何時か、また
「じゃあジェスに仕込まれてた魔法も解けたことだし、そろそろ出発するか」
「道のりを考えると……そうだな、セポルの事件を解決するまでは私も一緒にいよう」
「そうか、助かる」
その時、ぐぅ、という音が鳴った。
自然と発生源に視線が集まった先では、イポスが照れたように曖昧な笑みを浮かべていた。
「そういえば、ご飯まだでしたね」
「店はこの騒ぎじゃ厳しいだろうしな。食材があるなら私が作ろう」
「……野菜しかない」
「じゃあ先に一っ走り狩って来る。街の南、適当なところで落ち合おう」
言うが早いか駆け出したクレスを、残された面々は苦笑で見送った。
「ところで、イポスさんはこれからどうするんですか?」
出発の身支度をしながらリアラが尋ねると、イポスは葛藤するような沈黙を挟んで口を開いた。
「……とりあえず、僕は残って少しでも復興を手伝うつもりです。僕も一つ聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」
「もちろん、遠慮なくどうぞ」
「リアラさんたちは、何のために旅をしてるんですか?」
一見して何の変哲も無い問いに、リアラは少し考える素振りを見せた。
「多分、イポスさんには言っても大丈夫だと思うんですけど……どうでしょう?」
リアラの迷いとは対照的に、ティルナたちはあっさりと頷いた。
「……別に。好きにすれば良いと思う」
「リアラが信用できると思うなら、良いんじゃないか?」
「まー大丈夫れしょ~」
「多分クレスさんなら止めないと思います」
その反応にリアラは小さく息を吸い込むと、はっきり告げた。
「私は自由騎士団の方々にも助けて頂いて、ルナリアの跡地に国を興そうとしています。だから私の旅の目的は、そのための情報収集と人材集めです」
「……!」
流石に驚いたらしいイポスは目を丸くするが、疑っていないのは感情を視るまでもなく明らかだった。
出会ってから一番と言っても過言ではないレベルの逡巡の後、イポスは背負っていた袋から水晶を取り出した。
「あ、あの、登録しても良いですか! 力が必要なら何時でも駆けつけます!」
「良いんですか?」
「ちぇーい!」
「「あっ!」」
リアラが聞き返した時、横から入り込んだナベリウスが二人の水晶の登録を先に済ませる。
「どーせ登録するなら早くしないと、クレっさんが待ちくたびれるれすよ~」
そう言ってナベリウスは身を翻し、一足先に外へ出ていった。
「えっと、それではイポスさん……お世話になりました。強くなって、次こそ私が守ってみせます」
「その、ありがとうございます。じゃあ……何時か、また」
遠ざかるイポスの背を見送ると、リアラたちも診療所を後にした。
という訳で、イポス離脱です。




