ランク
ティルナに一蹴されたギムを担ぎ、チンピラたちが撤退した後。
「強いんですね……。貴女たちは一体、何者なんですか?」
律儀にその一部始終を眺めていたリアラが、気まずさも忘れて問いかける。
『傭兵』
それはもう分かっていたことなので、冗談めかしてさらに尋ねる。
「Sランクくらいだったりします?」
『A×3』
「……えっ?」
予想以上の答えが返ってきた。
傭兵には、実力と実績に応じて組合からC~SSSのランクがつけられる。
最下級のCが駆け出しの傭兵見習い、Bが一人前の基準となっていてAともなると一流。
そこから先は別次元で、ランクが一つ上がるごとに大人と子ども程に実力が開くとされ、到達できる数も激減する。
ガルディアの四神にも匹敵するSSSとなると大陸に七人しかいないと言われている程だ。レガリアでは、ランクSもあれば国賓並の待遇を受けられる。
――そしてAAAとは、一流の傭兵から更に一線を画す者につけられるランク。彼女達は、王族警護の依頼も任されるほどの実力者だということだ。
そんな高位の傭兵たちの中でも富以外の目的を持つ者は、普段は市井に紛れて生活しているという。彼女らもそういった傭兵なのだろうか。
物思いに沈んでいたリアラは、ふとティルナの姿が見えないことに気付く。
慌てて辺りを見回すと、案外進んだ先に蒼い後ろ姿が見えた。
(あれ? 私って護送の依頼、受けてもらったんですよね?)
リアラは慌ててその後ろ姿を追いかけた。
……その晩。
クレスたちが泊まった宿の裏手の小山に集まる無数の人影があった。
小声で何事か話し合っていたが、最後に小柄な影が確かめるように発言する。
「標的は三人。隙を見て……皆殺しだ」
残る人影がそれに頷くと、一人また一人と闇に溶けるように消えていく。
後にはただ、虫の声一つない静寂のみが残された。
クレスたちに「隙」ができるのは案外後のことになります(笑)