21枚目 ごめん。やっぱむり。
作者「例のごとくですが、お食事中の方には不適切と思われる箇所がありますので、ご了承ください!」
「ウフフフ、つかまえてごらんなさい♪」
「アハハハハ、待てよ~♪」
楽しげな男女の声が辺りに響いていた。
優しさに包まれていた幸せな、ひと時。
「ウ……フフフ……ハァ、しんどい……」
「アハハハハハハ!」
途中、ターニアの辛そうな声が聞こえたような気がするが、きっと気のせい!
だって、俺達はこんなにも楽しいじゃないか!
二人で、商店街の服や雑貨を見てみたり……
屋台で焼きラビットのくし刺しを二人で食べたり……
ピンクに塗られたラブな宿屋に入ろうとしてターニアにつねられたり……
デートに関する自分の知識をフル活用して、実行した。
前世の世界も含めて、生まれてこの方、女と出かけるなんてことがなかった俺は、すっかり舞い上がっていた。
ちなみに、今、この場にマナとイータはいない。
二人には「よりデートっぽさを演出するために、ターニアと二人きりになる必要がある」とか言って別行動をしてもらっている。
今頃、広場とか、人の多そうなところで、びっくりするほどユートピアを実行していることだろう。
二人並んで、尻バンバン叩いて。
だから、ここは、邪魔者のいない二人だけの世界……
ああ、女が傍にいるだけで、こんなにも世界が違って見えるんだ!
俺、リアルが充実している!
「恋人同士でデートに出かけるような、気軽なクエストを下さい!」
「はあ?」
気がつくと、彼女(仮)ができたことを自慢する意味も込めて、俺はギルドに来ていた。
「デートって……まあ、いいですけど」
マールさんは、露骨に嫌そうな顔をする。
はは~ん、さては嫉妬しとるね!
こんなブ男の俺にも彼女ができて悔しい? ねえねえ、悔しい?
マールさん、美人だけど、男っ気ないからさぞや悔しかろう。悔しかろう!
ねぇねぇ、今どんな気持ち? ねぇねぇ、今どんな気持ち?
「チッ!」
「ひぃ!」
やっべ!
焦ったぁ!
マールさんに俺の心の声が聞こえたのかと思った!
心臓止まるかと思った……
「ったく……どいつもこいつも……」
マールさんはそう言ったかと思うと、すぐに澄ました顔をする。
「わかっていると思いますが、今、レッドドラゴン騒動のせいで厳戒態勢なので、街の中でできるような、簡単なクエストしかないですよ」
「例えばどんなのがありますか?」
「そうですねぇ、ユータさんのランクだと今は……街の見回りとか、ペット探しとか、ポーション調合とか……ああ、ポーション調合は資格が要るので、ユータさんには無理ですね」
ホントろくなの無いな。
まあ、街の外に出られないから仕方ないか。
折角だから、クエストにかこつけて、ターニアと二人でピクニック気分で外出したかったのだが……
そういう街の外のクエストは、今は緊急性が高いものだけとかで、Cランクとかのもっと上のランクの冒険者しか受注できないらしい。
俺は、隣のターニアに尋ねる。
「ターニアは、どんなのがやりたい?」
「えー、ユータが決めてよ」
「そうだなあ……じゃあ、俺、ターニアの攻略がしたいな!」
「やだぁ! ユータのえっち!」
ああ、くっそ。
つくり笑顔だとわかってても、カワイイなあ、ターニア。
デート中だと思うと、何だか特別に思えるよ……でへへ……
「はっ!」
何か、寒気を感じたので、ふと顔を上げると、マールさんが何だか青筋浮かべて、引きつった笑顔でそこにいた……
「タ、ターニア、行こうか? 何かマールさんが怖い……」
「そうね、行きましょう。やあねぇ……マールったら、私達に嫉妬してるのよ! これだから巨乳は短気でいけないわ……ウフフ」
「そっかぁ、巨乳のせいか、アハハ」
「そうよぉ、栄養が胸にまでいってるから頭回らないのね!」
「おーし、お前ら、喧嘩売ってんだな? そうなんだな? ちょっと待ってろ……今、剣とってくるから……」
マールさんがそんなことを言うものだから、結局、俺達は何もクエストを受注しないで、一目散にギルドから逃げ出した。
・・・・・・
「あのさぁ……」
ふいに、後ろからスイーツが声をかけて来た。
「状況わかっている? 一刻も早くレッドドラゴンを何とかしなきゃいけないんだけど?」
「わかってるよ……」
俺は、ターニアに聞こえないように、小声で答える。
聞こえたら、精霊が見えないターニアに変に思われるからな。
「わかってないでしょ!この一分一秒も惜しい時に、何で女の子とイチャついてんのよ! 貴方ねぇ、自分の命がかかってるのよ! レッドドラゴンから神力を取り除かないと、貴方、しぬかもしれないのよ? こんな小娘なんて適当にあしらって、自分の使命を全うしなさいよ!」
おお、怖い怖い!
これがきっと、ヒステリーってやつだな!
まあまあ、いいじゃないか。
ノギーツからAランク冒険者が来るまでまだ2日もある。
今日一日ぐらい遅れたって何とかなるよ!
・・・・・・
まあ、その後もそんな調子で過ごし……結局、その日は一日中、ターニアと二人でデートを楽しんだ。
「やっぱり、ユートピア体操しないといけないのかな……」
広場のベンチに座りながら、ターニアは俯いて言った。
日が傾きかけ、辺りは夕暮れの光に照らされ、黄金色に染まっていた。
「何か……その、ごめんな……」
「はあ? 何謝ってるの?」
「いや、俺の知識が役に立たなかったからさぁ……」
「いいわよ、別に。それより今日はありがとう。あんたと色々回って、それなりに楽しかった。いい気分転換になったわ」
そして、ターニアは「もっとも、私の隣にいる男性がイケメンだったら申し分なかったんだけどね!」と言った。
「傷つくなぁ……俺の心はピュアハートなんだぞ?」
「アハハ、そのナリで?」
「人を外見で判断してはいけないって、誰かに教わらなかったのか?」
俺がちょっと真面目にそう言うと、ターニアは「くっくっく」と腹をかかえて笑った。
「ふふ……あんたさぁ、思ったより悪いやつじゃないのね……ぱんつ魔なんて呼ばれているし、もっとスケベなやつかと思ってた!」
「いや、ちゃんとピンクな宿屋に連れ込もうとしたじゃないか」
「うふふ、そうだったね。私の魅了されちゃった?」
手を口にあてて笑うターニアが輝いて見えた。
「な、何言ってんだ……その平坦な胸で……」
俺はつい照れ隠しでそう口走ってから……「しまった」と思った。
ターニアのパンチを覚悟したが……
パンチは来なかった。
その代わり……
「私の家ってさあ……しきたりとか、礼儀作法に厳しいところなのよ」
突然、何だ?
パンチの代わりに始まった話に、俺は困惑する。
「自分の貧乳を改善するッ……って言って、家を飛び出して来たけど、本当は理由なんて何でも良かったのよ……あの束縛される家から出られれば……」
ターニアは遠くの空を見ながら、何かを思い出しているようだった。
「でも、根っからプライドが高いのね。一度言い出したら、たとえ嘘だとしても、途中で投げ出すなんて事できなかった。貧乳改善のために、薬の調合とか、魔法の研究とか、あれこれ手を出して……」
ターニアの表情は、昔のことを懐かしんで微笑んでいるような……それでいて、どこか寂しさを感じているような、複雑なものだった。
「研究をしているうちにドンドンのめり込んでいったわ。古文書なんかにも手を出して……そうしている間に、いつの間にか、マナとイータなんて、私を慕ってくれる子達もでてきて……あの子達の前では益々、弱いところなんて見せられなくなって……」
ターニアは「ふぅ」と溜め息をした。
「とどのつまり、私はさぁ……貧乳研究なんて、そもそも家出の口実であって、後輩への見栄のためであって……自分の貧乳なんてどうでもいいと、心の奥で思っていたのよ……だから……」
ターニアは、自分の胸をさすりながら、黄昏ていた。
「だから、気にすることないから……」
ターニアの目の端には、薄っすらと光るものが見えた。
何だか、こんなターニア、初めて見る……
「アハハ、目にゴミが入っちゃった……」
ああ、嫌だな、こういうの……
そんなお前を見てたら、何とかしてやりたくなるじゃないか!
「あーあ……何で、あんたみたいな豚男に、こんなこと話してんだろ……今まで誰にも、こんな気持ち、話したことなかったのに……」
ターニアは……
その瞳は、うるうるとして……とても熱っぽかった。
そんなターニアを見つめていると、俺はとても堪らなくなって……
「お前……俺のぱんつ被ってみるか?」
俺は堪らずそう言った。
良い雰囲気をぶち壊す、最悪の言葉だ……
でも、心のままに出た、純粋な言葉だ。
「はぁ? 何言ってんの?」
ターニアは、ジト目で俺を見て、いかにも「空気読めよ」と言いたげな感じだった。
わかってるよ。俺だって、このタイミングで言うのは最悪だって。
でもさ……
「ごめん、事情があって詳しくは話さなかったけどさ……俺のぱんつ、人の能力を高める力があるみたいなんだ……」
「え?」
「ぱんつを被って……剣を振るえばドラゴン級災害が起こるし……ビッグヴァイパーの毒も自然に治るし……魔法を唱えれば威力が強化される」
「え……それって……」
ターニアは、驚いてこちらを見つめた。
俺の言いたいことがわかったんだ。
「成功するか、わからないけど……俺のぱんつを被って、びっくりするほどユートピアを実行すれば……もしかしたら……」
ターニアは、まっすぐに俺の目を見て「うん」と頷いた。
・・・・・・
「感想言っていい?」
「いや、大体わかるからいい……」
俺とターニアは、人家から離れた、人気の少ない場所に居た。
人の目があると、ターニアが恥ずかしいということで場所を移動したのだ。
ターニアは、俺のぱんつを被り、いつでも『びっくりするほどユートピア』の準備を完了していた。
「すっごくオシッコ臭い……」
だから、やめろって。
冷静に言われると、余計恥ずかしくなる……
「あと、この生臭い臭いってさあ……男の人のアレ……の臭いよねぇ?」
「知っているのか、雷電?」
「誰よ、ライデンって……」
「ごめん。なるべくキレイなのを選んだが、使用済みじゃないと効果がなくて……」
「そ、そうなんだ……」
ぼそっと「嫌われてるかと思った」とターニアは呟いた。
はは、何言ってるんだかね……
「でも、自分の中に感じる……とてつもない力を……今なら何でもできる気がする!」
「そうか……頑張れ。お前ならきっとできる!」
「ありがと……」
ターニアは、すぅっと大きく息を吸う……
「びっくりするほど……」
大きく声を上げて、後ろに尻を突き出した!
「ユートピア!」
バンバンバンッ!
ターニアは自分の尻を叩いた!
「びっくりするほどユートピア! びっくりするほどユートピア!」
バンバンバンッ!
バンバンバンッ! バンバンバンッ!
「そうだ! 力強く! 自信をもってやれ! ターニア、お前ならできる!」
「うん! びっくりするほど……」
ごめん。
やっぱ無理。
何か、感動のシーンみたいに描写したけど、やっぱり、今のターニアはただの変な人にしか見えん。
胸ぺたんの少女が、男物のぱんつ頭に被って「びっくりするほどユートピア」と叫びながら、尻バンバン叩いているとか……
どう見ても変態です。本当にありがとうございました。
てか、これで胸が大きくなるとか、どう考えてもおかしいわ。
これって、胸が大きくならなかったターニアが変なんじゃなくて、大きくなったマナ・イータが変なんじゃねえか?
と、そんなことを、俺が遠くを見るような目で、ぼぉ~っと考えていると、
「え?」
ふいに、ターニアが小さく声をあげる。
お?
この反応はもしや?
「胸大きくなったのか?」
「ち、違……あ、あれ……」
ターニアは、俺の背後を指さした。
何だろうと思いながら、俺が振り向くと……
ゴゴゴゴォォォォォッ!
赤い大きな塊が、すごい速さでこちらにやって来る!
やがて、その塊は、俺達の前までやって来ると、その姿を現した!
「グオオオォォォ! 我を呼んだのは貴様らか!」
そこには、背中には大きな翼、頭には角が生えて……灼熱の溶岩のようにテラテラと輝く赤い鱗をびっしりと全身に纏った、赤いトカゲの化け物がいた。
まさか、これって……
「「ギャアアアァァァ! レッドドラゴンだああぁぁ」」
俺とターニアは声を揃えて叫んだ!
何で、レッドドラゴンが現れるんだよ!
しかし、困惑している俺に、さらに追い打ちをかけるようなことが起こる。
「くんかくんかくんか……このオーラ……貴様、ユーシャか!」
な……なんだ……と……
レッドドラゴンは、とんでもない発言をしやがった!
作者「遅くなって、もうしわけありません1」
作者「あれあれ~? おっかしいぞぉ~? もうちょっと話進むはずだったのにね……うーむ……」




