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その拳にご注意を  作者: ろうろう
94/136

92話 クラーケン

25層に来た。

そして出会った魔物を見て、修は黙った。


「……」


『あ、これは無理だわ』と言う目をしていた。


「ブドゥーです」


ポーラ先生が教えてくれた。


----------------------------


LV.25

ブドゥー


----------------------------


以前ポーラが教えてくれた通りの外見だった。

巨峰どころではない巨大な葡萄があった。

無数にある葡萄の実の間から、なんかおっさんの足が突き出て、ぺたぺたと地面を歩いている。

止めに、その実の全てに眼球があった。

子供が見たら、三日は一人でおしっこに行けなくなること間違いなしだ。


食べたい等と、欠片も思わない。


「ファイアランス!!」


炎の槍を放ってみた。

一つの実に突き刺さり、紫色の液体を噴き出した。

更に、そこから燃え広がった。


「毒です!お気を付け下さい!」


ポーラが叫んで来た。

あの液体は毒なのだろう。

もう見るからにどろっとしていて、ヤバい雰囲気丸出しだ。


「うん…」


修は状態異常とか効かない。

しかしそれでも、あんなもん触りたくはない。

地面に落ちたのが、シュウシュウと音を立ててまでいる。

酸じゃないのか?


修がそう考えているうちに、ブドゥーに着火した炎が、次々と侵食を広げる。

炎に焙られた実が、ぶぢゅっ!ぼんっ!と破裂して液体を振りまいて行く。

すごいグロイ展開だった。


「うわぁ…」


修が思わず呻いた。

燃えた毒の匂いか、周囲にはツンとした刺激臭が漂ってきた。


「ぅ…」


匂いには敏感なポーラが鼻を押さえた。

毒を喰らったのかと心配したが、そういう訳でもないそうだ。

ただただ、この臭いに苦しんでいた。

ちなみにカファは平気な顔をしていた。




ブドゥーに魔法を使うことは止めた。

衝撃を与えると、実が破裂して毒を撒き散らすのだ。

何と言う神風戦法。

実際、それくらいしかしてこないそうだ。

よって、一つ一つ実を斬りおとしていくのが通常のセオリーらしい。

正面は盾役のカファが受け持てば、後はひたすらポーラが斬りおとしていく。

メテオドラゴンの剣だと燃えてしまい、破裂してしまうので、ミラードラゴンの剣だけだ。


ボス・ブドゥーも変わらなかった。

大きくなり、実の数が増え、時々不規則に動く程度だ。

ポーラとカファの敵ではなかった。

そんな訳で、25層は楽々と踏破した。


ちなみに、ブドゥーはポコナの実を落とした。

が、アレと似たものをすぐに食べたくはならないので、全て売った。




その日の夜。

修はまた不思議空間で意識を覚醒させた。

何だか久々な気がする。


「お久しぶりですね。修さん」


神が居た。

神々しい全裸だった。

カファみたいに、性別の無い体が修の視線を迎えた。

神は不思議空間で、シャワーを浴びていた。


何かむやみやたらに神々しい植物が伸び、まさしくシャワーの様にお湯を流していたのだ。

弾け飛ぶ飛沫すらも美しい。

これぞ、ゴッドシャワー。


「ちょ、それ俺も!」


修も懐かしきシャワーの誘惑に叫んだ、

神が突然シャワーを浴びていても、突っ込み話だ。


「ふふ。分かっていますとも」


神がゴッドスマイルを浮かべると、修の足元からも、にょきにょきと植物が伸びて来た。


「うおおおおお!久しぶりだー!!」


修は躊躇いも無く裸になり、喜んで浴びた。

神はダチだと思っているのだ。


神は過労死しそうになりながらも修の削った空間を治した後、恍惚とした顔をして温泉に浸かる修を見て自分も、と言う欲望にかられたのだ。


そこから神は、ご機嫌な様子でゴッドジャグジー、ゴッドサウナを作り出した。

何でもゴッドをつければいいと思っているのではないだろうか。

しかし修は、喜んでその恩恵に預かった。

グーパンだけでは、手に入らないものもあるのだ。


ゴッドサウナで二人並んで汗を流しながら、雑談をしていた。

神は、汗すらもキラキラと輝いて神々しかったことだけは追記しておく。


「修さんの世界の話を聞かせて下さいよ」


だいぶ詳しいくせに、そう聞いた。

神が知りたいのは、修が出会った不思議生物たちの事だったのだ。


「う~ん、あれは16歳の時…」


修は過去を思い出した。




その日、修は嵐の中、海の上を走っていた。

走っているだけではない。

その修を追う様に、巨大な背びれが着いて来ていた。

修はその時、またしてもメガロドン的な何かと戦っていた。


風と雨と雷が降り注ぐ中、二人の戦いは続いた。

とはいっても、修は余裕の表情だ。

もはやメガロドン的な何かなど、敵ではない。

それだけの実力差はあった。

メガロドン的な何かも、修との力の差は理解していた。

だというのに、王者の誇りか、逃げ出すことなく、果敢に修に襲い掛かっていた。


その心意気や良し、せめて痛みを知らずに安らかに死なせようと決意した時。

突如、海の底から巨大な何かが突き出て来た。


「!?」


それはイカの足の様にも見えた。

しかしでかい。

でかすぎる。

イカの足の一本が、メガロドン的な何かをあっさりと捕えると、海の底へと引きずり込んだ。

同時に修にも巻き付いたが、


「ぬん!!」


修が全身に力を込め、その足を引き千切って脱出した。

そして海面に着地する。


修は足元を見た。

荒れ狂う海の底に、巨大な巨大な影があった。


「…!!」


修は大きく息を吸い込むと、海面に潜った。


そこに居たのは、巨大な巨大なイカだった。

既にメガロドン的な何かの体の半分が食いちぎられている。

ばかりか、タンカーすらも足で捕えている。

それほどの大きさのイカだった。


(!!)


修は、男と男の勝負に水を差したそのイカを許すことは出来なかった。

海の中を走り、クラーケンに殴り掛かった。

しかし、幾ら修とはいえども水の中。

地上ほどの速度は出なかった。


逆に地の利があるイカは、先ほど修に足を一本引き千切られたこともあり、修から距離を取る。

絶妙な距離を保ちつつ、足で持ったタンカーや、海底から引っこ抜いた岩石で修の体を叩きに来た。

決して、足が捕まる愚は犯さない。

修は悉くそれを撃ち落とす。


二人は、どんどんと深くまで潜って行く。

イカが誘い込んでいるのだ。


息はこのままでも半日は持つが、このままでは埒が明かない。

そう思った修は、必殺技を使うことを決意した。

幸いにしてここは海の奥。

他に被害は起きるまい。


修は両手を大きく広げた。

そして猛烈な速度で手を合わせ始めた。

正確には、手は重ね合わせてはいない。

間に空間は開けてある。

それを、様々な角度から。

猛烈な速度で行い続けた。

そして最後に修の手が重ねられた時、修の手の中には圧縮され尽くした海水があった。

修はそれを解き放った。


巨大な水の塊を手の平サイズに圧縮し、それを解放することで大爆発を起こす荒業だ。

肉球など必要ないとばかりに作り出したのだ。


水深500Mで衝撃波が発生した。


海面を荒らす嵐など、比べ物にならない。

衝撃波が修とクラーケンを襲った。

しかし、修はその衝撃破をあっさりと耐えきった。

そしてクラーケンを見る。

クラーケンは、全身に衝撃波を浴びて動きを止めていた。

修は全身が痺れているクラーケンに、水中を駆けて近寄り、自分の体よりも何倍もでかい足を掴んだ。


(ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!)


修は水中でジャイアントスイングを繰り出した。

自分よりも、何千、何万倍も重いはずのイカを振り回す。

あっという間に渦巻きが出来た。

渦巻きは刻一刻と規模を増していく。

そして、修の体が海から出た時。


「ぜいっ!!!」


全力で上空に投擲した。

イカは、空の彼方にぶっ飛んだ。

修は更に、空中を駆けて追撃に走った。

空中で辛うじて体の自由を取り戻したイカは、死に物狂いで修を迎え撃った。

その足の全て砕き、修がイカの胴体に肉薄した。


「セリャアアァァッ!!!」


渾身のアッパーカットがイカに突き刺さった。

イカの巨体が跡形も残さず弾け飛び、天が割れた。


射し込む陽を感じながら、修が海に向けて落下した。

そんな中、修は冥福した。

敵は討ったぞ、メガロドンよ。




「…ってことがあったねぇ」


話しの途中でゴッドジャグジーに移動して、まったりと泡に体をくすぐられる修がのんびりと呟いた。


「……なるほど」


神は頷いた。


実は神は、新しいアニマルを作る気満々だった。

喉元過ぎれば何とやら。

全く懲りていない。

殴られるのは未来の自分で、今日の自分ではないのだ。

そんなことを考えているのだ。

神は本当に駄目な神だった。

これも頂きました。

ありがとうございます。


挿絵(By みてみん)

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