63話 逃げきれなかったよ
修は目を覚ました。
辺りを見回したが、ポーラは居ない。
修は、不思議空間に居た。
念じた結果、成功してしまったのだ。
びっくりだ。
「はぅあ?!」
夢に引きずり込まれた神も、びっくりだ。
神は、周囲を見回し、修を発見すると脱兎のごとく逃げ出した。
「ま、不味い!」
やはり殴られる気配を察知していたらしい。
逃げながらも、神の体がすぅ、と薄くなっていく。
逃亡を図っている。
「だらぁ!!」
修はその背中にドロップキックを仕掛けた。
追いつくことなどあっという間だった。
「ゴ、ゴッドバリアー!!!!」
神は蹴られる一瞬前に叫んだ。
何と、神と修の間に神々しい壁が出て来たではないか!!
ゴッドバリアーは一瞬で砕け散った。
「ぐふっ!!」
半透明の神がドロップキックを受け、空中を一回転して顔から地面に墜落した。
脱出に失敗した神は、半透明ではなくなってしまった。
修は笑顔で、神の胸ぐらを掴み上げた。
ベビンベビン!と往復ビンタをかました。
「あべしっ!!ほべっ!!のごっ!!おぐぅ!!」
都合二回。
神は、合計5回の攻撃を受けた。
神のほっぺたにリンゴを作り上げた修は、そこまでしてから神を離した。
「・・・・・・・・」
神は、ごろりと地面に横たわった。
ピクリとも動かなくなってしまった神に、修は容赦しない。
腕を組み、神の前に立った。
「・・・どういうこと?」
神がもぞもぞと動いた。
「・・・・・・・・出来心で」
蚊の鳴く様な声で答えて来た。
「ドスコイは?」
「・・・昔ちらっと見ました」
やっぱり知っていやがった。
「ハイドワームは?」
「・・・・楽しいと思って」
何が楽しい物か。
ポーラを宥めるのにどれだけ時間がかかったことか。
「衝撃のシルクパンツって何」
「まさかパンツにつくとは思っていなくて・・・」
バグじゃねーか!!
「ジューリョーも?」
「・・・・強そうだと思いました」
ちらっと見たどころじゃないだろう。
「もろだし」
「・・・・・作ってるときは楽しかったんです」
もう駄目だこの神。
早く何とかしないと。
もう手遅れだが。
「・・・・また変なの出る?」
修が冷たい目で神を見下ろしつつ、聞いた。
神はちらりと顔をあげた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
眼がとっても泳いでいる。
修は拳を振り上げた
「ひっ?!・・・で、出ます!すいません!」
神は暴力に屈した。
それで良いのか神よ。
しかも悪ノリして作ったのが、今後も出て来るらしい。
修は拳をおろし、深い深いため息を吐いた。
「・・・神なんだからさ、もうちょっと考えて作りなよ」
更には説教までし始めた。
「・・・・はい。すいません」
神は項垂れて大人しく謝った。
「アレと戦う身にもなりなよ?きついよ?」
駄目な上司を叱る部下の構図である。
「・・・・はい。すいません」
神はしょんぼりMAXだ。
「・・・もう変えれないの?」
修が淡い希望を乗せた質問をした。
「・・・・はい。すいません」
やはり変えられないらしい。
これからも不思議いっぱいアニマル共と戦う必要があるわけだ。
修は神を殴り、説教もしたことで気が晴れた。
「・・・もういいよ。殴ったし。気は晴れたから」
寛大な慈悲の心で神を許した。
「・・・・はい。すいません」
神は心が折れてしまったようだ。
同じ返答しか返してこない。
「ほら、もう今日は帰って休みなさい」
修が気を使っている。
もうどちらが上かは明白に分かってしまった。
「・・・・はい。すいません」
神は最後まで同じセリフを繰り返しながら、すぅっと消えた。
多少やり過ぎたかもしれないが、今後、愉快なアニマルが増えることは阻止できただろう。
修は安堵して、寝た。
翌朝、早速旅立ちだ。
サムハン達が街の外まで見送りに来てくれた。
本当に良い人たちだ。
「では、また立ち寄った時には、是非声をかけてくれ」
サムハンは最後までハンサムだった、
「はい。また会いましょう」
修もハンサムと固く握手した。
「ポーラさん。次はもっと強くなっていますからね!」
シャラの瞳は燃えている。
もしかすると、次に会う時は二刀流になっているかもしれない。
そう思えるほど、シャラはポーラを尊敬していた。
「はい。また手合せしましょう」
ポーラも善人には善人対応をする。
微笑んで頷いていた。
「またね。シュウ君・・・」
カリアは怪しい瞳で修の体を見つめていた。
あいも変わらず恐ろしい眼だ。
「は、はい・・・また・・・」
修は若干引き気味に、引き攣った笑みを浮かべた。
「元気でな。強いとはいっても、油断はせんようにな」
ガザリーは最後まで兄貴と呼びたくなるような雰囲気を纏わせていた。
無愛想に見えて、実に頼れる。
「はい!ありがとうございます!」
修とポーラも愛想よく微笑んだ。
そして、修たちは次の街に向かった。
温泉への道のりは遠いのだ。




