清算の時
「……」
「(ニコリ)」
正面には微笑みを浮かべるルトルウォーナ。
「……」
「……」
右にはこめかみをヒクつかせたラズハ。
「……」
「(ニヤァ)」
左には邪気漲る笑みを表情に刻んだウルド。
「……(ダッ)」
「ていっ」
「へぶしっ」
とんぼ返りで大きく距離を取ろうとしたクレスはマリスの妨害を受け、普段なら絶対上げないような声と共に墜落。
尚も逃げようとしたクレスの首根を霊魂が捕える。
「……やれやれ、嘆かわしいことだ。ご主人様ともあろう者が、私から逃げられるとでも?」
「ま、この陣容から逃げ切れると本気で思っているなら身をもって思い知ってもらうしかないな」
凍り付いたクレスは、恐る恐る辺りを見回す。
現実に有り得てはいけない光景が、そこにあった。
まず背後に立っていたのは「旅騎士」エレンと無駄なまでに妖艶にメイド服を着流したクレイン。
見回せばクレスを取り囲んでいるのは大蛇を打倒した四人だけではない。
「貴騎士」シグノイベルに「謎騎士」デュラン、果ては内政担当で滅多に出てこない「理騎士」ガラフ、団長にして「堅騎士」フューゼまでがイイ笑顔をクレスに向けていた。
「ガラフに団長まで……っ、マジかよ……」
「それだけの事態だからな」
フューゼ・エルトゥスは重々しく頷く。
国家の主力軍を複数ぶつけても容易く打ち破れるだけの過剰戦力に囲まれて平然とできる者がいるなら、それは神か神クラスの馬鹿に違いない。
生憎クレスはどちらでもないようだった。
「まあ今更『なぜ我々に何も言わず消えた?』など、言ったところで理解できまい。ならその身で思い知れ」
腰を抜かしかけているクレスを前に、フューゼは真面目そのものの表情で親指を下に向けメンチを切った。
「――シメるぞ」
「「「おおおおおおおおおお――――っっっ!!!」」」
……地獄が、始まった。




