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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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80話 パワーレベリング

今日も今日とてカファの訓練に精を出す。


「さあ行きますよ!」


今日もポーラさんはやる気いっぱいだ。

昨晩は気絶していたのに、何処に元気が蓄えられているんだろうか。


「……はぁ」


カファは相変わらずである。

しかし、餌につられてほいほいとついて来る。

ポーラが与えているアレとは一体何なのだろうか。


連日、迷宮の階層を進めている。

グルードッグの突撃もジャブも無感動な顔で防いでいた。

トルプルシザーのカポエイラも普通に防ぐ。

敵はポーラがサックサクと切り殺していくので、回転が速いのだ。

レベルもトントン拍子に上がる。

神様特典の経験値UPのレベルが上がっている効果もあるのだろう。

明らかにポーラ以上の速度で、ぐんぐん成長していく。


ステッキウッドにも容易く接近し、何と盾でぶちかましをしていた。

木人は、基本的に木が嫌いなのだそうだ。

日光を遮るからとかなんとかそんな説がある。

半分同族なのに。


フットバットを見ても、カファは表情一つ変えなかった。

ソバットもあっさり受け止めていた。

こういう面では頼りになりそうだ。


そして忌々しきグリーンバニーに出会うかどうかは、修とポーラで話し合った。

あまり会いたくは無かったが、今後もああいうのが出ると考えると慣れた方が良いだろう。

戦いに行くことにした。


「……」


グリーンバニーを見ても、やっぱりカファは無感動な顔だった。

筋肉から繰り出される攻撃も、あっさりと受け止めていた。

あの筋肉は見かけ倒しだと思えるほど、あっさりだった。




そこから、毎日迷宮を進めていた。

パワーレベリングかもしれない。

順調にレベルの上がって行くカファは、何とアクィナスの巨体の体当たりすら耐えた。

流石に多少押されていたが、足を地面にめり込ませながらも受け止めた。


ハイドワームには、ポーラは着いてこなかった。

代わりに修が戦ったが、ポーラ以上の速度で殲滅してく。

地下に居ようがお構いなしで打ち上げていた。


途中、カファがトイレに行った。

ハイドワームが出て来た。


「!?」


しかしハイドワームは愕然とした。

カファは、確かに見た目は胸の全くない女だ。

が、男でも女でもない生き物の排泄を見て、ショックを受けていた。

変態失格である。


「……」


カファは性別が無く、見られても全く何も思わない。

出すのも、ほぼ真水だ。

教育されているから、人前でしないだけである。

カファは一体の変態の心を折りながらも、特に反応は返さなかった。


そして、21層に辿り着いた。


----------------------------


LV.31

カファ

木人:-

16


盾士LV.31


『奴隷』



カンザキ シュウ


----------------------------


強化が早いにもほどがある。

ここからは普通に探索だ。




とはいっても、既にシノビキャットはポーラの敵ではない。

今まで通り、カファが受けれるかの確認だ。


まずシノビキャットにカファが駆け寄る。

シノビキャットは、カファに礼をする。

その瞬間、ポーラがカファの影から飛び出して、シノビキャットの脳天に剣を叩き込んだ。

しかも左右の剣を。

シノビキャットもびっくりだ。

当然の如く、即死した。


「……」


あまりの無慈悲さに、修が沈痛な顔を浮かべたほどだ。

カファの相手をすると考えていたシノビキャットが不憫で仕方がない。

しかし、それだけでは訓練にもならない。


「カファも受けてみましょう」


ポーラがそう言った。


「……はぁ」


カファは相変わらず、やる気のない顔でぼそりと呟いた。




修は、カファがシノビキャットの早い動きについて行けるかが不安だった。


「お、お、おお」


なんと、着いて行っている。

縦横無尽に襲い掛かって来るシノビキャットに対し、大盾を振り回して防ぎまくっている。

無表情ではなく、ちょっと慌てた顔になっていたが。


「……」


カファが、ポーラに向けてちらりと視線を飛ばした。

「早く助けてほしい」と言う意思が込められているのが、修にも良く分かった。


「もう少し練習しましょう」


ポーラ教官は無慈悲だった。

直撃しても、ミスリルの防具のおかげで怪我はしないだろう。

唯一危ないであろう顔も、流石に重点的に守っている。

しばらく見守ることにした。


「……」


カファが段々汗まみれになって来た。

シノビキャットの動きも鈍くなってきていた。


このままでは埒があかないと判断したのだろうか、シノビキャットは三角蹴りで壁を蹴り、ポーラに飛びかかった。


「はっ!」


正面から撃ち落していた。

圧倒的無慈悲。


しばらく21層で戦い、明日にボスに挑むことにした。

カファも流石に疲れたようだが、帰宅後の訓練はある。

訓練前から遠い目をしていた。


そしてこの日から、修対ポーラ&カファで訓練も始めた。

セオリー通り、盾を構えて接近するカファに隠れ、ポーラが後ろから隙を伺っている。

ベビゴン!

とかいう不思議な音がなり、カファが盾ごと弾き飛ばされた。

恐るべきデコピンの威力。

後ろに居たポーラは、慌てて吹っ飛んで来たカファを避けた。

そのポーラの目の前に、修が立っていた。

ベビン!


「……」


「……」


二人仲良く倒れ伏した。

が、ポーラがすぐに立ち上がり、カファを叱咤した。


「もう一度です!」


カファはのろのろと立ち上がった。


「……むりでは」


カファは、みるみるうちに腫れていくポーラの額を見ながら、正直に言った。

とっても痛そうだった。

是が非でも喰らいたくない。

盾越しで本当に良かった、とカファは心から思った。

手を抜いたらアレを貰えないので、カファも本気だったのだが。

なのに、一瞬も踏みとどまれなかった。


「それでもやるのです!さあ構えて!」


無理だ無理だ、と思いながらも、カファは構えた。

一応、今度は初めから腰を落としてみる。


「……」


そしてゆっくりと間合いを詰めて来た。

衝撃を感じたと思った瞬間、ふきとばされた。

今度は、後ろにいたポーラごと揉みくちゃになって転がった。

あ、これ無理だわ。程ほどに手を抜いておこう。

カファは冷静にそう思った。


カファは転がされまくったが、ポーラの剣で襲われるよりも随分マシだった。

頑丈なので、これくらいならあまり痛くは無い。

疲れるが、痛いよりは良い。

ポーラもデコピンを額に貰い続け、やがて沈黙した。




そして翌日、ボスに向かった。


----------------------------


LV.21

ボス・シノビキャット


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腰に二本の刀を差した、三毛猫だった。

多分雄だろう。

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