夜逃げ
クレスたちが自由騎士団に組み込まれてから、早くも一月あまりの時間が過ぎた夜のこと。
「…………」
旅支度を済ませたリアラは、意を決したように窓を開けた。
僅かばかりの荷物を持つと、窓枠へと慎重に足を掛ける。
「――っ」
「何処へ行こうと言うのかな?」
飛び出したリアラの身体は霊魂に捕まえられ、部屋の中へと引き戻される。
「――クレイン、さん? ……何故――!?」
恐る恐る振り向いた先にいたのはクレイン。その背後からティルナも姿を見せる。
だが、それは有り得ないはずのことだ。
この日を選ぶに当たって、主要な騎士たちに予定が詰まっているタイミングを選んだ。
……ならば何故、彼女らがここにいるのか?
「これはいつの間にやら慣例化したことなんだがね」
何かを思い出すように苦笑しながらクレインが答える。
「私たちは実際、スケジュールほど多忙な身ではないのさ。その隙間から互いが無茶をしないように目を光らせてる、それだけの事だ」
「なるほど……」
納得した。
仮にクレスのような人間が集まっているのだとしたら、そんな慣例があってもおかしくはない。
「……どうして、一人で行こうとしたの」
「う……」
ティルナの静かな糾弾に、リアラは小さく呻いて言葉を探す。
「私は、ルナリアの皇族ですから。居ても立っても居られなくて……でも、皆さんにはそれぞれやるべき事もあるのに、邪魔なんてできません」
「原因こそ不明だが、今のルナリアは妖魔の跋扈する魔境と化しているんだろう? そんなところに一人で行って、タダで済むと本気で思っていたのか?」
「…………」
「……魔法を習いたいって言った時から、こんなことになるだろうとは思ってたけど……」
「そ、そんなに前から!」
ティルナの言葉に、自分はそんなに分かり易かっただろうかと思わず自分を省みるリアラだった。
「ふぅ。時にこの会話は録音している訳だが」
「ええっ!?」
不意にクレインが取り出した水晶に驚愕するリアラ。
水晶の魔力を切り、クレインは続ける。
「仲間と、困っている人々。もちろんどちらも大事だが、私たちが優先するのはどっちだと思う?」
「え……?」
「とりあえず今夜は寝なさい。明日みんなで普通に出発するから」
「それは、いったい……」
「この状況を作るためにみんなで表も裏もスケジュールの調整をしてたって言えば、分かるかな? じゃあお休み」
クレインとティルナが出ていった後、部屋に一人残ったリアラは力なくベッドに倒れ込んだ。
「はは……。ほんとに、皆さんには敵いませんね……」
スケジュールほど多忙ではない云々について一応補足をば。
細部に拘らない方は読み飛ばしてくださって問題ないです。。
要するに、発生するか未定の依頼をスケジュールにはさも受けるところまで確定したかのように書いたり、重要度の低い依頼なら信用している傭兵etc.に丸投げしたりしてるんですね~
もちろん今回のリアラみたいな懸案事項が無い時はほぼスケジュール通りに勤勉に働いてます。。




