プロローグ
剣と魔法の世界エクスカリブ……その神域にて……
神々は、重々しい雰囲気で円卓を囲んでいた。
「早い話、我はもう、エクスカリブは見捨てても良いと思っている」
「なっ! 彼らを見捨てると仰るのですか!」
「見捨てたくもなるだろうよ。魔王が出現する度に、我々は異界から人間を召喚し勇者と成して来たわけだが、その尽く失敗して来た……人に過ぎたる力を持った勇者は、必ず我らを裏切る……」
「もうエクスカリブは良い……エクスカリブに力を割くぐらいなら、他の世界に目を向けた方が有意義であろうよ」
「そうだ、この間、全ての国民を奴隷にした国があると言っていたな。国民が食うにも困っているのに、国王は税金を海外へばら撒いて放蕩しておるそうだ。あそこに勇者を……」
「待って下さい!」
「何だ、アストレイア? 騒々しいぞ……」
「皆様! 私は人の心を信じます! 今までの勇者は残念な結果となってしまいましたが、真なる勇者はきっと、私達の期待に沿って善のために働いてくれます! そして、そのような善なる者を助けるのが、我々神の義務と心得ます!」
「では、アストレイアよ、お前が己の正義を示せ……」
「わかりました! 例え、どんなことがあろうとも、私だけは最後まで正義を信じて戦いましょう!」
「だが、ただ同じことを繰り返してもバカらしい……転生体たる勇者に何か制約をつけよ」
「おお、そうだ! 勇者自らの……を……して……とするのはどうだろ?」
「え゛っ!」
「ハハッ! それは面白い! それでも世界を救うのであれば、その者はまことの勇者であろうよ! ハハハ!」
「のう? アストレイア? どうした、そんなに顔を赤らめて……」
「セ、セクハラです、こんなことっ!」
「 「 「 その言葉が聞きたかった! 」 」 」
男神達は膝を叩いて笑いあい、女神はひとり赤面のままに男神を睨みつけた。
こうしてエクスカリブの勇者には、呪いにも似た制約を課せられることになった。
そういうことになった。