74話 死を覚悟しました(byポーラ)
温泉の村を出た。
多少名残惜しいが、いつまでも遊んでいる訳にはいかない。
カマンにも色々とお願いもしているのだ。
その分、多少はやる気を見せないと申し訳ない。
まず、当然の如く、変態の出没した村はスルーした。
消耗品はたっぷり準備してあるので、立ち寄る理由も無い。
しかし風の噂で、あの村では女性用パンツが特産品として有名になりつつあるらしい。
一体どう間違えてしまったのだろうか。
帰り道の途中、平原を歩いている時に。
お空が怪しくなってきた。
このままでは雨に降られてしまうだろう。
準備もあるので問題が無いと言えば無いが、降られないのが一番だ。
しかし、雨をしのげるだろう森までは遠い。
修はおもむろに、背負っていた荷物を降ろし、前につけた。
抱っこの形だ。
そしてポーラに背を向けて屈んだ。
「よし、ポーラ。俺の背中に乗るんだ!」
「は、はい・・・」
ポーラが恐縮しながらも、修の背中に乗った。
おっぱいが背中に押し付けられる。
二人分の荷物と、ポーラの重量。
その二つを背負っても、修は全く苦にせず立ち上がった。
しかし、ポーラは恐縮しているのか、修の腕に回した腕の力も弱い。
「ポーラ、もっとしっかり捕まって!」
「は、はい!」
修の言いつけ通り、ポーラはしっかりと首にしがみ付いた。
更におっぱいが押し付けられる。
しかし修は納得しない・
「足ももっとこう・・・」
更にポーラに指示を出す。
「はい・・・」
ポーラは両足を回して、修の腹に巻き付けた。
まるで子泣き爺だ。
修は何も、おっぱいの感触を楽しみたくて背負ったわけではない。
急いで森に向かおうとしているのだ。
「よし、行くよ!」
修が力強い足取りで走り始めた。
とんでもない速度だった。
更にぐんぐんと加速していく。
馬とは比べ物にならない。
「ひゃあああああああああ~~~~~~~~~~!!!」
未知の速度に襲われたポーラの叫びが、平原に響いた。
もう恥じらいも遠慮も無い。
振り落されたら死ぬ。
そう直感したポーラは、必死で修にしがみ付き続けた。
「到着!!」
ズザザァァァ!!と地面を削って、修がようやく停止した。
平原から見えない距離にあったはずの森に、僅かな時間で到達したのだ。
だというのに、修は汗一つ流していない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
代わりにポーラが汗まみれだった。
手足が修にしがみ付いた状態で硬直している。
更に、暴風に晒され続けた結果、美しく整えられた髪と尻尾がぼさぼさになっていた。
しかし気にする余裕すらも無く、虫の息といった雰囲気だ。
かなりの時間をかけて、ポーラは修から離れた。
離れると同時に、尻餅をついてぜぇぜぇと荒い息を吐いていた。
「・・・ちょっと休憩しようか?」
ポーラのグロッキー具合に、流石の修も心配した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・は、い」
結局、その日はそこで夜を明かした。
ポーラのあまりの疲労具合に、その日は修が料理をしたくらいだ。
雨も降ってきたが、平原で雨に晒されるよりもずっとましだったのだけが救いだった。
ちなみにそれ以降、ポーラは雨が降ろうとも修の背中に乗って走ることは頑として拒否した。
乗るだけなら頷いたが、走ることは許されなかった。
消えぬトラウマを植え付けてしまったようだ。
そんな愉快な出来事もありながら、闘技場のある街に到着した。
何かの大会があったらしく、知らない名前の人が優勝していたそうだ。
金の球は修行の旅に出て、参加しなかったらしい。
前回の出来事もあるので、二人で顔を隠した。
こそこそと消耗品を買い揃えていたら、酔っぱらったおっさんに絡まれた。
「姉ちゃん、いいおっぱー」
赤ら顔のおっさんが、突然ポーラの胸にタッチしようとした。
「ふっ!!」
ポーラが素早く、腰から剣を鞘ごと抜いて男を殴り倒していた。
男は一撃で失神した。
後で聞いたが、その男は大会の参加者で、ある程度いいところまで行っていたらしい。
ポーラも強くなっているのだ。
無理矢理だが。
しかし、その拍子にポーラのフードが外れてしまった。
美人で強いポーラに、人が群がった。
闘技場にポーラを出させて、そのスポンサー的な役割に収まりたいらしい。
確かに、客は引き寄せることが出来るだろう。
結局また、この街を夜逃げした。
修以外の男に絡まれまくったポーラの機嫌が滅茶苦茶悪くなったのだ。
そして夜逃げをしたため、修と致せなかったのも不機嫌の原因の一つである。
撫でまくればすぐ直るが、同時にポーラさんがビーストになってしまう。
お外で致す訳にもいかないので、流石にあまり撫でれなかったのだ。
毎日少しずつ、様子を伺いながら撫でるお仕事が始まってしまった。
道中、機嫌を直すのにとても苦労した。
ラマンの街に到着した。
二人でちゃんとラマンに会いに行った。
「おお。いらっしゃい、シュウさん、ポーラさん」
ラマンは歓待してくれたが、なんだかとてもやつれていた。
ポーラをちらちらと見て、修に羨ましげな顔を向けてきている。
その理由は、修にはすぐに分かった。
ラマンの一歩後ろに控えるメイドさんが問題だ。
メイドさんと呼んでいいのだろうか。
服装は確かにメイドさんだったが、そのふりふりの服から飛び出ている手足の、逞しいこと逞しいこと。
胸も大きく盛り上がっているが、間違いなく筋肉の塊だ。
どう見ても漢女だ。
聞いたところによると、メイドさん(中年)が、ラマンのメイド兼護衛として雇ったのだそうだ。
そして四六時中側にいるのだとか。
メイドとしての仕事も完璧で、ラマンに手を出そうとした悪漢も、その逞しすぎる手足で叩き伏せたそうだ。
実に頼りになる、とメイドさん(中年)が手放しに褒めていた。
ラマンが救いを求めるような瞳で修を見て来たが、修はそっと目を逸らした。
ポーラさんは絶対にあげません。
そんなラマンでも、商売の話では食いついて来た。
目ざとくポーラの腰にぶら下がる剣を見て探りを入れて来た。
すると修はあっさりと答える。
「あのドラゴンを!!流石ですな!!・・ところで、素材とかは?」
ちらちらと、ポーラの腰にぶら下がる剣を見つけて言って来る。
今にも揉み手をせんばかりのノリだ。
と思った瞬間、本当にした。
「まあ、残ってはいますね。カマンさんにお世話になってるので、カマンさんに売ろうかなって」
修が正直に答えると、ラマンは土下座をせんばかりに縋り付いて来た。
「お願いします!!私にも売って下さい!!少しでもいいので!!」
おっさんに縋り付かれても嬉しくは無い。
「むむぅ・・・」
しかし、ただ飯を頂いた手前、断るのも無情だろう。
知らぬ仲でもないことだ。
多少は、ラマンに売ることにした。
こんな少しで良いのだろうか、と思える量だったが、ラマンは手放しに喜んだ。
「そういえば、ポーラさんが元々持っていた剣とかは・・・?」
「ははは」
本当に逞しい。
ダマスカスソードは、一応断っておいた。
軽いので、とても便利なのだ。
そんなお仕事の話もあったが、後は談笑した。
その後、ラマンの屋敷で一泊させてもらう。
旅で出来なかった分、修とポーラはたっぷりハッスルした。
やはりポーラさんは翌朝、とっても艶々していた。
そしてラマンの屋敷を後にした。
ラマンからしつこく再会を約束を求められたので、苦笑しながら了承した。
ポーラは、カマンとラマンが修の取り合いで喧嘩にならないか少し心配になった。
レビュー貰えて嬉しかったので筆が進みました。
本当に正直な人間でした。
すいません。
しかし、あまりギャグが・・・!!




