接触
ナベリウスが地下に潜ってから待つことしばし。
入って行った階段から戻って来たナベリウスにクレスが気づいた。
「パッと見、入った時と大差無いように見えるな」
「もう少し近づいてリアラさんに感情を視てもらったら何か分かったんじゃないですか?」
「うーん……ナベリウスの感知能力がなぁ。ま、次はなるべく隠蔽かけて試してみれば良いか」
場所だけ覚えると、再び移動を始めたナベリウスをクレスたちは追いかけた。
次にナベリウスが訪れたのは、人里離れた山にある洞窟。
また、遠くからだと様子を見るのが難しい場所だった。
「すぐ戻るから、少し待っててくれ」
「どうしたんですか?」
「山の中の構造が知りたい。回り込んで場所を誤魔化しつつ、探りを入れてみる」
「……気を付けて」
リアラたちに見送られたクレスはもう少し高くへ飛び、適当な場所に降り立った。
僅かに魔力を帯びた拳を、山肌に軽く二、三度ぶつける。
手応えに頷くと、クレスはリアラたちの元へ戻った。
「どうでした?」
「山を貫くトンネルは無いみてぇだ。そうと来れば、もう少し近づくから隠蔽かけるぞ」
「は、はい」
「どうだ?」
「えっと……はい、たぶんギリギリで視えると思います」
「ならもう少し近づくか」
「分かりました。あとジェス君、そこは角度的に危ないと思う」
「ご、ごめんなさい」
「お……出て来たな」
「――っ!」
ナベリウスを視て、リアラは息を呑んだ。
そのただならぬ様子に一行は警戒を強める。
「どうだった?」
「今のナベさん……凄く、苛立ってます。今まで視たこともない憎悪と……悲しみに、まるで憑りつかれてるみたいな……」
「そうか。ところでまたナベリウスが移動するぞ、どうする? 捕まえるか泳がすか、しばらく見逃すか」
「……では、追ってください」
「了解」
追跡の最中、広い草原に差し掛かったタイミングでずっと考え込んでいたリアラが声を上げた。
「クレスさん、ナベリウスさんに追いついてください。話を……します」
「一度だけ確認しておく。良いのか?」
「……はい」
静かな問いに、リアラは決然と首を縦に振った。




