この何とも言えないかぐわしい香り……
直接的な表現は、マールさんの名誉のため避けるが(女の子はトイレいかないというし)、トイレでよく嗅いでいる類の匂いがする。
ふむ、間違いない。
てーれってれー♪
今! ここに! 間違いなくこの指が、マールさんの尻穴に入ったことが証明された!
しかし、不思議なのは、この匂いだ。
明らかにくさいのだが……頭でくさいとわかっているのに、スンスンといつまでも嗅ぎたくなってしまう……
やはりこの臭さを、マールさんという金髪美女の匂いと俺が認識しているせいだろうか?
あーやっべ!
いつまでも、くんかくんかしてしまうわ……くさいわぁ……
マジくさいわぁ……すんすんすん……
「でも、そっかぁ……これがマールさんの中に入ったのかぁ……」
血のついた指を見ながら、つい感慨深げに声に出てしまう。
ふと、マールさんを見ると、彼女は顔を真っ赤にしながら、涙目で、俺のことをキッと睨みつけていた。
「お、お前……まさか……」
それを聞いて、ふと思った。
これ、舐めたらどんな味すんだろ……
マールさんの味か……
いやいやいや!
俺、そういう趣味ないから!
正常だから!
「でも……」
ごくりっ
俺は好奇心に負けた。
カンチョーの印を結んだまま、親指でマスクドぱんつを器用にズラして……
「やめろぉ! 変態!」
マールさんの声がやけに遠くに聞こえた。
俺はそのまま、マールさんの味がついた両の人差し指を……口に……
「やめなさい!」
どこかから、甲高い少女の声が聞こえたかと思うと、俺の頭に重い衝撃が走る!
ドガッ!
飛び蹴りだ!
俺は、飛び蹴りを受けて、吹っ飛ばされる!
「痛てて……」
ぱんつを被ってなかった、気絶していたかもしれない。
誰がやったんだ、とばかりに、飛び蹴りの来た方向を見ると、そこには、赤髪の貧乳娘がいた。
ターニアだ。
「痛ててて……何すんだよ……」
そう言いながら、立ち上がると……
ターニアの他にもう一人、そこに誰かいることに気づいた。
「ユータさん、最悪です!」
キッと厳しい顔をするのは、シスター・クレアだった。
「シ、シスター?」
「ユータさん、ありえませんよ……ただでさえあんな最低最悪の勝ち方しておいて、さらに相手を辱めるようなこと……見損ないました!」
その言葉に、ターニアが意外そうな表情をしてシスターに言う。
「あら? 見損なうも何も、こいつに見はるようなものってあった?」
「おい!」
「そうですね……訂正します。ユータさんは、私が出会った男性の中でも最悪の人間です!」
「シスターも! そこは否定して下さいよ!」
そして、そんな俺の抗議を無視するかのように、シスター・クレアは、マールさんに近寄ると回復魔法をかけ始める。尻に。
しかし、何でクレアさんとターニアが現れたのかはよくわからんが、来てくれたのは、ありがたい。千年殺しは、ちとやり過ぎたと思って、せめて回復魔法をかけようかと思っていたが、その手間が省けたのだから。
あとはシスターに任せよう。
そう思い、こっそり抜け出そうとしていると……
「ちょっと待った!」
ターニアが俺の腕を引っ張って行かせないようにする。
おっふ!
ターニアの無い胸が当たる! ふひひ!
いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない!
「いや、待てと言われても、マールさんが復活して、また邪魔されると困るんだけど……」
それとも、ターニア達も俺のこと止める気なのか?
そう思って、振りほどこうと腕に力を込める。
「大丈夫。大丈夫ですから」
今度はシスターが微笑みながら言った。
は?
何が大丈夫なんだろ?
「ね? マールさん?」
シスターがそう言って尋ねるが、マールさんは何も答えない。
だが、マールさんの目には『絶対に行かせない』といった気迫のようなものは感じられなかった。
そういえば、今更だが、マールさんはさっきの戦闘中、どこかおかしかった。
マールさんの実力なら、俺が捌き切れないぐらい連続で攻撃し、消耗戦をしかければ、簡単に勝てていたかもしれないのに、そんなことはしなかった。
それに、こちらが攻撃したら、マールさんは受けに回るといった、攻撃を待っていたような節があった。
まさか、本気を出さないでくれたのか?
でも、何故だ?
俺が、そんなことを考えている間に、シスター・クレアは回復を終えた。
「回復魔法はかけましたが……スカートに穴が空いちゃってますね、これは……」
「えっ!」
シスターの「スカートに穴」という言葉を聞いて、俺の視線は即座に動く。
「ふむ……」
確かにマールさんのお尻の布が大きく破れちゃっていた。
てか、あの破れた穴の奥にマールさんのマ……
ごくりっ……
そんなことを思いながら、穴が空くぐらいじっと破れたところを見ていると、ターニアが、俺の前に立ちはだかり、マールさんが見えないように邪魔をする。
「ターニアさん、見えないんですけど?」
「見せないようにしてんだけど?」
言って、「何言ってんだ、こいつ」とでも言いたげな表情をするターニア。
くっそ! わかってるよ、それぐらい!
見せろよ! み~せ~ろ~よぉ!
こんなチャンス滅多にないんだからよぉ!
そして、そんな俺の思考を読み取ったかのように、シスター・クレアが溜め息混じりにこんなことを言う。
「ユータさん? デリケートな事なので、こちらをジロジロ見ないでいただけますか?」
「あ、俺の目は気にしないで下さい」
「しね」
マールさんに怒られた。
やれやれ、仕方なしに俺はマールさんに背を向けた。
「私、裁縫道具もってるので、ちゃちゃっと塞いじゃいますね」
そして、俺の背後で、衣擦れの音がする……
恐らく穴を縫い合わせるためにスカートを脱いだのだろう。
くぅ! 振り向きたい!
スカートを外したマールさんが、どんなぱんつ穿いてるか見たい!
きっと穴が空いて、血の付いた、過激なパンティに違いない!
だが、悲しいかな。
振り向こうと少しでも体を動かすだけで、ターニアが俺の足をガシガシ蹴ってくる。
くっそ!
こいつはさっきから、俺の人権無視するようなことばかりしやがって!
そうこうしている間に作業は終わったようだ……
マールさんは介抱されて、もうどこも悪いところはないはずだが、しょんぼりとしたまま、膝を抱えて体育座りのような格好でいた。
「うぅ……もう、お嫁に行けない……」
一瞬、自分の耳を疑った。
普段のマールさんからは想像もできないセリフだ。
でも、うん、そうかそうか……
お嫁に行けないなら、俺がもらってやんよ!
即座にシスターがフォローを入れる。
「でも、マールさん? お嫁に行けないと言ったところで、どうしますか? このユータさんに責任とってもらいたいですか?」
「それは、しんでも嫌だ!」
即答かよ!
まあ、あれだけのことをやったら当然か。
しかし、そこまで嫌われてると思うと、堪えるなあ……
うん、もう話題変えよう。そうしよう。
「ところで、何でシスターとターニアがいるんでしょうか? それにさっき、マールさんが俺を止めないとか言ってましたけど……」
俺が尋ねると、シスター・クレアが微笑んで言う。
「私達は、初めからユータさんに協力するつもりだったんですよ」
「協力?」
「ええ、レッドドラゴンの下に行かせてあげようって……」
「えっ?」
てっきり反対されるものと思ってた。
「レッドドラゴンが襲って来てからのユータ、何か、心ここにあらずって感じだったものね……レッドドラゴンも、ユータの大事なものを奪ったとか言ってたし」
あれ? 心配されてるの、俺?
てか、そんなに心配されるほど酷かったのか、俺?
「その大事なものが何かはわからないけど、取り返しに行きたいんでしょ? 今すぐにでも」
「ああ……」
俺はハッキリとそう言った。
少し前なら戸惑っていたが、今はスイーツを助けに行く決心がついている。
「マールの紹介でシスター・クレアと会って、ユータのぱんつの秘密を知っている三人で話し合ったの。私達は、何だかんだでユータに世話になってるからね、だったら協力してあげたいなと思ったのよ」
俺の知らないところで、そんなことがあったなんて……
何か、心配されてて嬉しいような、だったらその時に俺にも相談してくれればよかったのに、というか複雑な気分だ。
「でも、マールが『Aランク冒険者を待った方がいい。ユータの腕じゃレッドドラゴンは厳しい』って言って聞かなくてね……」
うん、それはすごく正論。
俺も神力を消す都合がなければ、Aランク冒険者を全面的に頼りたい。
クレアさんが言う。
「私達は、ユータさんのぱんつのこと知っていますから、それを使えばレッドドラゴンも問題ないと思ったのですが、マールさんは、それでも納得しないようで……」
マールさん、頑固なところあるからなあ……
「じゃあ、マールが試せばいいんじゃない? って話になったのよ。マールが試して、ユータがレッドドラゴンに立ち向かえるだけの実力があるとわかったら、皆で協力してユータをレッドドラゴンの所まで送り届けようって……そう、話がまとまったのに……それなのに……」
「まさか、こんなことになるなんて……」
シスター・クレアはそう言って、膝を抱えてしょんぼりしているマールの方を振り返った。
「マールさん、どうします?」
「どうします、とは?」
「私達と一緒に行きますか……というか、行けますか? いえ、あんなことがあった後ですから、無理しないでいいですよ?」
「あんな最低のことされた後だものねぇ……」
一瞬……女三人のジト目が俺に突き刺さる……
何だよ……まるで性犯罪者みたいな目で見やがって……
俺はただ、日本古来からの忍法を使っただけじゃねーか……
カンチョーは、ジパングに伝わる伝統芸能です。医療行為です。
だが、
「行く。こんなことぐらいで引き下がったら、本当に負け犬だ」
マールさんはそう言い切ると、すっくと立ち上がった。
おお、流石マールさんだ!
メンタル強いなあ!
あ、お尻さすってる……
「ユータ、お前が先頭を行け。私は後からついていく」
「スカートのお尻のとこの縫い目見られたくないからですか?」
「うるさい! しね!」
こうして、俺は、マールさん、クレアさん、ターニアと共に行くことになった。
まるで異世界ラノベの主人公のようなハーレムパーティ結成に、俺の心はうきうきとした。
ふむ。
意気揚々に一歩踏み出し、ふと思う。
「あ、門番どうしよう?」
「え? 門番?」
「いや、街の外に出なきゃいかんだろ? 俺一人なら、ぱんつの力で強行突破しようと思ったんだが……この人数だと、どうかなって思って」
「いやいやいや、その必要はないわよ」
ターニアが手をぱたぱたやって否定した。
そして、一人門の方へ行くと、門番と何やら話し、戻って来た。
「OKだってさ」
「は?」
どうも聞いてみると、事前に門番には袖の下を握らせていたようだ。
想像以上にすんなりと通してくれて、まるで拍子抜けだ。
・・・・・・
「しかし、レッドドラゴンは西の森とは言っていたが、どこなんだろう?」
門の外に出てからしばらくして、森の方へ向かいながら、俺が誰とはなく尋ねた。
すると、ターニアが、すっと指をさして言う。
「多分、アレじゃない?」
「ん?」
ターニアが指さす方向を見ると、森の奥の方で、真っ赤な光の柱が天を突き刺すように昇っていた。
「あんな芸当できるモンスターなんて竜王ぐらいでしょ」
「どうやら、相当目立ちたがり屋みたいだな……」
でも、あそこにスイーツが……
待ってろよ。
俺がきっと助け出してやる!
俺達は、赤い光の柱を目指して、森の中を進んだ。
マール「PV2000アクセス達成だそうだ」
マール「これも読者の皆のお陰だ。作者に代わってお礼を言うよ、ありがとう」
マール「作者? ああ、あいつは個人的な事情で席を外している。くくく……」
マール「いよいよ10万文字も超えて、第一章も佳境だというのに、何をやってるのだろうなあ? まあ、そのうち帰って来るだろう……ふふふ、いい気味だ……」




