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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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79話 SIGOKI

木人、さぼり疑惑が発覚した。

しかし、これは彼らの生き様なのだ。

食べ物も必要なく、最悪水を飲んでいるだけでも生きていける。

性別も無いので、繁殖の必要も無い。

それゆえ、だらしない方向に進化し続けたのだ。

何故か知らないが、無駄に力だけはある。

実はその力も、邪魔な木を引っこ抜くためについたものだ。

鬼である。


とある探索者が、森の中で下半身を地面に埋めてぼーっとしている木人を発見したと言う伝説もあるくらいだ。

しかしそんな木人達でも、痛いのは嫌がるし、火はもっと嫌がる。

教え込めれば、ちゃんということも聞くようになるのだ。

大事なのは飴と鞭である。


迷宮から帰った後、ポーラがカファの耳元でぼそぼそと何かを呟いていた。


「私たちの言うことを聞いていれば・・・」


修には聞こえなかったが、カファの目がカッと開かれた。


「はい」


俊敏に頷きおった。

飴の効果は絶大だ。

正直な生き物である。




その日から、訓練にはカファも参加した。

修の相手をできる訳も無いので、ポーラとのだが。


「カファは防ぎ続けてください」


ポーラは、すらりとメテオドラゴンの剣を抜きながら言った。

カファの視線は、もうその剣に固定されている。

火が出るのを知ってから、警戒心MAXだったのだ。


「……」


むしろ背を向けて逃げ出したくらいだ。


「行きますよ!」


しかしその背中に、ポーラが襲い掛かった。

とはいっても、カファに防げるだろう速度に手加減して、ゆっくりだ。


「あっちゃあああああ!!!」


走り出していたカファが、慌てて振り向いて、大盾で剣を防いだ。

まだ火は出ていませんよ。

立ち止まった(強制)カファに、ポーラが次々と剣を振る。

ポーラとしても、火を飛ばさない訓練でもある。


「あっち!!あっつ!!あっぢょおおおお!!」


カファはとっても元気に叫び、必死に身を守っている。

しかし、ポーラ的には盾を潜り抜け、寸止めしようとした攻撃を防がれた。


「むっ」


手加減しているとはいえ、ちょっとだけプライドが傷つけられた。

速度が増した。


「ぎゃああああああ!!!」


カファは必死な顔と声で、攻撃を防ぎ続ける。

が、ペースアップしたポーラさんの攻撃に耐えきれるはずも無い。

ちょっとずつ、体を掠り始めた。

寸止めはどうしたのだろうか。


「も、もももえるうううううう!!!」


ポーラさんの鞭は激し過ぎる。

流石に着火はしていないが、カファは死に物狂いで盾を動かしていた。

既に、無感動な顔が懐かしい。

スパルタすぎる。

修は自分を棚に上げて、そう思った。




「今日はここまでですね」


カファがばったりと倒れ伏し、起き上がってこなくなると、ようやくポーラとカファの訓練は終わった。


「……」


カファはもう演技でも何でもなく、完全に力尽きている。

ピクリとも動こうとしない。

ポーラはうっすらと汗をかいて、良い運動をしたと言う空気を纏っている。


「じゃあ、次は俺とだね」


次は修とポーラの訓練が始まる。


「・・・はい」


ポーラがカファの隣で倒れ伏すまで、続けれられた。


----------------------------


LV.2

カファ

木人:-

16


盾士LV.4


『奴隷』



カンザキ シュウ


----------------------------


カファには、ちゃんと盾士が付いていた。

ポーラに扱かれたためか、盾の上がり方が素晴らしい。

明日は二層に向かおう。


体力を浪費した分、修とポーラは当然の如くがっつりと食事を取ったが、カファもたらふく飲んだ。

6リットルは飲んだ。

植物用の栄養剤をそのまま飲みそうな雰囲気だったが、流石に体に悪そうなので薄められていた。

水ぶくれしないか心配だが、全然普通の体型を保ったままだった。

植人の体内はどうなっているだろうか。


夜、部屋を離したおかげで、カファが苦情を言いに来ることは無かった。

修とポーラも、流石に昨晩の出来事があるので気を使っていたこともある。

ポーラは段々余裕をなくして、最後はいつも通りだったが、結局カファの乱入は無かったので大丈夫だろう。

カファはこっそり耳栓をして寝ていたのだが。




二層に向かった。

カファは恐怖のポーラ教官の言うことをしっかりと覚えており、ポピーに向かって駆けて行った。

とってもだるそうだったが。

そんなカファに、ポーラが叫んだ。


「……本気でやれば、アレをあげますよ!」


途端にカファの動きが機敏になった。

アレとは一体。

カファはポピーの体当たりを苦も無く受け止める。

装備は当然良い物ではあるが、本当に力が強い。

一匹としばらく戦わせてみたが、悉く攻撃を受け止めきり、揺るぎもしない。

頃合いを見計らったポーラが、カファの影から飛び出し、ポピーを抹殺した。

一撃で火だるまだ。

ポーラの持つメテオドラゴンの剣を見るカファの瞳が、僅かに恐怖を映していた。

あの剣で追い回される訓練をしたばかりなので、帰宅後が憂鬱で仕方ないのだろう。


安全に安全を重ねるため、この日は二層で戦い続けた。

一層ずつ上げて行けば、カファのレベルも何とかなるだろう。

カファとポーラの荷物が満載された頃に、ポーラが腹時計を頼りに呟いた。


「帰りましょうか?」


そろそろお昼の時間だ。


「……もうすこし」


なんと、カファが意味のある言葉を発した。


修とポーラは、「お、やる気じゃん」と言う目をしてカファを見た。

カファは相変わらず無表情だった。


「もうちょっとやっていこうか」


やる気があるうちに頑張った方がいいだろう。

そう判断した修が滞在を宣言した。


「分かりました」


当然、ポーラは反対するはずも無い。

しかし二人は気付かなかった。

カファは、少しでも長く迷宮に居て、僅かでも地獄の訓練の時間を減らしたいが為に言ったのだということを。




結局リュックがいっぱいになるまで戦った。

そして帰宅したが、敵はほとんどポーラが一刀で倒すのであまり時間はかからなかった。


「……」


結局立ち上がれなくなるまで、カファは扱かれた。

一度死んだふりをして普通に燃やされかけたので、演技ではない。


「……」


そして隣では、デコピンを喰らいまくったポーラが沈黙して倒れていた。

体力が無くなるまで扱くのは、修の教育方針なのだ。

修的にはここからが本番ではあるが、それは間違いであることにも最近ようやく気付いた。

何事もやり過ぎは禁物なのである。


そんな二人の横で、修は残像スクワットをし始めた。

二人が立ち上がるまで続けていたが、汗一つ流していなかった。

しばらくはカファは絡んできますが、日常では段々フェードアウトしてきますよ?

流石に戦闘では普通に出ますが。

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