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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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64話 ブドゥー

更に減速しよう(切実

修とポーラは森の中を歩いていた。

森とは言っても、踏み固められ、木漏れ日が射すような道だ。

時々人とすれ違ったり、馬車に抜かれたりという、実に暢気な旅路だ。

天気も実に良い。


「良い天気だね~」


修が空を見上げて、ほのぼのと呟いた。


「はい」


ポーラも修の視線を追い、空を見上げて同意する。


視線を戻した修が、果物らしきものを見つけた。

見覚えのある果物だった。


「葡萄だ・・・美味しいよねぇ」


修が何気なく呟いたその一言に、ポーラが過敏に反応した。


「・・・・・・・・は?!ブドゥー?!」


ポーラが驚愕している。

何をそんなに驚いているのだろうか。

心なしか、発音もおかしい気がする。


「あ、あの・・・・・・」


ポーラはゴクリと生唾を呑みこんでいる


「?」


何をそんなに驚くことがあるのだろうか。

修が首を傾げてポーラを見た。


ポーラは信じられぬ物を見る目で、修を見つめていた。

恐る恐ると言った風に聞いて来る。


「ブ、ブドゥーを、・・・食べられるのでしょうか?」


お互いに、激しく情報の食い違いがある。


「・・・・?葡萄は食べれるでしょ?」


修は当然と言った顔で言い放った。

ポーラの声が裏返った。


「食べれるのですかっ?!で、でも毒が・・・」


とんでもない単語がポーラの口から飛び出した。


「毒っ?!葡萄に毒があるの?!」


何と、この世界の葡萄には毒があるのか!

修は愕然とした。

ではあそこに生っている葡萄も食べれないではないか。

いや、食べようと思えば行けるが、食べたいとは思わくなってしまう。


「・・・・え?はい・・・・?」


ポーラは今度は、困惑した顔を浮かべた。

修は木になる実を見つめて、悔しげに身を震わせた。

食いしん坊さんである。


「そ、そんな馬鹿な・・・・あんなに美味しそうなのに」


ポーラの眼がまた驚愕に彩られた。


「お、おいし、そうですか・・・?」


何故か深く考え込み始めたポーラに向かって、修が木を指差した。


「ええ?そうかな・・・。ほら、あれ」


ポーラが訝しげな眼で修の指差した方向を見つめる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


鼻までくんくんと鳴らしている。

まるで魔物を探している時の様だ。

しかし、ポーラは何時まで経っても発見できない様子だった。


「あれだよあれ。あの木に生ってるの」


修が追加で情報を流すと、ポーラの目は、ようやく実を捕えた。


「あ、ああ。ポコナですね」


そして聞いたことが無い単語を口に出した。


「ポコナ?!」


今度は修が愕然とした。

アレは、この世界では葡萄ではなかったのだ。

修はようやく気付いた。

残念なおつむだ。


「え?・・・はい」


ポーラは不思議そうな顔をして修を見て来た。

修は恐る恐るポーラに質問する。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶ、葡萄って、どんなの?」


「はい?・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、ポコナがありますよね」


ポーラはしばし困った様子だったが、まず葡萄もどきのポコナを指差した。


「うん」


修もポコナをみて頷いた。


「あれが、私と同じくらいの大きさで」


初めから驚いた。


「でかっ?!」


とんでもないサイズではないか。


「あの実。あれら全てに眼があって」


更に驚愕の事実が発せられた。


「眼ぇ?!」


想像してみたが、とてつもなくグロイ。


「体液が毒です」


止めの一言が発せられた。


「畜生!!」


なるほど、ポーラはそんな怪物を、修が食べようとしていると思って驚いていたのだ。

修も、そんなもん食いたくない。


「うん、ごめん。勘違いしていたよ。ポコナ。ポコナ美味しいよね」


修は必死で過去の汚点を隠そうと、話を切り替えた。


「あ、はい。・・・・・・・ちなみにブドゥーは魔物ですが」


しかしポーラはまだ葡萄食べる発言を気にしているようだ。

葡萄の癖に、生き物らしいし。


「・・・うん、分かった。食べない食べない。食べないから」


ポーラの疑わしげな視線に晒された修は、必死で弁解し続けた。

ちなみに、ポコナは葡萄の味だった。

とってもおいしかったです。




夕方になった。

二人旅だと、獲物と判断されやすいようで、良く魔物に遭遇した。

ブルーラビットやコボルトやポピーが多かったが、不思議なアニマルとも遭遇した。


「おお・・・」


見たことのない生物に、修が感嘆した。


----------------------------


LV.1

パポプ


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「パポプですね。これは幸運です」


ポーラは知っていたようで、あっさりと魔物の名前を告げた。


「ぬぅ・・・」


修がパポプを見て呻いた。

どうやって生きているのだろうか。


とても面白い魔物だった。

まずは小象を想像してほしい。

そして鼻が無い。

以上である。

そういう魔物だった。


何だか悲しさを感じる。

プピー!とどこかからヤカンが沸いた音を鳴らしながら、どかどかと走って来た。

実にスロウリィ。


「やっ!!」


ポーラにあっさりと首を刎ねられた。

今晩のおかずは決定だ。

修がそう思っていると、ポーラはいそいそとポパプをさばき始めた。


「お?」


修が目を丸くしているうちに、ポーラはパポプのモツを引きずり出した。


「パポプ米です!」


ポーラが嬉しそうにモツを修に見せて来た。


「え?!」


どう見ても生モツだ。

米には見えない。

教えてもらったが、どうもこのモツの中にコメが詰まっているらしい。

いかめしと同じ原理だろうか。

葉っぱに焼いて火にかけると、とてもふっくらとしたコメが楽しめた。

世の中の不思議!

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