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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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07話 領主とお金と

翌日は、朝食を取るとすぐに迷宮に潜った。

ポーラも当然ついて来た。

取りあえず、しばらくは一層で戦ってみることにした。


「ファイアーシュート!」


「サンダーシュート!」


「アースシュート!」


「アクアシュート!」


「セイッ!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


出会ったブルーラビットを、悉く虐殺した。




「ファイアーシュート!・・・・あれ」


魔法を50回ほどぶっ放し、51回目を放とうとしたが、出なかった。


「・・・・魔力切れでは?」


ポーラが呟いた。

そういうこともあるのか、と修は納得した。


そこからは、修が2、ポーラ1の割合で接近戦をすることになった。

修は当然一撃で仕留めたが、ポーラもひらひらと動いて攻撃を躱し、隙を見ては攻撃を叩き込んでいる。

一層は余裕そうだった。

昼前に切り上げて帰った。




ギルドに向かいながら、ふらふらと露店を巡っていると、珍しい物ばかりだった。

色々とポーラに聞いてみた。


「これは食材です」「これも食材です」「食材です」


食材が多かった。

また、特に不思議に思わなかったが、文字も普通に理解できた。

一目見たら、意味不明の文字だったが、何故かすぐに理解できた。

神様の小粋な計らいなのだろうか、と納得した。




ウサギの皮を換金しにギルドに向かうと、以前の受付が居た。

何やら偉そうな人と話している。

受付がこちらを見た。


「あ」


慌ててぱたぱたと駆け寄って来た。


「あの、以前賞金首を倒された方ですよね?」


「はい」


修の元に、偉そうな人が歩み寄って来た。

さらさらの金髪に線の細い体。

高価そうな服に身を包み、整った容姿。

まるで造形品の様だった。

特徴的なのが、長く伸びた耳。

修は鑑定を使ってみた。


----------------------------


LV.44

ファウス

森エルフ:♂

46


剣士LV.46

統治者LV.23

火魔法LV.22

水魔法LV.23

雷魔法LV.21


『貴族』

『探索者』


----------------------------


漫画で見た通りエルフだった。

46歳なのに、まだ20代に見える。

と言うか森エルフって何?

他にエルフっているの?修はそう思った。


ファウスは気安げに修に語り掛けて来た。


「まだ若いのに大したものだな」


修は取りあえず頭を下げておいた。


「ありがとうございます」


ファウスは感心した様な顔で修をジロジロと見つめて来る。


「君は探索者か?ああ失礼、私はファウスと言う。この街の領主だ」


修も頭を下げて名乗った。


「ご丁寧にどうも。シュウです。探索者です」


殊勝な態度の修に、ファウスは微笑んだ。


「奴らには困っていてね。下手をすると騎士団員でも敗れる程の猛者だったのだ。君には感謝している」


あれはそんなに強かったらしい。

納得の値段だったのだろう。


「はい。恐縮です」


「うむ。これからも頑張ってくれたまえ」


「はい。ありがとうございます」


修の肩を気安げに叩いて、ファウスは去って行った。


姿が見えなくなると、修はこっそりポーラに聞いた。


「・・・・・・森エルフ?」


ポーラも慣れて来たのだろう。

声を潜めて囁いて来た。


「はい。森エルフの方々はとてもお強いです。ファウス様も、とてもお強いとお聞きします」


修は感心した顔で頷いた。


「なるほど」


そして、手持無沙汰になっている受付にウサギの皮を渡した。


「じゃあ、換金お願いします」


「・・・・はい」




その日の夜も、カマンと夕食を共にした。

この日の食事も謎の食材だったが、美味しかった。


「ファウス様にお会いになられたとか?」


一息ついた頃に、カマンが話しかけて来た。


「あ、はい」


するとカマンはどこか自慢げに笑った。


「将来有望なシュウさんを確認されに来たのでしょう。もしかしますと、何か依頼があるかもしれませんな」


自分が真っ先にパイプを繋げた、と言う自負があったのだろう。

修は苦笑して返した。


「その時は頑張ります」


カマンは少し笑った後、話題を変えて来た。


「ははは。・・・それはそうと、家を探しました。明日は予定がおありですか?なければ案内させますが」


「あ、お願いします」


修は素直に頭を下げた。





翌朝、使用人の一人に連れられて街を歩いていた。

迷宮でもないのに、ポーラは普通について来た。


使用人は、一つ一つの家を丁寧に修に説明していった。

さほど高価な造りではなかったが、多少古くても、頑丈で広い家ばかりだった。

修が探索者であることを考慮して、それに見合った家を探してくれたのだろう。

ちなみに、ポーラに聞いてみると。


「ご主人様が気に入るのがよろしいかと」


としか返事は帰ってこなかった。


一通り見て回った結果、迷宮からは多少離れるが、一番大きくて頑丈な家に決めた。

と言っても、まだ家具は無いが。

朱金貨3枚丁度だそうだ。

早速購入し、鍵を受け取った。


次は家具を見て回ることにした。

そう思ったが、ポーラに気になることを聞いた。


「えーっと、家に、来るの?」


「・・・ご主人様が宜しければ」


着いてきたいらしい。

家具を二人分買うことにした。


ちなみに家具の購入で散々もめた。

修がベッドを買うのは当然として、ポーラの分を買おうとしたら、ポーラがびっくりした顔をしたのだ。


「床で大丈夫です」「物置を使わさせて頂ければ」「布一枚あれば」等と言うポーラを何とか説得し、二人分購入した。

ポーラはしきりに恐縮していたが、奴隷には普通ベッドを与えないのだろう。

クローゼットも二人分買おうとすると、


「そんなに服を持っておりませんから」


とやんわり断ろうとしてきた。


「じゃあ服も買わないとね」


というと綺麗な顔から目が落ちそうなほどに見開いていた。


「奴隷などの為にそんな必要は」「いえ、ですが・・・」


等と抵抗を続けるポーラを説き伏せ、ポーラの服を買った。

自分の分と合わせて購入するためだったが、ポーラは新品であることにも目を回しかけていた。

服屋に入ると流石に覚悟を決めたようで、睨み付ける様にして少しでも良い服をと漁っていた。

ついでに下着も購入させた。

流石に恥ずかしそうにしていたが、一枚は大事なところに穴が開いているひらひらの布きれを買っていた。

ポーラが料理もできると言うので、調理器具も一式買い揃えた。

服も含めて、明日纏めて家に運んでもらう様にした。


結局、朱金貨が1枚消えた。

それでもまだ余裕はある。

一層でブルーラビットを狩り続けていても、普通の生活が出来るくらいには稼げるのだ。

迷宮様々だ。


帰宅する頃には、ポーラは色々なやる気に満ち溢れていた。


「このご恩は必ず返します」


と、鼻息を荒く言っていた。




その日は、カマンの屋敷に世話になった。

家を購入したことには嬉しそうにしていたが、しきりに残念がっていた。

出来るだけ、カマンの商店で必要品を購入することを約束しておいた。

ポーラを貰うと言うと、カマンは実に嬉しそうに笑っていた。

つながりを維持しておきたかったのだろう。

ポーラもこっそり嬉しそうにしていた。

すました顔をしていたが、尻尾がぴくぴく動いていた。


そして昨日頑張った成果だろうか。

何気にポーラのレベルが上がっていた。


----------------------------


LV.2

ポーラ

獣人:♀

17


剣士LV.3


『探索者』

『奴隷』



カンザキ シュウ


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