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その拳にご注意を  作者: ろうろう
85/136

83話 忘れていた

「あ」


迷宮に向かうため、装備を着込んでいる最中。

唐突に修が声を放った。


「どうされました?」


俊敏に反応したポーラが首を傾げた。

カファは安心の無反応だ。


修は自分のカードを見ていた。


----------------------------


LV.65

カンザキ シュウ

人間:♂

19


拳士LV.■■

経験値獲得アップLV.10

攻撃魔法LV.41

回復魔法LV.41


鑑定

状態異常無効

称号変更


『竜殺し』

『探索者』

『拳を極めし者』

『神を殴りし者』

『ご主人様』


奴隷


カファ


----------------------------


昨日の朝には年齢が18だったのに、今朝は19になっている。

今日が誕生日らしいのだ。

カレンダーが無いので、すっかり忘却していた。


「19歳になってる」


修はあっさりと、誕生日を迎えたことを暴露した。


「!?!?!?!?!」


その瞬間のポーラの顔と言ったら。

蒼白になり、『ガーン!!』とショックを受けているのがまるわかりの顔をした。


「……た、誕生日、きょ、今日、だったのですか……?」


ポーラは震える声で修に聞いて来た。

「嘘だと言ってよバー○ィ」っていう雰囲気だ。

が、修はあっさりと頷いた。


「うん」


その瞬間、ポーラは一瞬の早業で鎧を脱ぎ捨て、裏返った絶叫をあげて駆け出して行った。


「今日は迷宮はお休みしますッ!!」


実に素晴らしい速度だった。

ポーラはそのまま外にすっ飛んで行った。

腰に剣はさしてあったので、危険は無いだろうが。


「「……」」


修とカファは無言でポーラの居なくなった空間を眺めていた。


「今日はお休みにしようか」


やがて修が切り出した。


「……はぁ」


カファは気の無い返事を返して、のそのそと防具を脱ぎ始めた。

が、平穏な一日を手に入れて、心の中ではガッツポーズだ。




ポーラは走っていた。

恐ろしい形相で走っていた。

一生の不覚であった。

まさかシュウ様のお誕生日を見過ごしていしまうとは!!

いずれ聞こうと、甘い考えで居たのが悪かった。

シュウとおそろいのバングルを握りしめながら、ポーラは考える。

しかし不幸中の幸いにも、今日ならばまだ時間はある。

サプライズ的なものは出来ないが、腕によりをかけ、人生最高傑作を作り上げて見せよう!!

爆走しながら、ポーラはそう決意した。


ポーラは、食材を買いまくった。それはもうたらふく買った。

一人では持って帰れず、一度帰ってカファを連行し、二人でもやっと持てるくらいの量だった。

めんどくさそうにしていたカファも、ポーラの形相を見ると、懸命にも口を紡ぎ、キビキビと動いていた。

誰しも死にたくは無いのだ。


ポーラの帰宅から、厨房に音が鳴りつづけた。

カファは厨房にまでも連れ込まれ、延々と鍋を掻き回している。

実に機敏に動いている。

普段からこれくらい動けない物だろうか。


しかしそのおかげか、すぐに良い匂いも漂い始めた。

その匂いに釣られて、街灯の光に群がる蝶の様に、修がふらふらと引き寄せられて行った。

が、厨房に入る直前に、ポーラが飛び出してきた。



「シュウ様は来てはいけませんっ!!」


鬼気迫る表情で叩き出された。

ポーラの反抗期だとショックを受けた修は、すきっ腹を抱えて、部屋でシクシクとすすり泣いた。

弱い(確信)




そしてその日の夜。


「シュウ様!遅れてしまいましたが、お誕生日おめでとうございます!!」


テーブルの上に、所狭しと料理が乗っている。

というか乗せきれていない。

ポーラの笑顔に押されて、修ががっつき始めた。


「美味しい。美味しいよポーラ」


反抗期ではなかったことに安堵し、修は泣きながら食べた。

ポーラも、泣いて喜んでくれるほどなのか!と一人心の中でガッツポーズしていた。

カファは巻き込まれたくないので、料理が終わったら早々に自室に逃げた。

実に懸命なことだ。


ポーラの作った恐ろしい量の食事は、全て食い尽くされた。

最初はニコニコして見ているだけだったポーラに、修も勧めたことでその速度は加速した。

とはいっても、ポーラは最初は遠慮して食べようとしなかった。

最後に、余り物を料理すればいいと考えていたのだ。

しかし、


「ポーラ、あーん」


修がスプーンを伸ばすと。


「……あーん」


鳥のヒナの様に食いついて来た。

実にちょろい。

後はなし崩しだった。




そしてその日の夜。

修の部屋にポーラが現れる。

別にこれは毎日の事なので、問題ない。

が、ポーラは全身にリボンを巻いていた!


「プ、プレゼントは、わ、私ですっ!!」


実に古典的だ。

が、いつものエロ衣装もさることながら、普段服として使用しないリボンを使用し、エロティックを醸し出すその姿は素晴らしい物がある。

特に評価したいのが、明らかに大きすぎて隠しれ来ていないHA・MI・TI・TIだ。

そして、家では毎日なさっているのに、毎回毎回恥じらっている点もVery Good!!

しかもそれが余裕をなくしていく様、突き抜けた時とのギャップがExcellent!!


骨董品を鑑定するおっさんの瞳でジロジロとポーラの全身を眺める。

ソムリエ・修の本領発揮だ。

ポーラは恥ずかしそうに身をよじりながらも、決して隠そうとはしなかった。

その心意気や良し!お相手仕ろう!!


そんな訳で、プレゼントは有難く頂いた。

結局、ポーラにもプレゼントが行き渡った様なものだったが。




翌日には、ちゃんと迷宮に潜った。

アフロネズミと戦っていたが、アフロから針が伸びて来た。

カツラは針を隠すためにつけているのだろう。


チーズを集めながら探索していると、ボスを発見した。

カファはまだ少々辛いかもしれないが、ポーラもいるし装備もアレなので大丈夫だろう。

危なくなればいつでも加勢できるように修は決意して、見守ることにした。


----------------------------


LV.22

ボス・アフロネズミ


----------------------------


ちなみにボスは、アフロの侵食が全身に及んでいた。

もはや手遅れだろう。

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