謎の声
「リアラさん、どうかしました?」
「えっと……なんだか、ジェス君に違和感があるような? 詳しくは分からないんですけど」
「え?」
リアラの指摘にきょとんとするジェスに、クレスとクレインは素早く陰陽魔法で解析を掛ける。
「うーん……?」
「特に手応えは無ぇな……」
「気のせい、ですかね?」
「どうだろうな。もう少し手はあるんだが、まあ先に話を聞いておこう」
「わ、分かりました」
クレスに促されてジェスは話し始める。
「あの魔法陣で飛ばされた先は街の北の路地裏でした。遠目にも大きなゴーレムが見えたので急いで向かおうとしたんですが、仮面たちに襲われて……正直、クレスさんに貰った炎人のペンダントが無かったら危なかったです」
「そうか、役に立ったなら良かった。後で少し貸してくれ、メンテついでに強化しとく」
「ありがとうございます。それで、どうにか倒すことは出来たんですが……ちょっと傷を負いすぎてしまって。情けないです」
「まあ、お前はまだこれからだしな。普通はそんなもんだろ」
悔しそうなジェスに向かい、クレスはおもむろに異空間から取り出した剣を突きつけた。
「く、クレスさん?」
「あらゆる魔法・異能を払うって『滅呪剣』ほどの物じゃねぇが、魔法を斬れる秘宝の『燃える枝』って剣だ。軽く斬ってみる」
「待……っ、心の準備が――」
「大丈夫、一瞬だ!」
クレスの一閃は、反射的に身を竦ませたジェスの薄皮一枚を正確に斬り裂いた。
「――手応えありだ。さーて解析っと……」
改めて解析を掛けたクレスは驚いたように片眉を上げた。
「これは気づかねぇはずだ、隠蔽用の魔法掛け過ぎだろ」
『――おや、バレてしまいましたか』
ジェスに仕込んだ魔法が起動したのだろう。
誰の者でもない声が部屋に響いた。
「ってか誰だよお前。俺らの何を探るつもりだった?」
『はてさて、申し訳ありませんが答えられませんね』
「じゃあ何の用で出しゃばって来やがった。語りてぇことがあんなら聞いてやるぞ?」
『そうですね――気付かれるのは想定外だったので、私としても困っているのですが』
「用が無いならコイツに掛かった魔法は全部解くぞ」
『ご容赦ください、と言っても無駄でしょうねぇ。では一言だけ――「『円卓』にご用心」』
「『円卓』? どういう意味だ?」
『彼らが本格的に動くのが何時なのか、それは私にも分からない。はてさて、それは明日か来年か?』
巫山戯たような言葉を最後に通信は途切れたようだった。
不愉快そうな表情を引っ込めると、クレスは改めて燃える枝を振りかぶる。
「『鋭嵐閃』」
「う、うわ――!」
一瞬で無数の剣閃が走り、ジェスに掛かっていた魔法は全て斬り裂かれた。
クレスが鞘に収めた剣を異空間に放り込むと同時、一歩間違えば細切れになっていたジェスが腰を抜かしてへたり込んだ。
ちなみにアジトで共に行動していたとき気付けなかったのは、魂刈り武器の気配に誤魔化されてたからです。




