ヤマト
妖魔の襲撃から一夜明け、船は無事ヤマトに到着。
問題のグラシャラボラスが消耗しきっていたこともあり、拘束用の呪具の装着は簡単に終わった。
「じゃあ、今回は少し祭りを楽しんだら次の船で帰るぞ」
「? 分かりまし――」
「何しに来たんだお前」
「っ!」
いつの間にかすぐ傍にいて、話に割り込んできた浴衣姿の男がいる。
クレスは即座に逃亡の様子を見せるが、マントの裾を掴んだ男に引き戻される。
壊れかけのゴーレムのような動きで振り返ったクレスは、男の陰に隠れている少女の姿に気付くと更に身を強張らせた。
「七年来の再会だってのに連れねぇな」
「そだよー」
「……コウマ、ヤクモ。久しぶり……だな」
「コイツはよぉ!」
「まったくー!」
「ちょっ、待――のわぁ!?」
諦めたように肩の力を抜いたクレスは、飛びかかった二人に抱きしめられて悲鳴を上げた。
抜け出そうとするクレスだが、二人は一向に離そうとしない。
やがて抵抗を諦め、為すがままになる。
「――それにしても、よく俺だって分かったな。七年ぶりだろ?」
「それはお前もだろ」
「見れば分かるよ。でも、今回は普通に船で来たんだねー?」
「泳いでだと一人でしか来れないからな。っていうか、出てるなら普通に船を使うさ」
「ああ、昨日は世話になったらしいな」
「別に大したことはしてねぇよ」
照れたようにそっぽを向いたクレスは、ぽかんとしているリアラたちに気付いて咳払いをした。
「あー、正直覚えられてるとは思ってなかったが……七年前に世話になった奴らだ」




