10話 進まない
なんかおっちょこちょいだなコイツ……見た目からして、成績優秀、運動神経抜群、みんなの人気者! みたいなイメージだけど意外と違そうだな。
彼女がコホンと、咳払いをし、切り替える。
「んで、何でアンタが星野さんの事とか知ってるわけ? もしかしてアンタがーー」
そこまで言いかけた瞬間、何処からか携帯の着信音と思われる音と共に、彼女のスカートのポケットがブルルルと、揺れる。恐らく彼女の携帯から電話が来たのだろう。
「…………」
「…………」
大事な所で携帯鳴ったな! 空気読めよ電話かけたヤツ!
なんて、無責任な事を思っていると、彼女はバツが悪そうに顔をしかめる。
「ったく、誰よこんな時に……」
彼女がポケットから携帯を出す。明るい、元気なイメージの黄色い色の携帯だ。やはり現代的なスマートフォンである。今、この時代、ポチポチボタンを押す方の携帯電話を持っている人の方が珍しいくらいだ。スマートフォンなら持ってて普通だろう。
ってか、俺と機種同じだな……一番最新型で、人気だし、まぁ被る事くらいあるか。
「もしもし、母さん? 何よこんな時に……」
相手はどうやら彼女の母さんらしい。彼女は何やら話を聞きながら、保健室の外へ行ってしまった。
「ぜんっぜん、話進まないな……あー、早く帰りたい」
そういえば、次巻である4巻の締切が、5月の終わりまでだった事を思い出した。今日は4月10日。後、締切まで1ヶ月と2週間程しかない。そう考えるとどんどん気持ちが沈んでいく。
「や、やばい、まだ後80ページも残ってるんだった……」
まずい。これは非常にまずい。どれくらいまずいかと言うと、異世界に転生して早々、ラスボスに会った、と言うくらいにまずい。
実際、小説を書いていない人に、後80ページと言われても、あまり想像出来ないかもしれない。簡単に言うと、俺の出版している所は、1ページが、40字×13行となっている。つまり、1ページ500文字だ。だから、80ページで4万文字となる。
一見、後1ヶ月と2週間もあれば4万文字とか普通に書けるくない? とか小説を書いていない人の多くは思うだろう。だがしかし、小説を書く事はそんなに甘くない。そんなんで完成させることが出来たら、小説好きは皆作家になれるだろう。
4万文字書くだけならまだマシかもしれない。しかし、俺は作家だ。読者に自分の書いた文を読んでもらうって事は読者が違和感無く、文を読むことが出来るようにしなければならない。だから書いた4万文字の文を修正するのだ。莫大の時間をかけて。しかも、頭で考えているストーリーを文に収めなければならない。結論を出すと、めっちゃヤバイ。間に合わないかもしれないって事だ。
「マジでどうしよ」
「何がよ」
「ホワッ!? なんだお前か……」
本日、3度目の奇声。二度あることは三度ある、って言葉が本当だって分からされた気がした。
「なんだって何よ。失礼ね」
気に食わなそうな顔をして、彼女は何処から出したのか、小さい椅子に座って、携帯をいじっていた。
「話は終わったのか?」
「うん。大した様じゃ無かったみたい」
「そっか」
彼女が携帯を、俺の近くのスペースに置く。
「今度こそ話して貰うわよ! 何でアンタは星野さんの事をーー」
彼女が立ち上がり、ビシッと俺に指を指した時だった。ふと見た彼女の携帯は、電源が入っており、ホーム画面に写っていた画像を見て一瞬で気づいた。
「ちょ、お前コレ……」
「今度は何よ!?」
「このホーム画像……『ヒロイン攻略』の画像だろ!?」




