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一人で魔王倒しました。

作者: 高菜わさび

血のような空、灰色の重たい雲の下に二人の男がいた。

一人は征服者、もう一人はその討伐者。

「まあ、お前と初めて会ったときは、まさか自分が魔王になるだなんて思わなかった」

「魔女に惚れたら、魔王になるっていうのは常識だよ」

「それはそうなんだが、諦めるにも忘れるにもいい女すぎてダメだったよ」

征服者は後に魔王と呼ばれ、討伐者も合わせるように勇者という名誉を授かった。



チッチッチッチッ

テーブルの上の懐中時計が規則正しく時を刻む。

「こうしていると、普通のお兄さんですよね」

その後勇者は王国から恩賞一式を与えられ、健康的な生活を続けていた。

何しろ午後にこんなに客が賑やかなミドリ通りのこのカフェに行けばすぐに会えるのだから。

「わかりやすいように、時計の蓋を閉めておいたらどうですか?」

蓋には与えられた勇者の紋がついている。

「蓋閉めたら、時間わからないじゃないか」

勇者に話しかけてくる男は王国の役人であり、またあの戦いの証人も務めた。

「勲章って、付け方間違えると首を悪くするんで」

「それは医学的にという意味でいいんですかね、まあ、確かに人に目立つような紋章は大きくて見栄えがするように作られてますから」

「ちょっと前見た本に、勲章をたくさんぶらさげたことが原因でヘルニアになったという症例を読んだし」

「そういわれると、無理はさせれませんね」

そういって役人は勇者の向かいの席に座って。

「先程ね、また言われたんですよ、本当に勇者は魔王を倒してきたのかって?」

「いつものことだね」

「あなたは確かに魔王を倒しました、しかし同時に次の争いの種も作りました」

「魔王の領地問題ね」

「はい、あなたには残念ながら領を治める権限はありませんでしたから、そうなるのは目に見えてました」

「それ、お前の仕事だったっけ?今召喚獣の再契約の窓口にいるだろう?」

「出向になりました、何しろ政治というのは一枚岩ではなくて、私のような成り上がりというのは、嫌われるんですよ」

「でもお前だけだったぞ、証人の資格を持っているやつで、僕についてきたのは」

「あなたなら倒せるか、まあ、悪くないところを引けるかなって、魔王とは何しろ顔見知りでしたし、いきなり切りつけることはないだろうな…て」

「あいつはそういうやつではないし、むしろ僕の方が危ないからな、最後に話をしたときって、甲斐性なしだなお前はって話をして、キレてたから」

「うわ、今明かされる真実、それ聞いていたら、私ついて行かなかったかも」

「いいや、お前は来るだろう、お前はバカじゃないもん。討伐命令が下った中で、何人が僕のように下調べしっかりしていたのかわからないけどさ、少なくとも最後まで調べた上で、あいつの住み処まで向かったのは僕しかいなかったし」

「まあ、あなたのおかげで出世はさせてもらいましたし」

「お前は毎日のようにここに来るけど、仕事はどうやってるんだよ」

「優秀な部下がいるんですよ。私は彼を引き抜くために前の上司とカードで真剣勝負してきましたし」

「それで勝ったと」

「ええ、その方が彼も私も幸せでしょうから、と話がそれましたね。そろそろ自主的に何かしてもらいたいんですよね、立場がある方がイヤミをいってくると、私たちは反撃できないので、反撃材料がほしいなって」

「それ誰が言ったのか、わかるんだけど…あれだろう、自分の手駒が戦功焦って、損害の上撤退しちゃったから、やばいんだろう」

「そうなんですよ、でも領土ではそういうのを言える人がいないから王国の方も手を焼いているんですよね、私としてはそこに有能な人たちがいるので、できれば自由になってほしいなって思うんですよね」

「今のままだと、よそと利益を作ったら、何されるかわからないものな、じゃあ、お前も手伝えよ、それが最低条件だ」

「酷使される~」

表情は嬉しそうに、ふざけているようだ。

「悪いな、もう苦労しないと決めたんで、さて、何をするか」

「えっ?もうそこからですか」

「午前は筋トレ、午後はカフェな生活してる人間がすぐに動けるわけないだろう」

「そういえばお酒は召し上がってないみたいですけど」

「酒か、酒飲むと集中力が落ちるんだよ」

「えっ、でも前に見たときそんなことなかったと思いますが」

「加減が自分で気にくわないの、魔法は火力があればあるほど繊細なコントロールができるかってことが驚異になるの、酒が入るとそれが上手いこといかなくなるから、そしたら魅力は半減なのさ」

「次の魔王が仕立てあげられる前に手を打ちますか」

「イタズラに魔王とか、勇者を消費しすぎなんだよ、僕の功績も次の勇者が生まれるまでだろうし、さあ、次は何をしようか」


一週間後、王国を長年悩ませていた子爵領内のみ適応される悪法が撤廃されることなった。

勇者が代理人を務め、子爵が書類にサインをしたことで領地はお祭り騒ぎになったという。




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