22枚目 だいじなもの
「え……私?」
ターニアが俺の方を向いて、自分を指さして尋ねてきた。
ど、どうしよう。
勇者だとバレるわけにはいかないが……何と答えたら……
「くんかくんか……違うな、お前じゃない。お前のぱんつから臭うのは確かだが……もっとこう、オスの香ばしい臭いだ」
あれ?
気のせいか、「オスの」と言った時、背筋にゾクっと来るものがあった。
具体的に言うと尻の穴が……
いや、まさかな……
しかし、レッドドラゴンって、こういうキャラだったんだな……
くんかくんか、て……
何か、もっと怖い奴を想像していたから、気が抜けた。
「ねえ? ちょっと気になったんだけど……」
ターニアがひそひそ話しかけてきた。
「このドラゴン、さっきからユーシャ、ユーシャって言ってるけど……もしかして?」
「あ……」
気が抜けてる場合じゃないじゃないか!
や、やばい……勇者なのがバレる。
何か言い訳しないと!
「ユータって言いたいのかしら? それが訛ってユーシャ?」
「え? あ、そ、そうだな!」
ふぅ……
おどかしやがって……
「おい! 我を無視するな!」
おっと、レッドドラゴンのこと忘れてた。
「それで、何故、我を呼び出した?」
「いや、呼び出してませんよ?」
俺がそう言うと、レッドドラゴンは目をかっと見開いて、大きな声をあげる。
「何を言う! この竜王レッドドラゴンを召還する儀式をやったではないか!」
「ぎ、儀式?」
「知らぬとは言わせぬぞ! ユートピアがどうとか叫ぶアレだ!」
え? ユートピア?
いやいや、まさかとは思うが……
でも、ユートピアなんてそれぐらいしか思い浮かばない……
「えーと、もしかして、これですか?」
俺は、そう言いながら、レッドドラゴンに向かって尻を突き出し、バンバンと叩き、びっくりするほどユートピアを披露してみる。
「おお! それだ! それだ! それこそが定められた、我を召還する儀式! 赤髪の者が行うことで、魔力を消費して、我の召還を願うものだ!」
マジか!
てか、びっくりするほどユートピア大人気だな、おい。
女子の胸を大きくしたと思ったら、今度はレッドドラゴン召還ですか。
何か、この異世界、どこかおかしいわ……
あれ?
ちょっと待って。
赤髪の者が召還?
それってもしかして……
「お伺いしたいのですが……」
俺は、恐る恐るレッドドラゴンに尋ねた。
「ふむ、何だ?」
「レッドドラゴンのあなたが、この街の近くに来られたのは、召喚されたからなのですか?」
「ふむ、そうだ。本来、我はここより遠くの火山を棲み処としておるのだが、召喚された故、この地に飛んできたのだ」
「ちなみに、いつから?」
「昨日からだ」
やっぱり!
「その時の儀式は、供給された魔力が少なく、我の勘違いの可能性も否定できなかった故、近くの森で様子を見ていたのだ。だが、今回は魔力も十分で我を召還したのは確かだった故、街まで飛んで来たぞ! ガハハハ!」
あー、えーと……つまり、こういうことか?
昨日、ターニアが一所懸命に、びっくりするほどユートピアを行った時に、レッドドラゴンがやって来ていたと……
ということは……
「おい、ターニア。どうもレッドドラゴン騒動の主犯、お前らしいぞ?」
「そ、そういうことみたいね……」
そんなことを二人でひそひそ言っていると……
「何やってんの、ユータ! チャンスよ! 聖水をドラゴンにかけて! 女神様の神力が付いてそうなところに!」
スイーツがそんなことを言い始めた。
やっべ! そんな話、すっかり忘れてた!
急にレッドドラゴンが現れたから完全に頭から抜けていた。
すぐに、レッドドラゴンを観察し、神力が付いてそうなところを探す……
それはもう、じっくり、ねっとり……
「ユータ、あったわ!」
ターニアの指さすところを見ると……
「何だ、あれは……」
そこには……丸文字で「めがみ」と書かれた箇所が……
え? これがもしかして神力ってやつなのか?
でも、他にそれらしいものもないしなあ……
しかし、丸文字て……
あのオバハン女神、また若づくりかよ……
てか、その発想が既にオバハン臭いんだよ!
何故それに気がつかない!
って! 股間じゃねーか、書いてあるとこ!
何だよ、これ!
ドヂっこアピールのつもりかよ!
もうツッコミ疲れたよ!
あー、ちょっと待って……
もしかして、股間に書いてあるってことは、レッドドラゴンの股間に聖水ぶっかけないといけないのか?
うーん……
まあ、股間と聞いて、ちょっと抵抗あるが、レッドドラゴンは二本の後ろ足で立っているので、股間は隠れていないから、簡単に当てられそうだ。
あとは、聖水入りの小樽をリュックから出せば……
「ねえ、ユータ?」
「ん?」
ドラゴンの股間をマジマジ見ていると、ターニアが話しかけてきた。
「さっきから、あんた……レッドドラゴンの股の間ばかり見て、ぶつぶつ言ってるけど、どうしたの?」
「あ……」
「あの……いや、そんなことは……ないとは思うんだけどね……あの……ユータってそっち系の趣味あるの?」
は?
あ……
ちょ……待て!
ターニアの言い方だと、俺がまるで、レッドドラゴンの股間を品評しているみたいじゃないか!
違う! 違う!
僕、そういう趣味じゃないよ!
KENZENだよ!
「なるほど! そういうことか! ユーシャよ!」
そう言って、レッドドラゴンが、器用に二本の前足をつかって、ぽんっと手を叩く。
「我の股間に興味があるのだな、貴様!」
「うわぁ……」
ターニアが俺から距離をとる。
何コレ何コレ!
何で俺、そういう扱いばっかなんですか?
ちょ……風評被害ひどいんですけど!
てか、ターニアよ、俺だって、男物のぱんつ被っているお前にドン引きされたくないぞ!
俺がそんなことを考えていると、レッドドラゴンは、うんうん頷きながらこんなことを言い始める。
「お前の気持ちは、わかった! 我もそういうのが好きだ! オス同士で体と体をぶつけ合う……あれはいいものだ!」
「ちょっと待て! お前も、変な方向に話もってくな!」
「ふむふむ、なるほど! 我が召喚された理由がわかってきたぞ……そうか、ユーシャよ、そういうことか……よし、そうと分かれば……」
うわ……嫌な予感がする……
「先代勇者に教えて頂いた、あの競技を二人で楽しもうではないか!」
は? 競技?
それに先代勇者だって?
何だ?
こいつ、勇者と知り合いなのか?
「すぐにでも試合をしたいところ……だが、そうもいかないようだな……」
ドラゴンはそう言うと、さっと身をよじる。
すると、レッドドラゴンが避けた辺りから、勢いよく剣を突き立てて駆けて来る人物があった!
「チッ!」
「マールさん!」
マールさんは、即座に踵を返すと、レッドドラゴンの方に再び向き直り……
「てやぁ!」
気合いを込めて斬りかかる!
「ふん!」
レッドドラゴンは、片手で……いや、前足でマールさんを払いのけた!
払いのけられたマールさんは、勢いよく地面に叩きつけられる!
ドカッ!
マールさんはコロコロと転がって受け身をとる。
そして、俺の近くまで転がると、横に立った。
「レッドドラゴンが街中に現れたと聞いてみたが、まさかユータ、お前達がいるとは思わなかったぞ!」
マールさんは、俺とターニアを交互に見て言った。
レッドドラゴンが、俺達に対峙して言い放つ。
「さて、ユーシャよ。ただ試合をして遊ぶのもいいが、それだけだと少し盛り上がりに欠けるよのう……おお、良いことを思いついたぞ」
「何だ?」
「戦いに真剣になれるよう、お前が最も大事にしているものを預かることにしよう……」
「大事なものだと? 何をする気だ!」
「お前の大事なもの……それは、そこの女だな!」
は? 女?
ターニアのことか?
マールさんは今来たところだし、きっとそうだ!
ザザ……
俺は、ターニアに駆け寄ると、ドラゴンとの間に入った!
もちろん、俺がレッドドラゴンに何かできるとは思えない。
だが、時間稼ぎ程度にはなるはずだ!
しかし……
レッドドラゴンは、その巨体からは想像できない速度で移動し……
「ユータ!」
スイーツが叫んだ!
「え? ス、スイーツ!」
スイーツの目の前に、レッドドラゴンが現れたのだ!
こ、こいつ、スイーツのことが見えてたのか!
「ガハハハハ! こいつは連れていくぞ! 奪い返しに来い!」
「なっ?」
レッドドラゴンは、軽々とスイーツを抱える。
精霊って、触れることができないんじゃなかったのかよ!
「西の森だ! 我は西の森にて待つ!」
そして、レッドドラゴンは、スイーツの腹にワンパン入れて気絶させる。
「では、試合を楽しみに待っているぞ! ユーシャよ!」
そう言い放って、奴は、物凄い風と共に天に飛び立った。
後には、赤く、炎のように輝く竜のウロコが一枚残されるだけ……
「スイーツが……あいつが、俺の大事なもの……だと?」
あまりに突然のことの連続で、俺は呆然とするだけだった……
作者「大分、遅れてしまいました。申し訳ございません」
作者「ちょっと今回詰め込み過ぎて、時間かかりました」
作者「思ったこと全部書きたくなる症候群なんですよね、自分……これでも昔よりはまともになったけど、まだまだ文章がくどい……」
作者「いかんなあ、夜中に書くとどうも愚痴っぽくなってしまう。では、この辺で!」
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作者「忘れてた。一昨日、プロローグを一時的に消しました。くどいかなと思って。書きなおすか、削除したままに考えておきます。では~」




