91話 ちょっきんちょっきん
頭のおかしいこと終わりです。
明日からは一日1~2回更新です
24層に来た。
ポーラさんの機嫌を損ねない敵であることを祈るばかりだ。
そしてその願いが通じたのか、24層の魔物は変態枠ではなかった。
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LV.24
アトミックシザー
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小柄な生物が、大きなハサミを持っている。
身長と同じくらいの大きさである。
だと言うのに軽々と扱い、しかもシャキーン、シャキーンと虚空でハサミを鳴らし続けている。
「……」
それを見て、修は過去に飛び立った。
あれはどこぞの森の奥にある城の中で。
バロ…なんとか城と言う場所らしい。
雨に降られた修は、雨宿りさせてもらおうと城に入った。
修は実に礼儀正しくノックもしたのだが、反応は無かった。
しかし鍵は開いている。
修はしばらく悩んだ後、中に入った。
「誰かいませんかー?」
中に入って声をあげても、返事は無い。
無人なのだろうか。
「うーん…」
まあ雨をしのげればよかったのだ。
修は適当にその辺でよこになり、翌日には城を出ようとした。
ー…ン、…キーン、シャキーン、シャキーン。
寝ていた修の耳に、変な音が聞こえて来た。
それも段々近づいて来る。
「ん?」
修が目を覚まして起き上った。
しばらくすると、小柄な人がでっかいハサミを持っていた。
「あ、お邪魔してます」
修は行儀正しく頭を下げた。その瞬間、ハサミが修に突き出された。
ぶっ刺す気だ。
「ぬああああっ!?」
修は、前を見ていなかったのに普通に回避した。
それでもびっくりだ。
「ちょっ!勝手に上がったのは謝りますけどっ!!いきなり、これは!!ちょっと!」
不法侵入は怒られてしかるべきだが、ノックもしたし声もかけた。
それに玄関から先には立ち入らなかった。
ここまでされるいわれはない。
しかし、修の言葉ではそいつは止まらなかった。
「くっそー!!日本語では駄目か!!」
修は離脱した。
しかしそいつは追ってきた。
瞬間移動でもしているのかと言わんばかりに、突然襲い掛かってきたりもした。
「はやっ!?」
修が隠れていると、突然パソコンの画面が灯り、何かの文を映し出した。
「ええ!?……何て書いてあるんだ…!!」
電源の切れたファックスから、何かの文章が流れ始めた。
「あ、ちょっ!ファックス来てますよー!!」
家具が浮遊し、修に向けて取んで来た。
「セイッ!!」
常人であればSAN値がゴリゴリと削りそうな現象が起きても、修は物ともしていない。
そいつと出会うたびに、ジェスチャーで無罪を主張し続けた。
が、全く通じない。
と言うか通じても問答無用なのだが。
遂に修がキレた。
「こんの、いい加減にしろっての!!」
相変わらずハサミを突き刺そうとして来るそいつに、叫び、修が駆けた。
「ダッシャラァァアア!!」
ドロップキックでハサミごと顔面を砕いてやった。
それだけで勘弁してやろうと思っていたのに、そいつは追ってきた。
丈夫過ぎる。
余りのしつこさに、お腹の減ってカリカリしていた修は奥義を使ってしまった。
「ぬぅんっ!!!」
ズシーンと震脚で世界を震えさせ、色々とヤバい何かが籠った拳を顔面に浴びせ掛けてやった。
シ○ーマンは、世界から放逐された。
修が思い出に浸っている間に、ポーラ達が戦っていた。
物思いにふけっているのを察したのだろう。
そして帰って来た時には、アトミックシザーは既に死んでいた。
「あ、お疲れ様」
修は慌てて二人をねぎらった。
「はい!」
ポーラは喜び。
「……」
カファはいつも通りだった。
ちなみにドロップは、『ハサミ』だった。
既製品バンザイ。
修も燃やしてみたが、燃えながら襲い掛かって来た。
最近少しずつこういう相手が増えてきている。
ポーラ達の戦い方も見てみたが、実に安定していた。
まともに戦うのを見るのは久々だったが、役割分けはしっかりされている。
カファは億劫そうにしながらも、ハサミ攻撃をしっかりと受け止めている。
受けるだけでもなく、弾いたり体当たりしたりしている。
更には時々足払いまで仕掛けている。
防ぎながらも、相手の体勢を崩すことを考えているのだろう。
あのサボリ癖のあるカファを、一体どうやって教え込んだのだろうか。
修はとても気になった。
ポーラさんは火の恐怖と共に教え込んだのだが。
後はポーラが縦横無尽に動き回り、カファが作り出した隙を狙う。
隙が無くても作り出す。
超攻撃的だ。
そして危ういときの避難先はカファの後ろ。
まだポーラ一人でも行けるだろうが、今のうちから動き方に慣れておくのは良いことだろう。
そしてボスに辿り着いた。
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LV.24
ボス・アトミックシザー
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手足がひょろ長くなっていた。
それでも器用にハサミをシャキシャキ鳴らしているのが不思議だ。
そのハサミ攻撃を、カファは堅実に防いでいく。
実に平気な顔だ。
ポーラがザックザクと斬っていくが、アトミックシザーは燃えながらも攻撃してくる。
それでも大ダメージを与えれているようで、すぐに新しい行動をしてきた。
アトミックシザーのハサミとカファの大盾が、ガギーン!と金属音を鳴らす。
カファはそれを確認してから、アトミックシザーを押し込もうとした。
その為に一歩踏み出そうとした瞬間、もう一撃が盾に激突した。
「……ぅ」
カファが揺れた。
見ると、アトミックシザーはハサミを分離していたのだ。
ハサミの攻撃は大振りだと思わせておいての連撃だ。
中々賢い。
そして体勢を僅かに崩したカファに、足払いを仕掛けて来た。
いや、足払いではない。
カニバサミだ。
「……わ」
カファはそれを慌てて避けた。
その瞬間、アトミックシザーの瞳がキラリと輝いた。
低い体勢から、一気に飛び上がった。
そしてその細い足を延ばして、足でカファの顔を挟みこんだ。
「こ、これは!?」
修が唸った。
アトミックシザーはそのまま、バック宙の要領で回転して、カファの体をすっぽ抜こうとした。
すっぽ抜けたのは、カファの兜だけだった。
アトミックシザーはそのまま、カファの兜にフランケンシュタイナーを決めた。
「やるな…!!」
まさか混戦でこんな大技を繰り出すとは!
修は思わず感嘆してしまった。
しかし、そんな大技の隙を見過ごすポーラさんではない。
「ふっ!」
あっという間に肉薄し、両手の剣を叩き付ける。
アトミックシザーはそれを受けながらも、再び跳んだ。
そして今度はポーラの頭を挟みこもうとする。
「はぁっ!!」
ポーラも跳んだ。
目を剥くアトミックシザーの更に上空に飛び、前方回転しながら、踵をアトミックシザーの股間に叩き込んだ。
直撃だった。
何か、がちょっ、とかいう音がした。
「うぁっ!!」
修は目を背けた。
思わず股間を押さえて腰を引いてしまう。
「ーーーーーーッ!!!!!」
アトミックシザーは、ポーラの踵を股間に埋め込んだまま、地面に叩き付けられた。
ポーラの全体重と勢いが、全てアトミックシザーの股間に叩き込まれたのだ。
潰され、踏みにじられたのと同意だ。
幾らなんでもえぐすぎる。
アトミックシザーは、名前の由来であるハサミすらも取り落とし、股間を押さえて丸くなった。
いつの時もどんな時も金的は絶対なのだ。
修はその瞬間の顔を見てしまった。
『やられた!許してくれ!』と言う顔をしていた。
『やられた!許さんッ!』と言う顔をしていないので、もはや勝負ありだ。
アトミックシザーはポーラに止めを刺された。
ポーラさんはまた一つ恐ろしい技を会得してしまった。
修は、ポーラさんの『やりましたっ!!』と言う笑顔を見て、ボールがキュッと縮こまった。
また書き溜めしないと




