12枚目 せくはら
「シ、シスター・クレア!」
言ってから、自分がいまだに、ぱんつを被ってることに気づく。
慌てて、ぱんつを外して、説明を試みる。
「ち、違うんです! こ、これには訳が!」
「落ち着いて下さい、ユータさん。私は、人の趣味をとやかく言うつもりはありません……」
シスター・クレアの声が、やけに冷やかに聞こえた……
しゅ、趣味……
ち、ちがう……趣味ちがう……
そりゃあ、俺は、女子のぱんつなら被りたいと思ったことは何度もあるが、自分のぱんつを好んで被るような変態じゃない……
「ところで、ユータさん? 気分はどうですか?」
「え? 気分? 気分は……その、いいですけど……」
「そうですか。それはよかった」
シスター・クレアは、にこにこして言った。
「ここが何処だかわかりますか?」
「わ、わかりません。何処ですか?」
「教会です」
教会だったのか、ここ……
考えてみれば、教会の庭は洗濯で貸してもらっていたが、建物の中までは入ったことがなかったな……
あれ? 教会?
ってことは、シスター・クレアが連れて来たのか?
「大変でしたよ? 偶然、酔いつぶれたユータさんを発見したのは良かったのですが、ユータさん大きいから、私一人ではどうしようもなくて……まあ、それは、ギルドの方に手伝ってもらったんですが……」
ああ、やっぱり、シスターがわざわざ介抱してくれたのか。
「相当酔われていたので、教会の方で回復魔法をかけようと思い、こちらにお連れしたのですが……」
なるほど、それで教会で寝ていたわけか。
シスター・クレアの話では、解毒の回復魔法で、ある程度の酔いは醒めるようだ。
「ちなみに、ギルドのどなたが手伝ってくれたんですか?」
「マールさんですよ。受け付け嬢の。あの方、エルフなのに案外ちからもちなんですね。ユータさんを一人で支えてましたよ」
「あ……そ、ですか……」
俺が歯切れの悪いこと言ってると、シスター・クレアは目を丸くして、きょとんとしている。
「もしかして、マールさんのこと、苦手なんですか?」
「え? え、ええ……まあ……」
「その、ぱんつ魔の噂を聞いた限りでは、てっきりマールさんに好意をもっているのかと……講習会も一緒に来てらしてましたし……」
「いやあ、その……マールさんは美人ですけど、正直あのガサツで、押しの強いとこが苦手で……」
「そうなんですね。ごめんなさい、話が逸れましたね……」
シスター・クレアは、軽く頭を下げる。
「それで、教会で回復魔法をかけようとお連れしたのですが、随分と悪酔いされているようで、魔法の効きが悪くて……あの様子だと、私の見立てでは、今日明日では、二日酔いが抜けないと思っていたのですが……」
「ん?」
何だか、シスターの言葉に妙に引っかかるものを感じた……
「さっきも尋ねましたが、気分はもうよろしいんですよね?」
「あっ」
そこでやっと、しまった、と気付く……
さっき何気なく答えた、あの質問には、そういう意図があったのか。
すぐ回復するはずのない二日酔いが無くなってる……と確認する意図が。
やられた……
「ユータさんが被ってる時から、そのぱんつ、どこかで見たような気がしていたのですが……いえ、もちろん、ユータさんは教会で干していたので、見たことがあってもおかしくはないのですが……」
俺の心臓は高鳴った。
「しばらく考えて、ようやく答えに気付きました……昨日、ビッグヴァイパーの毒を治療した時に見たのですね、私は」
そして彼女は、にっこり笑うと、こう言った。
「単刀直入に言いましょう……そのぱんつ、解毒の効果があるんですね?」
「ち、違います……」
どもりながらも、即座に答える俺。
マズイ……
これ以上、ぱんつの秘密が人にバレるのは……
「ユータさん、正直に言って下さい……」
シスター・クレアが悲しそうな表情をする。
「あの……でも……」
「そんなに強い解毒効果ですものね……ユータさんも何か事情があって言えないのはわかります。でも、その力を多くの人のために役立てたいと思いませんか? 隠して独占しているのは……」
ああ、何でこんなに必死なんだろう、この人?
お金にならないことは興味ないんじゃなかったのか?
で、そんなことを考えてたのが良くなかったのだろう……
「シスター、お金儲けに使えそうですか?」
口からつい出た言葉だった。
何でそんなことを言ってしまったのか、と後悔したが、一度出た言葉は引っ込められない……
シスターは、無表情で俺をしばらくじっと見ていたかと思うと……すごく悲しそうな顔をして言った。
「そうですね、いつもの私ならそう言うかもしれませんね……でも……お金は大事ですし、私は普段からそう言ってます。でも、それは、困った人を助ける手段として、大事だと言ってるだけです」
シスターは、真っ直ぐに俺の瞳を見つめていた。
「ユータさん、世の中に困った人は沢山いるんです。目の見えない人、足の不自由な人……彼らは、上級の回復魔法なら、あるいは治るかもしれない……でも、お金がないんです」
よく見ると、シスターの目の端に薄っすらと光るものが……
や、やめてくれ……俺、そういうのに弱いんだよ……
「もしも、私に彼らを癒すだけの力があれば、お金なんて貰わないで治してあげたい……ユータさん、お願いします……その力のこと教えて下さい! 教会のために……いえ、人のために役に立つことなんですよ!」
「で、でも……」
それからしばらく、シスターは、俯き加減でじっと床を見ていたが……やがて顔を上げて、意を決したようにこう言った。
「お願いします! 私にできることなら、何でもしますから……」
「い、今、何でもって……」
ごくりっ……
俺は固唾をのんだ。
シスターの服は、肌の露出も少なく、体のラインを隠すものだが……それが却って俺の妄想を刺激する……
ふと俺は、前世の世界、同じパンチラ画像でも、ミニスカのキャラよりも、普段ロングスカートのキャラのパンチラの方が何か、より興奮したのを思い出していた。
で、それが顔に出ていたのだろう。
シスターは、俺の顔を見て「ひゃっ」とか小さく呻くと、顔を真っ赤にして俯いてしまう。
か、かわいい……
「はっ……」
そこで、はっと視線に気づいて振り返る。
スイーツが責めるような目つきでそこにいた。
「どうするの? またバレるわよ?」
俺は何も答えられない。
「あーあ……だから、一つの街に居座るの、嫌だったのよ……どんなに上手くやっても、同じ場所、同じ人間と接していれば、いつかボロが出るもの。しかも今回は、完全に貴方の不注意だしね」
何も言えなかった。
「でも、こうなったら、説明する以外ないけどね。口封じなんて出来るわけないし、そんなことしたら先代勇者達と同じになっちゃう……いい? ぱんつの説明はしてもいいけど、絶対に『勇者であること』は言っちゃダメよ?」
「わかった……」
俺がそう呟くと、シスター・クレアが神妙な面持ちになる。
「わかってくれましたか……」
あ、すみません。そっちじゃないんですよ。
こっちの話で。
でも、まあ、一応話は通じるのか……
「初めに言っておきたいんですが、今から話すことは、くれぐれも他の人に話さないようにして欲しいんです……」
「はい、神に誓って」
俺は、意を決して、ぱんつの説明をした。
「ぱんつの力……そんな力が?」
「ええ。でも、それには、俺の使用済みぱんつを被らないといけません……」
どーでもいいが、真面目な話をしているはずなのに、何でこう変態的に聞こえるんだろう。
「ぱんつ被り……あ、それで『ぱんつ魔』って……」
シスター・クレアは納得がいったという表情でそう言った。
「シスターは、俺のぱんつを被る覚悟、ありますか?」
俺がそう尋ねると、シスター・クレアは、ちょっと困ったような表情で、さっと身を引いた。
うんうん。
いかに人に優しい聖職者でも、やっぱそういう反応しちゃうよな……
「あの……その話って、私にぱんつ被らせたくて作った話じゃないですよね?」
「いえ、本当のことです」
「ですよね……作ったにしては、真剣な雰囲気でしたし……」
あ、そういえば、ある種の人物は、嘘をついたかどうかを汗を舐めて判断できるそうですが……シスター・クレアもぺろっと舐めてみますか、俺の汗?
なんか、それはそれで良いかなあ……ゲヘヘヘ……
「ただちに被って確かめたいところですが……ちょ、ちょっと、考える時間を下さい……こ、心の整理もつけたいので……」
流石に、マールさんみたいに下品に俺のぱんつを脱がすようなことはしないか。
まあ、そんなわけで、俺は解放されることとなった。
ちなみに……
教会を去る前に、シスター・クレアに「さっき、何でもするって言ったよね?」と確認しようとしたんだが……
言いかけたところで、スイーツが突き刺さるような視線とともにガラケーを構えたのでやめた……
ちきちょー!
・・・・・・
「もうこれ以上秘密がバレる前に、この街を出て次の街に行く準備をしましょう」
「ああ、確かになあ……」
俺達は、いつもの馬小屋に戻って来ていた。
自分で言うのも何だけど、俺隠し事できないっぽいし、このペースでバレ続けると、いつか街中に知れわたるのも時間の問題かもしれん。
それで済めばいいが、もしも間違って勇者であることがバレたら……勇者は死刑だ……ガクガクブルブル……
よし、次の街に行くための準備を整えよう!
アニエスさん情報だと、今の俺のレベルだと次の街までは厳しいらしい。
ならば、修行だ!
強くなるために、ギルドで、ルーキーマウスより強い奴の適当な討伐クエストを紹介してもらおう!
「やったるで!」
そう意気込んで、ギルドに乗りこむと、今日の受け付け嬢は、マールさんだった……
踵を返して、外に出る。
今日は日が悪いし、ダイエットは明日からってよく言うし、やめようか?
いやいや、ダメだ! こんなところで逃げてしまっては次に進めない!
もう一度、扉を開けて、ギルドに入る。
よく見ると、マールさんは、受け付けのカウンターで、誰かの相手をしていた。
その相手は、背丈は子供かと思うぐらいで、恰好はいかにも魔法使いといった感じの、全身黒づくめのローブだった。
フードを目深に被っており、人相は窺えない。
マールさんとそいつの声は大きく、二人の会話は、ギルドの建物中に響いていた。
「ですから! そのような質問には答えられないと何度も申しています!」
「自分だけ秘密を独占したいって? 巨乳になると、性格まで歪むってわけ!」
「あの、ですから……これは昔からでして! 薬とかで育てたわけでは……ああ! どう言ったらわかんだ、この人!」
こんな公の場で、一体、何の話をしてるんでしょうね、この人達……
「自前自前って、エルフが、そんな立派なもの持ってるわけないじゃない! こんの嘘つきが……あっ」
言ってる途中で、黒ローブの人がこちらに気づいた。
タタタっと駆けよって来て、指さして俺にこう言う。
「あ、あんた……その冒険者にあるまじき太った体格……筋肉の欠片もないブヨブヨの腕……頭の悪そうな顔……あんたが噂の、ぱんつ魔ね!」
初対面で失礼なやつだな、こいつ……
そいつは、そう言うと、フード外して顔を見せて来た。
肩にかかるぐらいの赤い髪に、端正な顔立ちは、どことなく気品を感じられる。
ああ、女だったのか。
胸が平坦だから、わからなかったよ。
なんちて。
まあ、マールさんとの会話から、女だと大体予想できていたが……
しかし、次に出て来た言葉は、考えもしないものだった。
「私こそは、偉大なる大魔導師ターニア! あんたのぱんつ、私にささげなさい!」
何か、異世界の女子からセクハラを受けた件について……
作者「ようやく、ここまで来た! 役者が揃って来た!」
作者「タニア→ターニア、にしました、お兄ちゃん!」(8月22日21時追記)
作者「タニアにするのか、ターニアにするのか、いっそナタニアにするのか、散々迷った結果でした」




