表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その拳にご注意を  作者: ろうろう
71/136

69話 滅びた

修とポーラは、罪人を見る目で村長を見た。

修の視線はもとより、ポーラの視線は絶対零度だ。


「では、あなたを吊し上げて一件落着と言うことで・・・」


修が呟くと、ポーラがうんうんと頷いた。


「ち、違います!!問題はここからなのです!!」


村長が慌てて捲し立てた。

本気で首に縄をかけられる気がしたのだ。

ちなみに修もポーラも本気だった。


「はぁ」


無駄なあがきをする犯人を見る目で修が呟いた。


「・・・儂が悪戯をした翌日から、本当に女性の下着が無くなっていったのです」


村長は、とても真面目な顔で重々しく言った。

が、修とポーラの視線は変わらなかった。


「・・・・・あなたが犯人でしょう?」


修達にとっては、更に罪を暴露された気分だった。

失われた信頼は簡単には取り戻せないのだ。


「違います!翌日にネタばらしをしようとしたのに、隠していた場所から無くなっていたのです!」


ポーラが、はん!と鼻で笑った。


「へぇ」


修が相槌を打ったが、全く信じてない声だった。

村長は冷や汗だらだらだ。


「信じてませんな?!今では若い娘のほとんどが下着を失う始末!・・・男が取った、と女が決めつけ、男が取っていない、と言い張る毎日。今ではこの村で男と女がいがみ合っておるのです・・・」


必死で村の現状を伝え、誤解を解こうとする。


「はやく自首しましょうよ」


修は、カツ丼をおごる警察官の心境で呟いた。

ポーラも、哀れな生き物を見る目で村長を見始めていた。


「儂ではありません!!奪われた数は10や20では効きません!隠すところなど何処にも無いのです!」


村長は無罪を主張し続ける。


「ほぉ」


しかし、二人の視線は変わらなかった。


「儂じゃありませんってえええええええええええ!!」


ジジイの叫びが響いた。




とりあえず、合法的にジジイを吊るせそうなので調べることにした。

下着を奪われた娘の家を訪ねる。

修が居ると良い顔をされなかったが、村の外から来た男と言うことで、ギリギリセーフと言ったところだろう。

たぶん、ポーラが居なければ追い返されていた。


そして、娘の臭いをポーラが覚え、奪われた場所から追跡を開始した。


「・・・・・ここで消えています」


途中までは追える。

が、突然匂いが消えることが分かった。

もう何人もの匂いを追ったが、全て同じ結果だった。


「・・またかー。あのジジイどうやってるんだろう」


村長が犯人だと、二人とも信じていた。




そんな中、髭もじゃのおっさんが走って来た。


「た、大変だー!!森の奥に迷宮があったぞー!!」


唾を飛ばして、蒼白な顔で叫んでいる。


「何っ?!」


流石に、男も女も関係なく全員が反応した。


「し、しかも、もう死んだ跡がある!!皆、早く逃げる準備をするんだ!!」


髭もじゃが悲痛な顔で叫び、村の中を走って行った。

それを聞いた村人たちも、バラバラに分かれて身内に伝えに向かう。

近場に強大な魔物が居るのだ。

一刻も早く、ここから離れなければならない。

村に悲鳴と怒号が飛び交った。


そんな中、家も知り合いも居ないので、取り残された修とポーラが立っていた。


「シュウ様、どうされますか?」


「殺りますか?」と言うことだろう。

修が勝つと信じ切った問いかけだ。

いや、勝てるだろうけども。


「・・・・・・・・・・・・・・いや、ちょっと待って・・・・」


しかし、修はポーラに掌を向けて静止させ、深く考え込んだ。

とってもとっても嫌な予感があったのだ。

修は目を閉じ、地下に意識を集中させた。

50Mまで。

更に更に奥まで。

そして500Mほどの深さまで意識の手を伸ばしたところで。

遂に発見した。


----------------------------


LV.63

ボス・ハイドワーム


----------------------------


間違いなく、こいつが犯人だ。

修は確信した。

確実に、迷宮から飛び出した奴だ。

新しいダンジョンなぞ作らず、下着集めに邁進していたのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・深いな」


サーチアンドデストロイをしてやりたがったが、恐らく下着をため込んでいるはずだ。

ここから圧殺したら下着の回収が出来ない。

かと言って、ベレブ□ビラヘレンテパンチでは深すぎてここまで持ち上げることは難しいだろう。


「はい?」


ポーラにとっては、修が突然脈絡のない言葉を呟いたのだ。

可愛らしく首を傾げていた。


修はおもむろに、両手を地面に叩き付けた。

だと言うのに、地面には凹みすらない。


「土竜昇○拳!!」


そして修が叫んだ。

とある漫画で見た必殺技だった。

惜しくも不発に終わったが、発動していたら、その時点で世界が救われていただろう必殺技だ。

完成品を見たかった修は、独自に習得したのだ。

ブ□キーナも報われるだろう。


「?!」


そして、突如、広場に打ち上がったものがいる。

見た目はミミズだった。

が、とんでもなく大きい。

そしてとってもカラフルだった。

良く見れば、女性用下着を編み込んだ服を着ている。

手が無いのにどうやってやったのだろうか。

恐らく執念だが、やはりド級の変態だ。


広場に、女性限定の悲鳴が響き渡った。


「こっ!!こいつはっ!!」


ポーラも一瞬で悪鬼の如く表情を浮かべた。

バーサクがかかってしまった。


ポーラが帰ってこれなくなる前に修が飛び出した。


「セェェェイッ!!!」


そして叫び、虚空に拳を叩き付けた。

無論撲殺することは簡単だが、モツが溢れ出してしまう。

女性達の下着がどえらいことになってしまうだろう。

そこで修は、ちょっと発勁的なあれを飛ばして、ハイドワームのモツをメタメタにした。


空中に打ち上げられていた変態が、ビグン!と震えて、力無く地面に倒れ伏した。


「・・・悪は滅びた」


修は感慨深く呟いた。




しかし、衆人環視の元に晒されて、変態が身に着けていた下着など、誰も回収したがらなかった。

回収したらばれてしまうし。

その為、変態ごと火葬された。

パンツごと灰になれて、変態も本望だろう。

そして燃え盛る下着と変態を見つめる女たちの視線の恐ろしいこと恐ろしいこと。

まさに、魔女裁判レベルだった。




「ありがとうございます!!犯人はあやつだったのですね!!」


村長がホクホク顔で寄って来た。

下着泥棒の犯人と、迷宮から出て来た魔物。

その二つの問題が、一度に解決されたのだ。

当然のことだろう。


「悪かったわ・・・」


「いや、俺の方こそ・・・」


そこかしこで、男と女たちが仲直りをしている。

ちなみに、仲直りのプレゼントはパンツが流行った。

爆発すればいいのに。


「おおおお・・・・。皆が許しあって・・・」


村長が感慨深くその光景を見つめている。


「あの手紙」


良い話で纏めて終えようとしている村長に、修が呟いた。


「っ?!」


ギクリ!と村長の方が震えた。


そこで、皆魔法が解けたかのような顔をした。


「・・・あれ?そういえばそうよね?魔物が手紙何て書ける訳ないし・・・」


一人の女が呟いた。


「村長が書きました。間違いありません」


そしてポーラがあっさりと暴露した。

村を救った英雄の言葉は、あっさりと信じられた。

実際には、ポーラは戦っていないが。


「ええええええええええええええええええ?!」


村長は、目玉が飛び出さんばかりに驚いていた。

そんな村長に、村長の孫娘がゆらりと歩み寄った。


「・・・・・・・・・・・・・・おじいちゃん?」


実に恐ろしい雰囲気だった。

女も男も、全員が座った眼をしてジジイを取り囲んだ。

その輪が、じりじりと狭まって行く。


「い、悪戯のつもりだったんじゃあああああああ!!!許してくれええええええ!!」


ジジイの叫びが響き渡った。


その叫びを背に、修とポーラが荷物を背負って歩き出した。


「さあ行こうか」


「はい!」


実に清々しい顔だった。

悪は完全に滅びたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ