クレインの思惑
部屋の騒ぎも収まってきた頃。
自由騎士団からの連絡を受けたクレインは少し部屋の外へ出ていた。
「ご用は済んだれすか~?」
「ん?」
ナベリウスの声を追った視線が一点に固定される。
声の主は、天井裏から逆さにぶら下がっていた。
「……君のユニークさには、たまに度肝を抜かれるよ。あと怒られるぞ」
「そりゃど~も。あと、この天井は元かられす」
一回転して降り立ったナベリウスは天井の壊れた部分をスライドして戻すと、テラスへクレインを誘った。
「で、わざわざ皆から離れて訊きたい事というのは?」
「大したことじゃないんれすけどねー。クーさんの乗り方がちょいと強引だったのに興味を持ったらけれすよ~」
「ああ、キィンの話か。でもそれは君も同じだろう?」
「わらしは気分とノリで動いてぁすから~。皆さんとは違うんれすよ~」
「……はは、君はずるいな」
クレインは形ばかりの笑みを零すと、手すりの上で腹這いになっているナベリウスの方を向いた。
「良い月だ。多少興が乗って独り言を呟くこともあるだろうさ。それに君も盗み聞きは得意だろう?」
曇天の夜空を見上げて嘯くクレインに、ナベリウスは欠伸で応える。
「もちろん私が最優先しているのはクレス君だがね。最近はその次に、リアラを王として育ててみたいとも思っているんだ。相手が救いを必要としているとき、たとえ本人に拒まれようと手を差し伸べる王なんて良いじゃないか。いろいろと危うい道だけどね」
それだけ言って、クレインは本当に月を眺めているかのように夜空に向けた目を細めた。
さて、と言って振り返る。
「そろそろ眠くなってきたし……と。君は本当に素早いな」
言葉の途中で苦笑を零すクレイン。
テラスはいつの間にか無人となっていた。




