秘密の場所
クレスは一度だけ振り返ってこちらを確認した後、さらにスピードを上げた。
森の上空を駆け抜け、山の中腹にある天然のトンネルに飛び込み、とにかく最短距離を迷いなく進んでいくように思えた。
まる一昼夜を飛び続け、クレスが突っ込んだのはある森の奥にある泉のほとりの大岩。
砕け散るかと思われた大岩だが、その表面に波紋が生まれたかと思うとクレスの姿は飲み込まれるように消える。
流石に全速力で追随するほどの度胸は無かったナベリウスたちは一度減速した後、慎重に大岩の向こうへ足を踏み入れた。
「止まってください」
大岩を抜けた先でクレスの前に立ち塞がったのは、スーツを着込み帯刀した緑髪の女性。
飛び込んできた勢いのままに抜刀したクレスは、フェイントも交えた一撃で彼女を無造作に打ち払う。
「反応は良いが、相変わらず受け流しが甘いな」
「……戦闘部長!?」
「今はお前だろうが、サヤ」
緑髪の女性――サヤの驚愕に、クレスは呆れたような声で応える。
「エフィは中か?」
「ま、待っ――」
サヤの制止より早く、クレスは正面にあるコテージの中に入った。
途端に殺気が満ちた。コテージの天井から、無数の人影が飛び下りる――。
「ここは……?」
大岩を抜けた先にあったのは、抜ける前と変わらない様子の森に囲まれた泉。
違いといえば、泉の側に木造のコテージがあること。
そして、慌てたように立ち上がったサヤの存在だった。
「止まってください。あなたたちは何者ですか?」
こちらに気付いたサヤは、少し緊張した様子で誰何する。
「さっきここに一人の男が来たはずだ。その同僚のような者だよ」
クレインの返答にサヤが何か答えようとしたとき、コテージから尋常でない殺気が迸った。
「――ちょっと待て、あのコテージで何が起きている?」
「……いえ、深刻な問題は無いはずです。多分」
落ち着いた返答だが、後半で自信無さげに目を逸らしたのが怪しい。
「とにかく、私は許可があるまで誰も通さないように仰せつかっています。あなたたちも、ここで待っていてください」




